打合せで富士市へ。これまで何度もこの街に来ましたが、いつも間が悪く、実際に綺麗に富士山を眺めることはできませんでした。
今日も靄に包まれ、いつも通り見えない・・・。そんな風に思いながら役所での所用を済ませ、ランチにはいったお店でのこと。
ちょっと不思議な光景に出会いました。少し離れた場所に、人のいない窓辺の席がありました。テーブルの上には、タテに細長い窓。そこに、富士山の白い頭が切り取られるようにして見えていたのでした。
靄が少しずつゆっくりと下降していって、徐々に富士山の雪がはっきりと見え始めます。でもその下は、靄がかかったまま。
窓の下の方には、大きな街路樹が切り取られるようにして見えていました。
遠くに白く浮かぶ、富士山。
手前に大きくふさがり、風に揺らぐ街路樹の緑。
細長い窓から見えるのは、そのふたつだけ。
ほの暗い店内。窓から、そっと光がテーブルに落ちていました。
遠い昔から変わらず鎮座し続けてきた富士と、僕よりはよっぽど長生きの大きな古い街路樹と、そしてそれを眺めている自分。細長い窓が、幾つもの異なる時間をそっとつなぎ合わせているような、そんな感覚になりました。
たまたま僕が座った席から偶然に見えた光景に過ぎないけれど、何か意味ありげな窓辺の雰囲気は、どこか思索的で、魅力的でした。
富士山を前に、大きく窓を開いて雄大な光景を楽しむのもいいけれど、小さな窓からのぞく世界も、きっと素適だろうな、ふと思いました。
そんなことを思いながら描いたスケッチです。