「しあわせの隠れ場所」「ゼロ・グラビティ」のサンドラ・ブロックが、許されぬ罪を背負って生きる元受刑者を演じたヒューマンサスペンス。過去に犯してしまった殺人の罪で服役し、20年の刑期を終えて刑務所から出所したルース・スレイター。しかし、罪を償って社会に出たはずの彼女を待ち受けていたのは、過去の罪が許されない世界だった。社会に溶け込むことができずに孤立し、安息を求めて訪れた故郷の地でも厳しい批判にさらされ、行き場をなくしていくルース。そんな彼女が罪を償うことができる唯一の手段は、昔、とある理由で置き去りにしてしまい、離れ離れになってしまった妹を捜すことだった。サンドラ・ブロックが主演のほか製作も務め、2019年・第69回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(アルフレッド・バウアー賞)を受賞した「システム・クラッシャー 家に帰りたい」で注目されたドイツの新鋭ノラ・フィングシャイトがメガホンをとった。共演にビンセント・ドノフリオ、ビオラ・デイビス。Netflixで2021年12月10日から配信。それに先立つ11月26日から一部劇場で公開。(映画.comより)
<2021年11月28日 劇場鑑賞>
待てばNetflixで見れたんですけど、近所の映画館で上映されていたから行ってきました。サンドラ・ブロック、好きなのに最近見なくて、久しぶりだったので、そこに飛びついたってこともあるんですけど。
果たして、サンドラは熱演でしたね~。保安官殺しの罪で20年の刑期、でも模範囚なので少し早く保護観察で出てきたという設定。化粧っ気のない顔、なんだか目が小さく見えました。サンドラの年齢設定が「?」と思うほど妹が若く、ちょっと不自然な感じもあるのですが、若くないサンドラが醸し出すなんとも言えない悲哀が、却ってリアルな雰囲気を作っていると、私は思いました。
過去の映像が断片的に織り込まれます。姉妹は、早くに母親を亡くしたのでしょうね、父親と3人暮らしのようなのですが、サンドラが「お父さん、やめて!」と叫んでも父親は子供たちの部屋をロックして出て行ってしまい、何かいけないことが起きている模様。そして、家を取り囲む人々。妹を守るため、呼びかけられても家の中に籠るサンドラ。この時、妹は5歳。サンドラは、かなり大きいです。
いくら模範囚でも、保安官殺人ともなると罪は重く、社会も容赦ありません。辛いことばかりですが、じっと耐えるしかありません。実は彼女は、服役中に妹にたくさん手紙を書いたのですが、一度も返事は来ませんでした。無事なのか。どんな感じに育っているのか。妹の人生を邪魔する気はありませんが、一番の関心事はそれなんです。彼女は行動を開始します。
彼女を助けるのが、弁護士のヴィンセント・ドノフリオ。罪はちゃんと償っているし、妹の養父母に面会する権利と殺人とはまた別、という考え。彼は姉妹の元の家に住んでいるのです。過去の事件は知らなかったようです(なんで元の実家に、偶然弁護士が住んでいるのか、とは思いましたけど)。彼女に対する警戒を解かないヴィンセントの妻は、肌の黒い息子たちを必死に守っているようにも見えます。この妻を演じるのがヴィオラ・デイヴィス。しかし妹の養父母は、大切に育てている娘を犯罪者と会わせる気はありません。(養父母との)面会時間中は、賢くしているつもりだったサンドラも、20年も刑務所にいて世間を知らないのです。つい声を荒げてしまい、ますます嫌悪されてしまいました。
と、それだけでも充分成り立つ話なのに、そこに殺された保安官の息子たちが絡んできます。なにが模範囚だ、あいつのせいで母はアルコール中毒に、自分たちも悲惨な人生を歩むハメになったんだ、と鼻息も荒く復讐心に燃えています。危なっかしかったですね、本当に。彼らは深く考えずに行動しているゆえ、何をするかわからないし、サンドラも無防備です。いろんな人が絡んで、本当にドキドキしました。
ただ、勝手なことを言うと、どうしてもサンドラがいい人に見えるので、最初から「何かあったに違いない」と思うし、話の途中で真相が見えてしまいます。でも、だからと言って、緊張が解けるわけではなく、ヴィオラが真相に気付くところなどは出色でした。この映画は、女性たちがよかったですね。妹の養父母も、面会したサンドラが「寝ない子だった。今、睡眠は取れているの?」と尋ねたとき、何かに気付いた母親の表情も出色でした。父は嫌悪するばかりでしたが(それはそれで当然なのだが)。
悲しかったです。年の離れた妹。私には、年の離れた弟がいるのですが、やっぱり私もサンドラと同じことをしたでしょう。切実さがわかるだけに、身を切られる思いでした。