長かった~~(笑)。こんなに長い映画だったなんて。末期がんだと知った男が、子供のために何かを残そうとする・・・ストーリーとしては、よくあるものです。
ただ新鮮だったのは、あのハビエル・バルデムに霊視能力があったこと。死んだばかりの人と意志疎通ができたり、今しも死ぬゆく人が見えたりするのです。
これには最初、驚きました。まっとうな仕事してなさそうな男だったので、インチキかとも思いました。が、違うのです。しかし、だからといってどうなのか。この能力、果たしてストーリーに必要だったのかどうか。よくわかりません。
ともかく、ハビエルは面倒見もいいし、いい奴なんですが、裏社会の人間です。不法移民に仕事を紹介したり、パッチもんや海賊版を作らせてさばいたり、彼のおかげで生きてゆける人々がいるのも事実ですが、警察に賄賂を使ったりもしてるので、権力を傘に着たアホヅラな若警官になめられたりもしています。
ところが、自分の体が朽ちてゆくのです。あれだけ死者と交信できるのに、自分が朽ちてゆくのです。仲間の霊能者に「俺は死なない」などと言ったりもしますが、「いいえ、あなたは死ぬのよ」と言われていまいます。
貧しいとはいえ、面倒を見ている子供たちはどうなるのか。別居中の妻とやりなおそううとしても、彼女は普通ではない。興奮したり、理解不能なことを言ったり、結局彼女もがんばっているんだけれど、子供の面倒をみれる状態ではない。
そんなとき、警察に裏切られて、セナガルから来ていた不法移民が捕まってしまう。当然、強制送還。そうこうしているうちに、世話をしていた中国からの不法移民たちにも大事件(事故?)が起きてしまう。取り返しはつかない。どうしようもない。
(私はこの辺で、ジャッキー・チェンの「新宿インシデント」を想起しました。あれも悲しかったけれど、よくできた映画でした。)
残された、セネガル人の妻と子供の面倒を見ていたハビエル。しかし、彼女もまた、お金さえあれば(夫の後を追って)セネガルへ帰りたい。
病状はどんどん進む。妻は療養のための施設へ入ってしまう。もう誰も残っていない。それどころか、取り返しのつかないことは、ますます取り返しのつかないことに・・・。
死にゆくハビエル。ありったけのお金をセネガル人の(残された)妻に与え、「もう少し、もう少し、子供たちの世話をしてやってくれ・・・」と懇願する。しかし、お金を手にした彼女は・・・。
この映画のどこに一筋の光があったのかな。「一筋の光を見出そうとした人間の現実」なのかな。お守りの石を子供たちに手渡せたのがせめてもの希望かな。
つらいですね。結局、誰も悪くないのに、物事が悪い方にしか転がらない。なんでこうなるのか、と思うんだけど、これが現実なんだろうね。
ハビエル・バルデムはしかし、死にゆく姿がセクシーでした。