江戸時代犬は迷惑な存在とされていたという。
しかし応挙の描く子犬のかわいらしいことといったら!
それを引き継いだ長澤芦雪の「一笑図」も犬と戯れる子供を描いてほほえましい。
犬があれば猫だ、猫好きな歌川国芳だ。
東海道五十三次をしゃれた絵を描いたり、猫を擬人化して面白い。
しかしこの展覧会は犬猫の展覧会ではない。
江戸時代の動物絵画を展覧する「動物絵画の100年」、府中市美術館だ、ひょんなことから招待券が入ったので初日に行く。
なぜ江戸かという疑問もあるが、科学の進歩、外国画の影響、画家自体が狩野派的な模写から個性の発揮という時代の転換期にあると捉えて間違えあるまい。
まず展示冒頭は葛飾北斎「瑞亀図」からはじまる。
老人が亀をなでている絵だ、こういうものもいい。
菅井梅関という人の「象図」は画面いっぱいの象だ、画面をはみだしそうだ!
おなじみ仙涯さんもある、犬と虎だ、出光で見慣れている画風だが、福岡市美術館のもの。
岡本秋きという人の絵はぎょっとなる、満月の元鹿が川を渡っているように見えるのだ。
しかしカタログによると鹿は泳ぐのが得意な動物だそうだ、幻想的な絵だ。
障壁画もいろいろ来ている、長澤芦雪の重要文化財になっている和歌山の寺院のために描いた障壁画三つがいい。
「蛙図屏風」にみられるように、左端に蛙二匹を描き後は空白にする。
余白の妙をうまく出した作品だ。
そのほか若冲は若いころと最盛期の二点が展示されているし、名前の知らない画家もたくさん出ている。
常設展示に赴くと風景画だ、しかもバルビゾンがでている。
レオン・リシュとかセザール・ド・コックとか府中はよくこんなものまで集めたなという感じだ。
お金と時間をかけて鑑賞する価値のある展覧会だ。