ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

学校は変われるか - 6 (国際化への対応)

2020-11-19 16:57:14 | 徒然の記

 今回は、私の素朴な疑問と、氏考えるの国際化教育の間にある断層について、考えてみたいと思います。134ページに書かれている、氏の言葉を紹介します。

 「わが国は、明治以降、欧米先進諸国に追いつき、」「追い越すことを目指して、近代化を進めて来た。」「このため学校教育では、いわば、西欧文化を中心として体系化された、」「知識や技能を教えることを重視して来たことは、周知の通りである。」「日本の文化や伝統の教育を、軽視して来たわけではないが、」「私自身がそうであるように、日本の伝統的な芸術より、」「むしろ西欧の芸術に馴染んでいる日本人を、育てて来たことは否めない。」

 私より10才年長の、氏の受けた教育は、どんなものだったのでしょう。昭和9年生まれの氏が、7才で小学校一年生になった昭和16年代の日本は、どのような年だったのでしょう。寄り道をして、ネットで調べてみます。

  ・ 3/ 8  野村駐米大使と、ハル国務長官が日米交渉開始

  ・ 4/ 3 ロンメル将軍のドイツ軍が、北アフリカ戦線でイギリス軍を撃破  

  ・ 4/13 日ソ中立条約成立

  ・ 6/ 22  ドイツがソ連攻撃開始・独ソ戦始まる

  ・ 7/ 16   第二次近衛内閣総辞職 ( 松岡外相更迭 )

  ・ 7 25   米が在米対日資産を凍結 、英が在英日本資産を凍結、蘭印が在蘭印日本資産を凍結

  ・ 8/  1   米、石油の対日輸出全面禁止

  ・  10/ 18   東條内閣成立

  ・  12/  8   真珠湾攻撃で大東亜戦争 ( 太平洋戦争 ) 開戦 日本、対米英宣戦布告

  ・  12/  9   中華民国・蒋介石政権、日独伊に宣戦布告

 緊迫した時代です。4年後の昭和20年8月に、日本が敗戦となり、連合国軍の統治下に置かれます。この時氏は、小学校の5年生ですから、学校の授業が大きく変貌したことなど、記憶していると思います。

 ここで私が言いたいのは、文部官僚として、明治維新後の教育史を語るのなら、敗戦後の教育の大変革に言及しないという不自然さです。日本の教育は、藩校や寺子屋をメインとした江戸時代以後、明治維新と敗戦時に、二度大きく変化しています。過去との決別とは言え、明治維新は、同じ日本人による変革でしたが、敗戦による教育改革は、GHQという外国軍の手により、力づくで行われたものです。しかも憎しみと蔑視と、復讐の念を込め、戦勝国が変革しました。

 従って、氏が説明する明治以降の教育と、敗戦後の教育には連続性がありません。この重大な事実を語らず、次のように説明されても、私にはピンと来ません。

 「これからの学校では、国際化への対応のためにも、」「これまで以上に、日本人としての文化的素養が、」「要請されると思う。」「最も、自国の文化や伝統の教育が大切だと言っても、」「それが偏狭な、あるいは、排他的な教育であってはならない。」

 この部分だけを読むと、なるほどと思わされる意見です。そして氏は、まるで何事もなかったかのように、平成元年以降、学習指導要領で改定されたポイントを、3点説明します。

 1.  国語の尊重と古典の重視  2. 歴史上の人物と神話・伝承  3. 国旗・国家の扱いの明確化

 それぞれのポイントに関する説明を、要約し、転記いたします。国民の教育を語ろうとする、指導者としての熱意も、気概も無い、官僚の作文です。

 《 1.  国語の尊重と古典の重視 》

 (1) 母国語としての国語を大事にし、国語そのものを立派な国語とする態度を育成すること。

 (2) 古典を学習することにより、日本民族の伝統的なものの考え方や、生活について理解させる。

 《 2.  歴史上の人物と神話・伝承 》

 (1) 小学校の歴史教育では、人物学習が重視される。いたずらに政治経済史に偏ることなく、人物の動きや文化遺産を中心に理解させる。 

 (2) 古代の歴史を学ぶ際に、「神話・伝承」を調べて、国の形成に関する考え方などに、関心を持たせる。「古事記」などにある神話は、古代の人々のものの見方や、国の形成についての考え方を示すものとして、わが国の文化・伝統の学習にとって、欠かせないものである。 

 《 3.  国旗・国家の扱いの明確化 》

 (1) 昭和25年に天野文部大臣が、学校での国旗掲揚・国歌斉唱を提唱して以来、約半世紀にわたって、賛否が分かれ、議論が重ねられて来たが、文部省は一貫して、この指導を重視している。

 (2) 自国他国を問わず、国家・国旗に敬意を払うことは、国際的な常識である。我が国の文化や伝統を尊重し、日本人としてのアイデンティティーを持ち、同時に諸外国の歴史や文化について、理解を深めるためには、国旗・国家の指導は欠かせない。

 (3) 平成元年の学習指導要領の改定で、従来、学校では国旗掲揚・国歌斉唱が、「望ましい」となっていたのを、「するものとする」と改め、マスコミの話題になったことは、広く知られている。

 もしかすると氏は、「学習指導要領」に記載さえすれば、全国津々浦々の学校が、一斉に変わるとでも思っているのでしょうか。3項目とも、村山内閣が成立する直前まで、日教組が激しく反対していました。氏自身も、政府当局者として、日教組と対決して来た人間なのに、なぜこうも楽天的になれるのでしょう。

 東大も京大も似たような大学で、優れた学生が全国から集まりますが、頭脳明晰なのに、日本人の魂の無い者が時々混じっています。こういう人物が省庁の高い地位に就くと、国の政治が乱れます。氏もまた、そういう指導者の一人であると、理解いたしましたので、次回は、トップに立った愚かな官僚の意見をいくつか紹介します。

 興味をなくされた方は、スルーしてください。

コメント (2)
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