田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

リリーのすべて(The Danish Girl)

2016年04月30日 07時46分34秒 | 日記

 

 the danish girl

 

 

 「英国王のスピーチ」でアカデミー賞を受賞したトム・フーパー監督と、「博士と彼女のセオリー」でアカデミー賞の主演男優賞を手にしたエディ・レッドメインが、「レ・ミゼラブル」に続いてタッグを組み、世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベの実話を描いた伝記ドラマ。1926年、デンマーク。風景画家のアイナー・ベルナーは、肖像画家の妻ゲルダに頼まれて女性モデルの代役を務めたことをきっかけに、自身の内側に潜む女性の存在を意識する。それ以来「リリー」という名の女性として過ごす時間が増えていくアイナーは、心と身体が一致しない現実に葛藤する。ゲルダも当初はそんな夫の様子に戸惑うが、次第にリリーに対する理解を深めていく。第88回アカデミー賞で主演男優賞、助演女優賞など4部門でノミネートを受け、ゲルダを演じたアリシア・ビカンダーが助演女優賞を受賞した。(映画.comより)

 

 

 

 この作品、オスカーをも制したのに上映館が少ないんですね。少なくとも和歌山では、やってない。いや、半年ほど遅れて来るのかもしれませんが。ともかく、今をときめくエディ君だし物語としても興味があったので、行って来ました、都会まで。

主人公は若い画家夫婦。エディ扮する才能ある風景画家アイナーは、すでに成功していて、ギャラリーでも話題をさらうのが常となっています。対する奥様ゲルダ(演じるはオスカーウィナー、アリシア・ヴィキャンデル)は、必死に絵を描くわりにはその才能を認めてもらえず、悶々としています。二人とも若くて美しい。気が向かなければ昼近くまで寝ている優雅な生活で、デンマークに貴族制度があるのかどうかは知らないけれど、冒頭からの庶民とはかけ離れた世界の描写に、少しとまどいました。

また、「今、知ってて見る」からかもしれないけれど、エディが最初から中性的。色白・細身で物腰もやわらか。まぁでも、周りも「それを予想する」なんて考えられない時代だったんでしょうけれど。そしてそんな時代に、自らの「女性性」に目覚めてゆくエディには、いばらの道が待っています。

最初は戸惑った妻も、不思議なもので「女性化した夫」の絵を描くようになってから才能を認められ始めるのです。モデルを尋ねられると「夫のいとこ、リリーよ」と答えて。

美しく女装したリリーが社交デビューするようになっても、人々は女性と信じて疑いません。しかし、同性愛者のヘンリク(ベン・ウィショー)は最初から見抜いていました。「アイナーだ」と。

どの医者にかかっても病気扱いされていたアイナーは、ある日ドイツ人の男性医師に出会います。彼は男性と女性の中間に位置する性や性の不一致に関する理論を発展させていたためアイナーの考えを理解したのです。

そして行われる性転換の手術。映画では一度しか描かれていませんが、実際は5度も受けたのだそうです。また、ある文献には「手術中にアイナーの体内に未発達の卵巣が発見された」とも。性分化疾患(インターセックス)と言うらしいです。

臓器移植による体の拒否反応を抑える薬など発明されていなかった時代。5度もの手術を経てやっと女性の体を得たアイナーも、長く生きることはできなかったのです。

すごいお話ですね。前述したように、映画ではさらっと描かれていることも、実際は5度だった読むと、感嘆せざるを得ません。そんなにしてまで女になりかったのですものね。大変なことです。

ただ、個人的には映画にそこまでのエモーションは感じませんでした。何というか、見方によっては「金持ちの道楽」にしか見えないところがあって。私がヒネているだけかもしれないのですが、多分必死に働かなければいけないような環境であれば、気づかずに通り過ぎたんだろうな、と。絵を描くだけのために(もちろんギャラリーで売り込むってこともあるんだけれど)パリに6ヶ月以上住んでみたり、(そのパリにいる)幼なじみの男性ハンスがものすごく成功している金持ちだったり。着ているものもいちいちおしゃれ。ハンスなんて、とってもハンサムな好青年でしたよ!

