有元利夫

2007-03-17 19:25:02 | アート・デザイン・建築

先日、有元利夫の展覧会に行きました。有元については以前このブログでも少し書きましたが、氏の展覧会に行くのはもう6回目になります。なぜそんなに多くの機会があるかというと、毎年この時期になると、有元の命日にあわせて回顧展が開かれるからです。東京・千代田区の小川美術館という私的なギャラリーで開催されます。入場無料で、しかもガラスケースの中に収められるわけでもなく、間近でじっくりと観ることができます。有元の世界を少しでも世に広めようと、美術館の、亡き氏に対する愛情と誇りが感ぜられます。

070317

写真は、展覧会の案内ハガキ。昨年のものと、今年のものが2枚。

有元の絵は、西洋の古い宗教画、フレスコ画をはじめとした「様式」の世界に対するオマージュに溢れており、それを岩絵具などを用いた独自の作風にしていきました。そして、現代に描かれた新しい絵であるにもかかわらず、とこしえの「時間」を画面に沈めようと努力した人でした。その痕跡は絵そのものだけではなく、額縁にも及びました。ルーターと呼ばれる細いドリルで虫食いの孔を額縁に表現したり、古色ある風合いに着色したり。そうした演出は、伝統的な油彩画界やアカデミーからの批判もあったようですが、デザイン学科卒業の有元にとってはおかまいなしだったようです。有元の手によってしつらえられた額縁があるからこそ、その中に収められた画面が、しみじみと美しい。

有元の作品集は多く出版されていますが、どれもが絵だけを載せています。額縁を含めて鑑賞できるのは、展覧会だけ。簡素で、シンメトリカルで、天雅。安易な個性を嫌い、様式という深い深い水の底から、美しい構図と色彩を拾いあげてきた、という感じ。あっさりと言葉で表現するなら、「普遍性」。

毎年、この現代につくられた「普遍の美」に会いにくるのが、僕の恒例になっています。

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