フランスに実在する建築物で、ひとりの郵便配達員の男が33年もの歳月をかけ、たった1人で完成させた手作りの宮殿「シュバルの理想宮」の実話を映画化したヒューマンドラマ。フランス南東部の自然豊かな田舎町。寡黙で空想好きの郵便配達員シュバルは、変わった形の石につまずいたことをきっかけに、愛娘アリスのために「おとぎの国の宮殿」を建てることを思いつく。さまざまな苦境に直面し、周囲の人々にバカにされながらも、来る日も来る日もたった1人で石を運んでは積み上げ続けるシュバル。そんな彼に、過酷な運命が容赦なく襲いかかる。「グレート デイズ! 夢に挑んだ父と子」の監督ニルス・タベルニエと主演ジャック・ガンブランが再タッグを組み、「ゲンズブールと女たち」のレティシア・カスタが主人公の妻役を演じる。ほぼ全編を通し、現存する理想宮で撮影を敢行した。「フランス映画祭2019横浜」(19年6月20~23日)では、「アイディアル・パレス シュヴァルの理想宮(仮題)」のタイトルで上映。(映画.comより)
この作品は、「家族を想うとき」と続きで同じ劇場で見れたのでチョイスしました。加えてジャック・カンブランが好きだったのです。若い頃に「クリクリのいた夏」とか「ペダル・ドゥース」とか見てましたし。すっかり歳を取りましたけどね(自分もね)。
元々この郵便局員は変人だったのです。真面目に仕事はしますが社交性に乏しく、自分さえ納得していれば”変”と思われるようなことも意に介さない、というか、そんなことに気づかないタイプなんだと思います。黙々と一人でできる郵便配達員は、ピッタリなお仕事だったでしょう。閉鎖的な村で変人扱いされるも、彼をかばう上司が印象的でした。私も、真面目に仕事をこなし、誰に迷惑をかけるでもなく質素に暮らしているのだからいいじゃないの、と思っていた一人です。そんな彼は妻が亡くなった時、「一人で面倒をみれないだろう」ということで、息子を親戚に預けることになり別れ別れになってしまいます。「そんなことはない」とかなんとか言いたかっただろうに、上手く言葉が出て来ず何も言えずに見送ってしまうシュバル。
一人になってしまったシュバルは黙々と働きます。時には雄大な景色に意識を持って行かれたりしながら。このフランスの片田舎が素敵でしたね。こんなところで毎日歩いて仕事をこなせたなら、癒されるのかもしれません。やがて未亡人と知り合い、結婚し娘が生まれます。こんなシュバルの日々が淡々と描かれます。相変わらず質素極まりない生活ですが、ある時から娘のために石を積んで城を建て始めます。素人ながら(映画では独学で勉強している様子は描かれませんが、勉強したんでしょうね)、毎日黙ってコツコツ続けるのが得意なシュバルは、どんどん形のあるものを仕上げてゆきます。
少し変わっているとはいえ、こんなに真面目に生きてるシュバルはしかし、大きくなった息子が訪ねて来てくれる、そして息子は成功している、などいいこともあるのですが、自分の周りの人間がどんどん先立ってしまうなど、受難の日々です。でも、他に表現の方法も知らないシュバルは、黙って城を作り続けます。そして映画も、決して大仰な音楽を付けたりせず、ただ淡々とシュバルの人生をなぞってゆきます。内容は結構びっくりするようなこともあるのに、あまりに映画が淡々としてるので、「いいんかな」とも思いましたが(笑)、それがシュバルの人生であり、監督のこだわりでもあったのでしょうね。
決しておもしろいたぐいの映画ではないと思いますが、こんなにすごい「石の城」が本当にあるなんて驚きです。近くを通ることがあれば(笑)是非寄ってみたいです。