「画」として美しい映画に仕上がっていることは確かです。みんなきれい。お話も美しい。でも、なにがどうなのかはよくわからないのだけれど、個人的には少し消化不良な感覚が残っています・・・。ヒネていてごめんなさい。

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アーロと少年(The Good Dinosaur)

2016年04月25日 07時33分45秒 | 日記
 good dinosaur
 

 巨大隕石の墜落による恐竜絶滅が起こらなかったらという仮説に基づき、恐竜が地上で唯一言葉を話す種族として存在している世界を舞台に、弱虫の恐竜アーロが、孤独な人間の少年スポットとの冒険を通して成長していく姿を描いたピクサー・アニメーション。兄や姉に比べて体も小さく、甘えん坊の末っ子アーロは、何をするにも父親がいてくれないと始まらない。そんなある日、アーロは川に落ちて激流に飲み込まれ、家族から遠く離れた見知らぬ土地へと流されてしまう。ひとりぼっちの寂しさと不安にさいなまれるアーロは、そこで自分と同じ孤独な少年スポットと出会い、一緒にアーロの故郷を目指す冒険に出る。(映画.comより)

 

 

 久しぶりにチビ息子と鑑賞。恐竜大好き少年だから、るんるん。でも、お話は意外にシリアスだったのです。

そこは、隕石が地球に衝突しなかったから恐竜がず~っと生きて来ている世界。彼らは言葉を持ち、自分の土地を耕し、なんとニワトリまで飼っています。極寒の季節に備えてサイロに食料を蓄えたり、チビ息子(?)のアーロはニワトリへの餌やりが日課だったりします。

文明を持つ恐竜たち。しかし、数は多くないのか、密には住んでません。地球はだだっ広く描かれています。単に田舎なのかもしれませんが。

チビッ子アーロは、小さい上にビビりで、お父さんはいつも彼のことを気に懸けています。アーロだって「このままではいけない」と思っているのですが、なかなか強い恐竜にはなれずにいます。そんなある時、パパはアーロを川沿いに山へと連れ出します。ところが激しい嵐に遭遇。パパはアーロを守って流されてしまい、そのままアーロも流され、見知らぬ土地で目覚めます。ひとりぼっちで、でもおうちへ帰りたい。「川をたどっていけば帰れる」って、確かパパが言ってた。でも、ここはどこなんだろう・・・。そんなアーロの冒険が始まります。

道中、同じくひとりぼっちの少年スポットと出会います。でも言葉を持たない彼とコミュニケートすることはできず(多分言葉を持っててもできないだろうけど)、でも、少年はサバイバルの知識はあるようで、そんなこんなで持ちつ持たれつ、旅してゆきます。

お話は、ピクサーお得意のバディものの域を出ませんが、なんたって画像がきれいです。そして、人間が恐竜より遙かに野蛮という設定に、少しのとまどいを覚えます(笑)。

T-Rexの親子がいい奴だったり、アーロとスポットが友情をはぐくんでゆくほっこり系のお話は暖かくて、癒されたいときにはもってこいです。疲れているときにどうぞ。

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ロブスター(The Lobster)

2016年04月22日 07時50分24秒 | 日記

 「ロブスター」海外版ポスタービジュアル

 

 アカデミー外国語映画賞ノミネート作「籠の中の乙女」で注目を集めたギリシャのヨルゴス・ランティモス監督が、コリン・ファレル、レイチェル・ワイズら豪華キャストを迎えて手がけた、自身初の英語作品。2015年・第68回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。独身者は身柄を確保されてホテルに送り込まれ、そこで45日以内にパートナーを見つけなければ、動物に変えられて森に放たれるという近未来。独り身のデビッドもホテルへと送られるが、そこで狂気の日常を目の当たりにし、ほどなくして独り者たちが隠れ住む森へと逃げ出す。デビッドはそこで恋に落ちるが、それは独り者たちのルールに違反する行為だった。(映画.comより)

 

 

 いきなり言いますが、変な映画です。私「籠の中の乙女」は見てないのですが、余程に成功したのでしょうね。今回は有名どころの俳優さんたちがぞろぞろ。コリン・ファレルに至っては、イケメンやんちゃ坊主を封印して、小太り中年のおじさんを知ら~ん顔して演じています。あたま角刈りでいかにも不器用そうなベン・ウィショーなど、「見なければよかったかも」なイケメン俳優たちに多少ショックを受けつつも(笑)。

ともかく、独身だと罰せられるのです。一人になった途端「婚活ホテル」に放り込まれて45日間を過ごし、それを過ぎてもパートナーが見つからない場合は動物に変えられてしまいます。なお、ホテルに入所するとき、あらかじめ「なりたい動物」を聞いておいてくれるので安心です。

この世界では、共通点があることがカップルになる必須条件のようで、例えば「鼻血が出やすい」とかそんなバカなことでもいいので、とにかく共通点が必要なのです。それで、晴れてカップルになれると養子ももらえるし、一生安泰ということです。

最初にコリンが犬を連れてホテルにやってくるのですが、それは姿を変えた彼の兄であることがわかります。我々観客はいきなり冒頭でショックを受けるのですが、万事そんな感じです。慣れなければいけません。

そしてとうとう婚活がうまくいかなかったコリンは、森へと逃げ出します。そこは逃げおおせた独身者のコミュニティーで、皆が独身。これで気楽になると思いきや、今度は独身であることが必須なため、厳しいルールが敷かれています。恋愛でもしようものなら・・・。

困りましたね。どっちにころんでも生きづらいこと。しかし、妙に現実感があるのも事実で、私たちは自由に暮らしてはいるけれど、今の世は妙に窮屈ですよね。もちろん、昔からその時代その時代の道徳観があり、常にそれに縛られてきたのでしょうけれど、今はより不寛容な感じがします。私が若くないからそう思うだけかもしれませんが。

とにかく、設定自体が奇妙でいちいちものすごくヘンなのですが、どこか空恐ろしいのも事実です。案外、何十年後かの近未来にはこうなっているのかもしれない、なんて思いました。

大画面である必要はないと思うので、DVDででも。ちなみに、今回は高校生の娘と鑑賞したのですが、「よくわからんかったから、途中寝てしまった」と言ってました。「絶対に見たい」と言ったのはアンタでしょうが!(笑)

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マジカル・ガール(Magical Girl)

2016年04月17日 10時54分02秒 | 日記

 日本の魔法少女アニメにあこがれる少女とその家族がたどる、思いがけない運命を描いたスペイン映画。独創的なストーリーや全編を貫くブラックユーモアが話題を集め、スペインのサン・セバスチャン国際映画祭でグランプリと観客賞を受賞するなど、高い評価を獲得した。監督はこれが長編映画デビュー作となる新鋭カルロス・ベルムト。白血病で余命わずかな少女アリシアは、日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。ユキコのコスチュームを着て踊りたいというアリシアの夢をかなえるため、失業中の父ルイスは高額なコスチュームを手に入れようと決意する。しかし、そんなルイスの行動が、心に闇を抱えた女性バルバラやワケありな元教師ダミアンらを巻き込み、事態は思わぬ方向へと転じていく。(映画.comより)

 

 

 おおぉぉ!噂には聞いてたけど、本当に怖い映画だった。もちろん、主人公は薄幸の美少女。日本の少女アニメが好きで、今日も「魔法少女ユキコ」のテーマソングに合わせて踊ってる。でも白血病のため余命はわずか。母親もなく、父親は失業中。でも父親の愛情は全身で享受していて、お父さんには感謝もしているし、大好き。憧れのユキコのコスチュームも一度は着てみたいけれど、でも死ぬほど欲しているわけでもない。お父さんと一緒にいられれば幸せ・・・そんな少女が主人公の物語が、どこをどうしてこんな悲劇に発展するのか。多分にスペイン独自の文化もあるのかなぁ、とも思ったりもします。いや、わからないですけどね。日本にもそれ相応のアンダーグラウンドな世界はあるだろうし、性的倒錯だってあるだろうから。

それにしても、新進気鋭の若手監督カルロス・ベルムトの日本文化に対する造形の深さと言ったら!なんなんですか、この人(笑)。私、娘もいますし、生粋の日本人ですけど、これほどの少女漫画の知識はないです。長山洋子のデビュー曲「春はSAーRA SAーRA」なんて知らなかったですし、「美少女戦士セーラームーン」から「魔法少女まどか☆マギカ」までを網羅した上で、江戸川乱歩の「黒蜥蜴」と同タイトルの美輪明宏さんの映画までを加味した内容。1968年の美輪さんの映画へのオマージュと言われても、もはやついて行けません(笑)。すごすぎる!

