「万引き家族」で第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督が、初めて国際共同製作で手がけた長編作品。母と娘の間に隠された真実をめぐる物語を、フランスを代表する女優カトリーヌ・ドヌーブとジュリエット・ビノシュの共演で描く。フランスの国民的大女優ファビエンヌが自伝本「真実」を出版し、それを祝うためという理由で、アメリカに暮らす脚本家の娘リュミールが、夫でテレビ俳優のハンクや娘のシャルロットを連れて母のもとを訪れる。早速、母の自伝を読んだリュミールだったが、そこにはありもしないエピソードが書かれており、憤慨した彼女は母を問いただすが、ファビエンヌは意に介さない。しかし、その自伝をきっかけに、母と娘の間に隠されていた愛憎渦巻く真実が次第に明らかになっていく。女優として優れていることを何よりも優先するファビエンヌをドヌーブ、娘のリュミールをビノシュが演じた。そのほかリュミールの夫ハンク役でイーサン・ホーク、ファビエンヌの共演女優役でリュディビーヌ・サニエら実力派キャストが顔をそろえる。2019年・第76回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品。日本人監督の作品として初めて、同映画祭のオープニング作品として上映される。(映画.comより)
日本で成功した監督がフランスでキャリアを築く、あるいはフランス資本を得る、ということは今までもわりと聞きましたけれども、いきなり(かどうかはわかりませんが)ドヌーヴ、ビノシュ、サニエにイーサン・ホークを担ぎ出せる人がそうそういるでしょうか。是枝監督って、すごいです。産経新聞の夕刊に、バイオグラフィーみたいなのが連載されてたのを読んだのですけど、なかなかやっぱり凡人ではないという印象を受けました。だからこそ成功するのでしょうけれど。
今回は、話の筋としてはどうってことありません。第一線の女優でいるために充分に家庭を顧みれなかった母親と、母親の愛情に飢えながらも実は母のことをまぶしいとも思っている、(多分)女優になれなかった娘のお話。愛憎が複雑に入り組むのは、女同士なら当然のこと。いまさら新しい話でもありません。ただ、見るものをも圧倒するほどのカトリーヌ・ドヌーヴの迫力と自信、イーサン・ホーク演じる”しがないテレビ俳優”のはずのビノシュの夫の鋭い観察眼が、出色でした。ドヌーヴの迫力の前では、さすがのビノシュ姐さんもかすんでいたと思えるほどです。
また、若い監督との感じ方の違いも、とてもさりげなく織り込まれていました。私もドヌーヴと同じように感じていたので、「え?撮り直し?」という彼女のセリフに100%同意していました。映画内映画のドヌーヴも素晴らしく、感性のままに演技する(でもきちんと役を理解している)大女優は、さもありなん、と感嘆しました。
日本での興行はどうだったのかな。これだけのメンバーで次はないかもしれないけれど、是枝監督、これからも期待しています。