「英国王のスピーチ」でアカデミー賞を受賞したトム・フーパー監督と、「博士と彼女のセオリー」でアカデミー賞の主演男優賞を手にしたエディ・レッドメインが、「レ・ミゼラブル」に続いてタッグを組み、世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベの実話を描いた伝記ドラマ。1926年、デンマーク。風景画家のアイナー・ベルナーは、肖像画家の妻ゲルダに頼まれて女性モデルの代役を務めたことをきっかけに、自身の内側に潜む女性の存在を意識する。それ以来「リリー」という名の女性として過ごす時間が増えていくアイナーは、心と身体が一致しない現実に葛藤する。ゲルダも当初はそんな夫の様子に戸惑うが、次第にリリーに対する理解を深めていく。第88回アカデミー賞で主演男優賞、助演女優賞など4部門でノミネートを受け、ゲルダを演じたアリシア・ビカンダーが助演女優賞を受賞した。(映画.comより)
この作品、オスカーをも制したのに上映館が少ないんですね。少なくとも和歌山では、やってない。いや、半年ほど遅れて来るのかもしれませんが。ともかく、今をときめくエディ君だし物語としても興味があったので、行って来ました、都会まで。
主人公は若い画家夫婦。エディ扮する才能ある風景画家アイナーは、すでに成功していて、ギャラリーでも話題をさらうのが常となっています。対する奥様ゲルダ(演じるはオスカーウィナー、アリシア・ヴィキャンデル)は、必死に絵を描くわりにはその才能を認めてもらえず、悶々としています。二人とも若くて美しい。気が向かなければ昼近くまで寝ている優雅な生活で、デンマークに貴族制度があるのかどうかは知らないけれど、冒頭からの庶民とはかけ離れた世界の描写に、少しとまどいました。
また、「今、知ってて見る」からかもしれないけれど、エディが最初から中性的。色白・細身で物腰もやわらか。まぁでも、周りも「それを予想する」なんて考えられない時代だったんでしょうけれど。そしてそんな時代に、自らの「女性性」に目覚めてゆくエディには、いばらの道が待っています。
最初は戸惑った妻も、不思議なもので「女性化した夫」の絵を描くようになってから才能を認められ始めるのです。モデルを尋ねられると「夫のいとこ、リリーよ」と答えて。
美しく女装したリリーが社交デビューするようになっても、人々は女性と信じて疑いません。しかし、同性愛者のヘンリク(ベン・ウィショー)は最初から見抜いていました。「アイナーだ」と。
どの医者にかかっても病気扱いされていたアイナーは、ある日ドイツ人の男性医師に出会います。彼は男性と女性の中間に位置する性や性の不一致に関する理論を発展させていたためアイナーの考えを理解したのです。
そして行われる性転換の手術。映画では一度しか描かれていませんが、実際は5度も受けたのだそうです。また、ある文献には「手術中にアイナーの体内に未発達の卵巣が発見された」とも。性分化疾患(インターセックス)と言うらしいです。
臓器移植による体の拒否反応を抑える薬など発明されていなかった時代。5度もの手術を経てやっと女性の体を得たアイナーも、長く生きることはできなかったのです。
すごいお話ですね。前述したように、映画ではさらっと描かれていることも、実際は5度だった読むと、感嘆せざるを得ません。そんなにしてまで女になりかったのですものね。大変なことです。
ただ、個人的には映画にそこまでのエモーションは感じませんでした。何というか、見方によっては「金持ちの道楽」にしか見えないところがあって。私がヒネているだけかもしれないのですが、多分必死に働かなければいけないような環境であれば、気づかずに通り過ぎたんだろうな、と。絵を描くだけのために(もちろんギャラリーで売り込むってこともあるんだけれど)パリに6ヶ月以上住んでみたり、(そのパリにいる)幼なじみの男性ハンスがものすごく成功している金持ちだったり。着ているものもいちいちおしゃれ。ハンスなんて、とってもハンサムな好青年でしたよ!
「画」として美しい映画に仕上がっていることは確かです。みんなきれい。お話も美しい。でも、なにがどうなのかはよくわからないのだけれど、個人的には少し消化不良な感覚が残っています・・・。ヒネていてごめんなさい。