韓国の名匠ホン・サンスが2人の女性アーティストの友愛と連帯を描き、2022年・第72回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員大賞)を受賞したドラマ。
著名な小説家だがスランプに陥り長らく執筆から遠ざかっているジュニは、音信不通になっていた後輩を訪ねるため、ソウルから離れた閑静な町・河南市へやってくる。そこで偶然知りあった元人気女優ギルスに興味を抱いたジュニは、彼女を主演に短編映画を制作したいと提案。かつて成功を収めながらも人知れず葛藤を抱えてきた2人は、思いがけないコラボレーションをすることになる。
ホン監督の公私にわたるパートナーであるキム・ミニが女優ギルス、「あなたの顔の前に」のイ・ヘヨンが小説家ジュニを演じ、共演にもソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、キ・ジュボンらホン監督作の常連俳優が顔をそろえた。(映画.comより)
<2023年7月16日 劇場鑑賞>
不思議な映画でしたね。ホン・サンス監督の作品は、噂には聞いていたものの、実際には最近の映画「クレアのカメラ」と「逃げた女」くらいしか見てなくて、どれも確かに静かな映画だったけれど、今回の映画はいつもにも増して淡々とした感じを受けました。少し眠くなるような。
最初はこんな日常なことをひたすら淡々と描写して、何がおもしろいんだろうと思いました。モノクロの意味も測りかねたし。でも、話の途中で「あ、それが最初に出て来たブックストアなのか!」とか、いろいろつながった時は「なるほど」と思いました。うまい構成だと思います。キム・ミニは相変わらずかわいいし。彼女に最初に気付いた作品「お嬢さん」(見るのは多分「泣く男」とかで見てたはず。しかし、認識したのはこの作品)の印象が強烈すぎて、他の作品がかすむのですが、ともかくいつも「かわいい」「きれい」という設定で出て来るので、韓国でもそういう位置づけなのでしょう。本当にかわいいし。
主人公は人々に「先生」と呼ばれる有名作家の年輩女性ジュニ。今までの成功である程度の地位と名誉は手にしているものの、最近はスランプだという設定。冒頭、何があったのか、憤慨した様子で店から出て来るジュニ。その後、近所のブックストアに立ち寄ります。そこは彼女の後輩が経営するストアでした。ごく限られた人にしか近況を伝えず隠遁しているつもりだった後輩は驚きます。「なんで知ってるの」って。作家の世界なんて限られているし、やっぱりバレるんでしょうね。
先輩作家を無碍にするわけにもいかず、彼らは、しばしの時を過ごします。そして地元の観光地を紹介。ジュニはそこに向かいます。すると、そこで某映画監督夫妻に会いました。過去に作品を映画化する話が持ち上がるも実現しなかった監督です。彼らとも歓談するジュニ。そしてみんなで近くの公園(広くてきれい)に散歩に行くと、最近はあんまり出てない有名女優に会うのです。これがキム・ミニ。さすがスタイルも良くてカッコいいです。そしてみんなで歓談。そのうち監督たちは帰りますが、女優と作家は話が弾み、作家(ジュニ)は「あなたを主演に映画を撮りたいわ」と持ち掛けます。「ご主人も、是非一緒に」と。そして、映画の勉強をしているという女優の甥を巻き込んで、本当に映画を作ってしまうのです。ラストシーンは女優が一人で試写を見るシーン。私たち観客にも少し見せてくれますが、どういう構成でどういう話の映画なのか、細かいことはわかりません。ただ、微笑んでお花を持つキム・ミニがとってもキュート、それくらいです。そして、誰も映画については抽象的なことしか話さないので、結局どうなったのかはわかりません。甥も「個性的な映画だ」だったか「ある意味斬新だ」だったか忘れたけれど、ともかく褒めてるのか、けなしているのかわからないようなことしか言いません。個人的には、そもそも作家が急に思い立って映画なんかが撮れるのか、と疑問に思っています。もちろん、お金さえあれば人も雇えるし、作れるのでしょうが・・・。
ほんの一部だけ突然カラーになって驚くところがあります。でも、私には良さがあんまりわからない映画でした。そんなに次々偶然有名人に出会うってことがあるのかな、とか(芸能人ばかりが住んでる街もあるのかもしれないけれど)、いくら有名作家だからって、女優もそんなに二つ返事で引き受けるのかな、とか。でも、その淡々さがいいのかもしれませんね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます