だらだら日記goo編

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あなたには夢がありますか

2005-06-21 23:26:11 | アート・文化
母を特養ホームに見舞うついでに八王子市夢美術館に「小島善太郎」の展覧会を観に行く。
実に独特な画家だ、絵を見出されたのはロシア戦争との関係で中村覚という大将の元であった。
これがこの画家の原点となる。
パリ留学中に中村が死ぬと、帰国後七年もかけて「中村覚肖像」の大作を完成させる。
そして「閣下なくして余の今日は絶対に存在すべからず、余は日本一の画家になる」と決意する。
そのパリ留学中はもっぱら古典になじむ。ピカソは冷たい、フジタはばかばかしいと感じてティントレット「スザンナの水浴」をルーブルで模写するのだ。
そういう意味でこの人の絵は古典的だ、「静物」なる作品がたくさんあるがセザンヌ風だ。
帰国してからも風変わりだ、都会のデカダンがいやで中央を離れるのは不利との周りの説得にも応ぜず、「人の心を打つものは素朴な純情であり正直であり知恵と深さである」とさっさと八王子に移る。
八王子ゆかりの画家といえるが、中村覚の元で壮大な夢を抱いたこの画家の展示が、ちょうど「夢」を美術館の名前に持つこの美術館で開催されるのはちょうどいい。
展示解説も丁寧至極でたとえば「四谷見附」を描いた絵では、ちょうど中央線の写真で現在のトンネルと比較したり、佐伯祐三との交流では、モデルに用いた佐伯の奥さん所蔵の人形も展示される。
これで三百円、「ぐるっとパス」なら無料は安い。
しかし晩年になるとこの画家は淡い色調で風景を描くようになる。
八ヶ岳とか、その近くの清春芸術村を良く描いたという。
しかしその絵には「素朴な純情」は認められても「知恵」や「深さ」は認められない。
日本一の画家になるという決意は良いが、それが達成されないのも無理からぬところがある。
この画家の個人美術館の開館目前に91歳でこの画家は死亡した。
中村覚のもとで「日本一の画家になる」と決意したこの画家の夢はどこまで達成されたろうか。
絵を観ながら「あなたには夢がありますか」と問いかけられているような感覚がした。
特養ホームの印象については明日にでももう一つのブログにかきます。
東京富士美術館とか府中市美術館とか郊外の美術館めぐりも又楽しいものがある。