憲法問題研究会の代表である、大内兵衛氏を紹介する時が来ました。
氏は大正・昭和初期において、日本で一流のマルクス経済学者と言われ、財政学の専門家でした。まずいつものように、氏の履歴を紹介します。
「明治21年兵庫県に生まれ、昭和55年に92才で没。」「大正2年に東京帝国大学経済学科を首席で卒業し、銀時計を受領。」「銀時計とは、明治維新から第二次大戦まで、国立大学の成績優秀者に、天皇から褒賞として渡されたもの。」「天皇臨席の卒業式での授与は至高の名誉とみなされ、授与された者は 〈銀時計組 〉と呼ばれました。」
「大蔵省の書記官を経て、大正8年に新設された東大経済学部に着任。」「助教授として財政学を担当。」「在任中は労農派の論客として活躍、大正9年森戸事件に連座して失職するが、数年後に復職 。」
「GHQの占領時、大蔵大臣だった渋沢敬三より、日銀顧問に迎えらる。」「東京裁判では連合国側に立ち、証人として出席。」「裁判の内容は、日本の軍国主義教育の実態や教育者への弾圧、言論機関への抑圧、」「警察権力を駆使しての圧制や、脅迫などにより、侵略戦争がいかに準備されかの立証に主眼。」
「昭和24年に、東大経済学部を退官後、法政大学の総長に就任。」「向坂逸郎と共に、社会主義協会や社会党左派の理論的指導者の一人として活躍。」
「昭和30年5月から6月、日本学術会議のソ連・中国学術視察団に参加。」「門下の美濃部亮吉の、東京都知事立候補を強く支持。」「美濃部都政を助け、実践面でも社会主義を貫く。」
大内氏の名前はよく知っていましたが、連合国側の証人として、「日本の戦争責任」を証言していたと知り、瞬時に怒りが爆発しました。彼こそは日本における「獅子身中の虫の親玉」「最大の売国学者」でした。
この本の中で、氏は「社会保障とは何か」という表題で講演しています。むかっ腹が立ち、ブログを投げ出したくなりますが、それでは、「虫の実体をあきらかにする」目的が達せられないので、堪忍袋の緒を締め、以下、氏の言葉を引用します。
「憲法25条は、今や有名な条文となった。その条文は、二項からなっている。」
「 1. すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2. 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上、
及び増進につとめなければならない。 」
さすが銀時計組だけあり、氏の説明は丁寧で、分かりづらく、親切すぎて回りくどいので、要約することにします。
つまり国民は権利を持つと書かれているが、書かれているだけの話だというのです。国の義務も、たんなるプログラム規定でしかないので、国民はもっと人権そのものについて考えるべきだと語ります。
「例えば宮沢俊義氏はその憲法論において、人権を世界人権宣言から説き起こしている。」「人権は長い闘争の歴史を経て、アメリカとフランスの革命を通じて、「成文憲法の形で取り入れられたものである。」
人権は政治の実践によって実現されるのであり、それを軽視することは民主主義として許されない。進歩に努力しない政府は、憲法の精神に反する者であると氏は説明します。
「憲法第25条の意味が、このようなことであるとするならば、日本は社会主義を否定したり、排斥したりすることは決してできない筋と思われる。」
「もともとマルクス主義又は、レーニン主義といっても、本来個人の自由の要求に出発するものであり、到達点もそうであるから、階級的独裁を人権の自由に優先させることでないのは自明であるが、ある条件の元ではそういう傾向をもつのも、又事実である。」
氏がここまで、マルクス主義の信奉者であるとは思っていませんでした。GHQには共産主義者が沢山いましたし、有能な学者だった氏は彼らに重用され、社会保障審議会の会長に任じられています。会長として総理大臣に「勧告書」を提出し、氏が次のように語っています。
「審議会の会長として、自分も一役買っているのであるから、こういうことを言うのは自画自賛の手前ミソであるが、それにしてもこれは、日本で初めての社会保障プログラムである。」「新しい憲法のその大切な一節は、この上を動き始めたのである。」
つまり氏は宮沢俊義氏同様、「GHQに絡め取られた学者」というより、自ら積極的に協力した「売国の学者」でした。宮沢氏と違うのは、最初から最後まで、マルクス主義者で押し通し、変節しなかったところでしょう。
GHQの威光さえ手にすれば、何をしようと、敗戦後の日本では我が世の春で、氏の意見は力を持ちました。
「日本の社会保障予算は、外国と比べてどうだろう。国連統計によると、日本は西ドイツ、イギリス、スエーデンにはるかに及ばない。」「アメリカやカナダは案外低いが、それは日本に比べ、下層の国民があまりに富んでいるからである。」
「この点から言えば、日本は完全な後進国であって、前途遼遠というしかない。そのことはまた、先進国と比べて、社会党、労働党がその力を持っていないということの反射でもある。」
氏が語っているのは昭和33年の資料ですが、その頃の日本はまだ貧しかったのです。昭和30年にソ連・中国学術視察団の旅を経て、氏が語った言葉、恥ずかしい寝言を、何としてもブログ残し、わが息子たちに読ませたいと思います。
