テーブル

2013-08-27 18:10:20 | 日々

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自宅のダイニング用につくってもらっていたダイニングテーブルが、先日ついに届きました。こじんまりとしたスペースのなかに、自分たちの生活にとって必要なものだけをキュッと簡潔につくった室内。ダイニングテーブルはその窓辺に置くように考えてあり、ちょうどよい寸法と手触りの感じを大切にしてデザインしました。製作をお願いしたのは、甲府で家具工房をやっている古市健さん。僕が村田靖夫さんの事務所の所員だったときからのお付き合いになります。

古市さんからは、これまでも家具について多くのことを教わってきました。主には、木についてのいろんな話。無垢の木の性質について、加工法や流通の実際について、その内容は多岐にわたります。それらの話を聞いていると、無垢材のテーブルの味わい方も深まりますし、漠然と見ていたことの裏に思わぬ苦労があることも、少しだけわかるようになってきました。

今回お願いしたのは、ナラの無垢材のテーブルです。丸い4本脚のついたシンプルなかたち。室内の即物的で簡素なデザインに呼応するように、天板に脚をそのまま接合してほしいとお願いしました。(ふつうは倒れ止めのため幕板のような補助材がつくのですが。)きっとそんなことだろうと思ってましたよ、と言われましたが(笑)、大阪の小さなメーカーがつくっている良い接合金物があるんですよ、とわがままを実現してくれました。大阪出身の古市さんならではの、思わぬところからのアイデアでした。

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テーブルの角部はふつうよりも大きく面取りをしてもらい、優しい雰囲気になりました。4枚接ぎの手触りの良いテーブル。生まれて9か月になる長男は、最近生えてきた前歯2本で、テーブルをがじがじがじ・・・。じぇじぇ!と驚きましたが、硬いナラの木には歯の研ぎ跡が・・・(笑)でも、そういうのもなんだか嬉しいものです。きっとこのテーブルには、これからたくさんの傷や染みがついていくでしょう。色味も変わっていくことと思います。

ダイニングテーブルにつくと、小ぶりな南窓から緑が身近に感じられ、風抜きが気持ちよく感じられます。陽が傾いてくると、西窓から障子を通した光がテーブルに趣のある木目を浮かび上がらせてくれます。何年もかけて、そこに趣のある痕跡が感じられるようになる日まで。そういう風にして、自分にとっての居心地のよい室内ができあがっていくのだろうなあと思います。

テーブルにあわせた椅子とペンダント照明は、もう決めてあるのだけど、届くまでに時間がしばらくかかりそうです。何につけ、気に入ったものを得ようとすると時間がかかるものですね。

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風景を切り取る

2013-08-17 20:31:57 | 進行中プロジェクト

前回に続き、富士の現場の話。

棟上げ後、順調に工事は進み、今日は構造のチェックの日でした。窓枠なども取りつき、それぞれの窓からどのように景色が見えるかが体感できます。

周囲環境に呼応するようにして建物を計画するのはとても楽しいもので、この敷地の前を流れる疎水と緑地を活かすように考えて設計してきました。

模型のイメージ写真は、実際にはこんな感じになります。

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静かで、落ち着いた雰囲気の空間をつくりたい。

ルイス・バラガンの建築のエッセンスを採り入れたような。

おおらかな空間に、ざっくりとした質感の材料。

そこに、選び抜くようにして開けた窓から、気持ちの良い景色が見える。

そんな家をつくりたいと思って設計をしてきました。

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上の写真の大きな窓からは、疎水越しの風景が印象的に望めます。この窓はベンチのような深い出窓になっていて、窓辺に腰かけることができるようになっています。そこで本や雑誌を読んだり、コーヒーを飲んだりする時間が心地よいものになるように。ただそれだけを考えて設計をしています。窓には大きな庇がかかっていて、今日のような強い日差しを遮り、帽子のツバのような雰囲気でどこか安心感をもたらしてくれます。

窓の手前に置かれた大工さんの作業台は、さながらダイニング・テーブルのよう。

現場でのチェックや打合せを終えたあと、少し涼しくなってきた風通しを感じながら、場所の雰囲気に身を浸すのを楽しみました。

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なげもち

2013-08-03 23:52:24 | 進行中プロジェクト

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静岡県富士市で着工した住宅が、上棟をむかえました。

敷地は小さな用水路に面していて、印象的な緑地が庭先に広がっています。静かで奥まった敷地の雰囲気を活かすことについて考えていると、シンプルな間取りのなかに、まわりの環境を印象的に切り取るような、額縁のような窓のあり方がイメージされてきました。そのことを単純にシンプルに形に置き換えたい、そんな風に思いながらこの住宅を設計してきました。

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いわゆる形式通りの玄関がない、シンプルな間取りです。玄関はないけれども、そのかわりに土間スペースがつくられています。小屋組みがあらわしになった、ざっくりとした雰囲気の空間。ガラス越しに、向かいの緑が気持ちよく眺められることを体感して、設計者としては悦に入る瞬間でした(笑)

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上棟にあたり、お施主さんの計らいで投げ餅が行われました。地域によって作法も様々なのだと思いますが、富士では、竹で弓をつくり棟にくくりつけて、「今日、投げ餅をやるよ~!」という合図にするのだそうです。竹弓をつくる職人さんたちも、上棟作業を終えてちょっとひと安心、という感じだったのでしょうか、和気あいあいとした雰囲気でした。

投げ餅の定刻になり2階にあがって見ていると、今か今かと待ち構える子供たちをはじめ、多くの人たちが集まってきます。大人にとっては懐かしく、子供にとっては新鮮なイベントなんですね。

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ぼくも餅やお菓子を投げるのに夢中になってしまい(笑)、餅が宙を舞う華やかなシーンの写真を取り損ねてしまいましたが(泣)、思い出深い一日となりました。家を建てるというのは、地域のなかにはいって人と人とがつながること。地域のみなさんへのご挨拶もかねて、このような行事が文化としてずっと残っていってほしいですね。

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