出品作に歌川広重の「童遊ひ見立ほふづき」がある。
ほおずきを子供が遊ぶ姿に擬人化したものだ。
なんでこんな絵が描かれたのかというと天保の改革で遊女絵や役者絵の出版が禁じられたから、出版元は子供絵や戯画を多く出版したのだという。
わかりやすい解説だ!
浮世絵初心者の僕にもよくわかる。
広重は「海案寺紅葉」も珍しい。
絵つきの便せんでもともと実用品のため遺品は極めて少ないという。
こういう珍しい品々がアメリカはミネアポリスから里帰りしていて、今渋谷の松濤美術館で展覧会を開いている、入館料はわずか三百円、これは行くべきだ!
順を追ってみてみるとまずは作画期はわずか十年という鈴木春信がよろしい。
山水画の「八景」を室内に置き換えて「座敷八景」をあらわして有名だが、「水売り」という作品もある。別に水だけを売っているのではなく冷や水に砂糖と白玉を入れたものを売っているのだという、当時が偲ばれる。
鳥居清長はどうか、鳥居派は役者絵だが清長は美人画の大家だ。
「三囲神社の夕立ち」では、雷神様が煙草をふかしたり短冊を見たり、これは狂歌連の集まりをもじったものだという。
歌舞伎堂艶鏡なる聞きなれない人も出てくる、この人は七点の大首絵が確認されるだけだが写楽と何か関係するのだとか。
そして北斎だ、「諸国瀧廻」ではヨーロッパからのベロリン藍の鮮やかな青が目をひく。
北斎の花鳥画も出てくる、二種類あって十枚ずつ知られるとか。
そして冒頭の広重に戻ると「東海道五拾三次」の庄野は余り特徴のない宿駅で事実よりも創造性を重んじたのだろうとか、「名所江戸百景」の「両国花火」はコレラ大流行の死者の慰霊祭が始まりとか知っている人は知っているだろうが僕には興味深い。
今回は展示リストもきちんと用意されているし、カタログもコンパクトでよろしい。
少なくとも僕にはNHKが絡んで宣伝した某所のギメ美術館展なんかよりよほど楽しめた。