「私も、社会主義を勉強すること実に40年であるが、なにぶん進歩が遅く、社会主義がユートピアであるか、科学であるか、今まではっきり分からなかった。」「しかしソ連へ来て、いろいろの見学をして見て、それが科学であることがしかと分かった。」
「ロシアの経済学は、二十世紀の後半において、進歩的な特色のある学問として、世界の経済学界で相当高い地位を要求するようになるだろう。こういう歴史の変革のうちに、経済学者としていよいよ光彩を加える名は、レーニンとスターリンでありましょう」
悲惨な「ハンガリー動乱」と、ソ連の圧政に蜂起したハンガリー国民については、次のように述べています。
「ハンガリアは、( 米・英・日と比べて )政治的訓練が相当低い。そのため、ハンガリアの民衆の判断自体は、自分の小さい立場というものにとらわれて、ハンガリアの政治的地位を理解していなかったと考えていい。」
「ハンガリアは、あまり着実に進歩している国ではない。あるいはデモクラシーが発達している国ではない。元来は百姓国ですからね。」
それでも東大経済学部には、現在も彼の名前を冠した「大内兵衛賞」が存在し、優れた学生が表彰されています。他にも、政府統計委員会委員長として、戦後の統計学の再建に尽力した業績を記念し「大内賞」というものもあり、統計界の最高栄誉とされています。
こうしてみますと、「獅子身中の虫」退治は、至難の技であることが理解できます。私はこれまで、敗戦後の自民党の保守政治家が何もしてこなかったと責めてきましたが、そうでないことも薄々わかりました。
GHQに利用され、逆にGHQを利用した「獅子身中の虫」たちは、手強い組織を国内外で作っています。ソ連やアメリカにも政治的人脈を持っていますから、時間の助けを借りながら、ゆっくりとしか退治できないのです。
戦後70年が経過し、国民の多くが事実を知るようになったので、これからが本当の「虫退治の時」になるのかもしれません。
「ストップ詐欺被害。私たちはもう騙されません。」
おれおれ詐欺防止のため、警察庁が作った標語ですが、「虫退治」にもそのまま活用できそうです。それにしても平成3年のソ連崩壊を、氏が生きていたら、なんと語ったのでしょうか。これほど日本を蔑視しソ連を賞賛していたのですから、昭和55年に亡くなるのでなく、平成3年まで長生きして欲しかったと思います。
氏がその時存命なら、103才です。「憎まれっ子世にはばかる。」と、諺に相応しい一生でしたのに、惜しいことをしました。
まず、前回の家永教授の父君の履歴で、理解不十分
な所あった様で、一言お詫び申します。こう言う知識
は、正確を期さねばと思います。
大内教授は、向坂教授と並ぶ「赤い学者」の双璧と言
える所は、拙方も心得ております。
特に、東京裁判では連合国側証人だった由。これ、
恐らく本人の意向もあるんでしょうね。「売国」「反日」と
は、こんな人物の為にあるんでしょう。
政策の暴虐性では、ナチス・ヒトラー元総統を凌ぐとされる、
スターリン元書記長を、無批判に持ち上げている辺りが、
大内見解の不健全性の一端が窺えます。
仰る通り、平成初期のソ連邦崩壊を目の当たりにしてから、
あちらに逝って頂いた方が良かったのでは、と拙方も思います。
脚本家の故・石堂淑朗さんだったと思いますが、大内教授の没後
「悔しかったら、墓から出て来い!」と不快感を露わに
されていたのも、頷ける気が致します。
今回も、ご講釈有難うございます。
故・石堂氏の気持ちは、私も分かります。大内氏のことを、もっと早く知っていたら、私もそう言ったはずですから。
しかし問題はこれからです。大内氏に育てられた赤い教授たちが、沢山育ち、学界の要職にいます。どうすれば、この獅子身中の虫たちを、駆除できるかです。並大抵のことではできません。人脈、金脈、閨閥など、彼らの体制は盤石です。
コメントをお寄せの皆様方有難うございます、
殆どの人々は「変節した学者たち」を余り知らないのではないかと思います、
私もお恥ずかしいことに大内兵衛氏など一部の学者しか知っておりませんでした。
onecat01さんのこの労作で新たに変節学者達の存在を詳しく知ることが出来ました。
まさに日本を貶める獅子身中の虫、自己保身優先で戦勝国に与して国民を欺いた害虫ども。
>この獅子身中の虫たちを、駆除できるかです。並大抵のことではできません。
それは売国マスコミ駆逐の問題はありますが、広く国民に事実を知らせることだと思います、
賢明な国民は大学教授の欺瞞と売国姿勢に気がつき始めました、更に一押し売国奴を知らしめる。
国民が政治家、官僚をはじめ学者、司法関係に至るまで正しい認識を持つことです。
エスタブリッシュメントは強固な集合体でも、大多数の国民は普通の一般国民です、
真実の覚醒こそが正常な思考に戻る道、変節漢の危険性を更に伝えることです。
ノルウェ-の長い苦難を考えたら、「何のこれしき」 道は続いている、ですよ !?
たとえ虫でも、個別の虫の過去を調べて公表する作業は、心が荒むものです。ここまできて、自己嫌悪に陥りそうでした。
「ノルウェ-の長い苦難を考えたら、「何のこれしき」 道は続いている、ですよ !?」
今度ばかりは、あなたの言葉に目が覚めました。ここで止めるつもりでしたが、あと二人を公表して、それで終わることと致します。
500余年かけて独立を手にしたノルウエーを思えば、敗戦後の70余年など、「何のこれしき ! 」ですね。