だらだら日記goo編

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Wheat Pool に魅せられて

2005-12-11 23:06:27 | アート・文化
なんとも奇妙なものばかり描く画家だと思った。
損保ジャパン東郷青児美術館大賞を受賞した作品ではなく、風景を描いた作品だ、倉庫と線路ばかりが出てくるのだ。
「始まる秋」「過ぎゆく秋」、ともに秋らしい風景は出てこない、線路と倉庫だ。
「南の果て」とぃっても海も何も出てこない、線路と建物だ。
画家の名前は池田史子、「ワイン色のセーター」で大賞を受賞したその作品展を損保ジャパン最終日に観に行く。
謎は一階でのビデオ展示を観て解けた。
静物画を描いていたこの人はカナダをバス旅行したとき、広大な荒野に小麦倉庫が建っていることに感銘を受けたという。
変なことに感心する人だが「こんなところにも人がいるのか」と思ったそうだ。
かえってカタログを見てみるとなるほど多くの作品に「Wheat Pool」という文字が刻まれている。
「Wheat Pool」という作品そのものもある。
会場入り口でこの人の略歴で「東京カナダ大使館」のギャラリーで昨年展覧会をやったというのもなるほどとうなづける。
カナダや北米を旅してその印象をそのまま絵にしたのだろう。
「店は二つだけ」なる作品はこの人の特徴がよく表れている。
「旅の終わり」1998という作品にはご丁寧にもHotelという文字がたてものに刻まれている。
最近になってこの人は人物を描くようになった。
「ワイン色のセーター」も人物画だ、人物と窓越しの風景が溶け合っている。
池田は「ヨーロッパの重さではなく、軽さ、はかなさ」を表現したかったようだ。
「静かな雰囲気だけど何かを訴えている」そんな表現を目指しているという。
しかし残念ながらこの人の作品は訴えかけるものに乏しい、軽やかさ、アメリカ的明るさが先行する。
しかしながら2004「終秋」というごくさいきんの作品は注目されて良い。
例によって電車が走るが、木々が紅葉に染まり、湖らしきものも現れているのだ。
一連の旅シリーズに欠けていた自然が回復されているのだ。
もともとこの人は静物画をやっていただけあって、花の絵もよく描く。
日本的自然とアメリカ的な感性が融合したとき、この人に新たな境地が生まれると思う。
最終日ということで画家本人がお越しになっていた、上品で物静かな方のようだ、これからの活躍に期待。