女性の選択の権利としての人工妊娠中絶を題材に、1960年代後半から70年代初頭にかけてアメリカで推定1万2000人の中絶を手助けしたとされる団体「ジェーン」の実話をもとに描いた社会派ドラマ。
1968年、シカゴ。裕福な主婦ジョイは何不自由ない暮らしを送っていたが、2人目の子どもの妊娠時に心臓の病気が悪化してしまう。唯一の治療法は妊娠をやめることだと担当医に言われたものの、当時の法律で中絶は許されておらず、地元病院の責任者である男性全員から手術を拒否されてしまう。そんな中、ジョイは街で目にした張り紙から、違法だが安全な中絶手術を提供するアンダーグラウンドな団体「ジェーン」にたどり着く。その後ジョイは「ジェーン」の一員となり、中絶が必要な女性たちを救うべく奔走するが……。
主人公ジョイを「ピッチ・パーフェクト」シリーズのエリザベス・バンクス、「ジェーン」のリーダー、バージニアを「エイリアン」シリーズのシガニー・ウィーバーが演じる。「キャロル」の脚本家フィリス・ナジーが監督を務めた。2022年・第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品。(映画.comより)
<2024年3月30日 劇場鑑賞>
この話題は昔のものではなくて、今なおアメリカではどちらを支持するかでもめてますよね。私個人的には、子供の命は何物にもかえがたいとは思いますが、母体に危険がある場合は堕胎することを選ぶ権利があるべきだと思います。それは母親が判断できるべきです。もちろん家族と相談の上でね。
今回の映画では、妊娠した主人公ジョイ(エリザベス・バンクス)に病気が発覚。このまま妊娠を継続するのは命の危険があるということなのに、年寄りじいさんばかりの会議で「許可しない」と結論付けられます。なんで妊娠したこともないじじいがわかったようなことを?もちろん、ジョイだって子供を失いたくない。自分の子だもの。でも、選択の権利はあってもいいはず。
そうやってうつうつ悩んでいるジョイは、ふと「コール・ジェーン」と書かれた小さな看板を目にします。戸惑いながらも連絡。一度は逃げ出したものの、考え直して再度訪問。”ジェーンたち”だって、みんな女性だもの。「最初は戸惑うのは当たり前」と、優しく受け入れてくれます。
そうして臨んだ堕胎手術。残念ながら医師は男性でしたが、無事に成功。アフターケアも受けます。そして、手先が器用だったのか(そういえば料理上手だった)、ジョイはやがて医師の手伝いをするようになります。”ジェーンたち”の手伝いを始めたころは、いいかげんな態度で堕胎に来る若い女性に腹を立てたりもしたけれど、そこは代表のシガニー・ウィバーにも諭されて、女性たちのために働くようになります。
しかし、違法行為であることに変わりはなく、要はかの男性医師だって闇医者なわけです。メンバーが増えれば情報も漏れるし、なかなかに難儀なことも起きますが、それをはねのけてがんばった女性たちの話です。これが、事実なのですから。
さて、ストーリーに関係ないところで、自分の感想をいくつか。まず、男性たちの髪型が、みなビートルズ風の前髪パッツンだったこと。ちょっと笑えました。1960年代だったんだなぁって、それだけでわかります。あと、欲を言えば、最初にジョイが堕胎を決心するところ、もう少し葛藤があってもよかったかなと思いました。あまりにすんなりって感じで。命が懸かってるのだから当然なのかもしれませんが。
とにかく、同じ女性として他人ごとではない事実。興味深く見れました。そして、今なお論争されている現実に「人それぞれ、自分の状況に応じて決心すればいいのでは?」と思いました。日本ではそんなに声高に「禁止だ!」と叫ぶ人たちがいないから、そう思うのかもしれませんが。
間違いなく、今年のベスト10に入れます(笑)