監督のインタビューを読んだのですが、「日本の男性はみんなアイドルが好きですよね?でも、固定的なイメージの一方で攻撃的なアイドルがいるかもしれないじゃないですか。無邪気で決して攻撃してこない少女が攻撃する、はたまた攻撃される対象になる・・・。」と述べた上で、「私は、日本のアーティストで言うと、ちあきなおみさんに、そのような二面性を感じました。」だって!!みんな、どう思う?!

 ともかく!薄幸のかわいらしい少女が出てくることや、ミステリアスな女性が出てくることに間違いはないのですが、なんとも予想外な映画です。個人的にはアルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」を想起しました。話は全然違うのですが。お話はどこをどう取ってもネタバレになると思うので書きづらいのですが、女の私が一つ言えることは、「本人が認識するかどうかは別として、根っから魔性の女ってやっぱり存在するのね」ということと、「それに一生を掻き回される、そしてそれを不幸だとは思わないたぐいの男が、やっぱり一定数存在する」ということね。それによりすべてを失うようなことがあっても、やっぱり思いしらないと言う・・・。

多分不幸になるとは思うけど、「魔性の女」に生まれてみたかった(笑)。普通に生まれてもどうせ幸せになれないのなら、せめて。

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完全なるチェックメイト(Pawn Sacrifice)

2016年04月13日 08時01分18秒 | 日記

  「ラスト サムライ」の名匠エドワード・ズウィックがトビー・マグワイアを主演に迎え、伝説の天才チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの半生を映画化した伝記ドラマ。アメリカとソ連が冷戦下にあった1972年。15歳の時にチェスの最年少グランドマスターになった経歴を持つボビー・フィッシャーは、その突飛すぎる思考と予測不能な行動のせいで変人として知られていた。アイスランドで開催される世界王者決定戦に出場することになったフィッシャーは、チェス最強国ソ連が誇る王者ボリス・スパスキーと対局。両国の威信をかけた「世紀の対決」として世界中が勝負の行方を見守る中、一局目で完敗したフィッシャーは極限状態に追い込まれながらも、驚くべき戦略でスパスキーに立ち向かう。共演に「17歳の肖像」のピーター・サースガード、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」のリーブ・シュレイバー。「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」「イースタン・プロミス」のスティーブン・ナイトが脚本を手がけた。(映画.comより)

 

 

 ボビー・フィッシャーといえば、はるか昔に「ボビー・フィッシャーを探して」なんて映画を都会まで出て見た記憶があります。なかなかにスリリングな天才の話でしたが、時期が同じ頃だったのか(案外ずれてるのかもしれませんが)、中国映画の「ジョイ・ラック・クラブ」(こちらはマージャンが主体で、女性4人が出て来るウェイン・ワン監督の映画)と記憶が重なっています。自分が女だからか、後者の方が印象が強いですけどね。あ、そうそう。確か4人のうちの一人が天才チェスプレイヤーだったはず。だから混乱しているのかもしれません。

さて、天才の誉れ高いボビーは、若くして頭角を現し、その後めざましい結果を残してゆきます。その辺の「奇行の天才」をトビー・マグワイアが本当にうまく演じていましたね。そして開かれたチェスの「世界王者決定戦」(アイスランド・レイキャビクにて)。時は冷戦時代まっただ中。ソ連とアメリカのチェス対戦は、国家の威信を巻き込んでおおごとになってゆきます。天才にはそんなこと、あずかり知らぬことなのにね。タイトルを24年間保持してきたソ連の天才を演じるのはリーヴ・シュレイバー。そして対局一局目。負けなしだったボビーが完敗。残りは23局。精神の均衡を崩し始めたボビーはどんな手を見せるのか・・・。

私はチェスを知らないので、「今なお語り継がれる神の一手」と言われても、それ自体は理解できないのですが、天才同士がぶつかり合うそのさまは、異様な緊張感でした。まるで「オオカミ男」か「蜘蛛男」のようにわずかな物音に反応し「雑音が入ったから取りやめる」と棄権するさまや、「究極に静かなところはここだ」と、舞台から降りて楽屋の物置の通路を指定するさま、椅子を逆さにするようすなど、とても尋常とは思えない。あまりの緊迫感に、本当に息が詰まるかと思いました。「凡人でよかった~」とか、そんな生やさしいものではなく、身を削ってゆくような緊迫感でした。

なんか、生きるって、やっぱりしんどいですね。凡人が言うなって感じでしょうけど(笑)。

 

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