本作が初長編となる韓国のユン・ダンビ監督が10代少女の視点から家族や友人との関係を描き、第24回釜山国際映画祭で4部門を受賞した作品。10代の少女オクジュと弟ドンジュは、父親が事業に失敗したため、大きな庭のある祖父の家に引っ越して来る。しかし、そこに母親の姿はなかった。弟はすぐに新しい環境に馴染むが、オクジュはどこか居心地の悪さを感じる。さらに離婚寸前の叔母までやって来て、ひとつ屋根の下で3世代が暮らすことに。それはオクジュにとって、自分と家族との在り方を初めて意識するひと夏の始まりだった。(映画.comより)
<2021年3月23日鑑賞>
映画はいきなりお父さんが子供たちをおじいちゃんの家に連れてゆくところから始まるので、”事業に失敗したため母親も出て行った”という説明はないのです。しかもおじいちゃん、夏バテで体調を崩しているから病院に行ってて、子供たちを降ろした後はお父さんは迎えに行くんですね、病院へ。だから、夏休みだしおじいちゃんが心配だから来たのかな、くらいに思っていました。バックグラウンドは徐々にわかってくるのですけどね、突っ込んだ説明はなくて、お父さんと姉弟の日常が淡々と描かれます。
でも、やっぱり実家に兄さんが帰ってきているって、心強いのでしょうね。結婚してる妹(子供たちにとってはおばさん)もいろいろ言い訳しては実家に居つくようになったり。わかる気がする(笑)。微妙な年齢のお姉ちゃんは、弟に対して威張ったり、優しくしたり。弟が母親と会って、なにがし買ってもらってきたら腹立たしくて当たり散らしたり。
でもね、生活のコアは日本だろうと韓国だろうと同じです。大人たちはみんな人生に疲れていて、お金がなくて、子供たちも欲しいものが手に入らなくて。お父さんの商売なんてうまくいかなくて、そうかといって資格取得のための勉強もうまくいってないみたいで。せめて売ってる靴は「本物だ」ってお父さんが言うから信じてたのに、やっぱりニセモノで。何もかもが、人生が、自分にだけはそっぽを向いてて。それでも生きてゆかねばならなくて。情けなくて、そういえば彼氏がいると思っていたけれど、よく考えると向こうからは連絡くれたことがなかったような。弟は素直で、場を明るくしてくれたりはするんだけれど。
大人たちの情けなさ。でも、庶民ってこんなもので、自分だって身につまされる。子供の頃、気ままで自分勝手な親が大嫌いだった少女も、自分。いや、映画の女の子のほうがずっと素直でいい子だけれど。あ~心に痛い。
ところで、韓国映画って子供の構成が、よくお姉ちゃんと弟だったりするんだけれど(最近ではこの映画と「ミナリ」)、これが理想形なのかな。そんなことないか(笑)。とにかく、希望はあれど、リアルな映画だったのでした。