田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

生きる LIVING(Living)

2023年04月02日 14時06分50秒 | 日記

Review | Living - The Santa Barbara Independent

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 黒澤明監督の名作映画「生きる」を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本によりイギリスでリメイクしたヒューマンドラマ。

1953年、第2次世界大戦後のロンドン。仕事一筋に生きてきた公務員ウィリアムズは、自分の人生を空虚で無意味なものと感じていた。そんなある日、彼はガンに冒されていることがわかり、医師から余命半年と宣告される。手遅れになる前に充実した人生を手に入れたいと考えたウィリアムズは、仕事を放棄し、海辺のリゾート地で酒を飲んで馬鹿騒ぎするも満たされない。ロンドンへ戻った彼はかつての部下マーガレットと再会し、バイタリティに溢れる彼女と過ごす中で、自分も新しい一歩を踏み出すことを決意する。

「ラブ・アクチュアリー」などの名優ビル・ナイが主演を務め、ドラマ「セックス・エデュケーション」のエイミー・ルー・ウッドがマーガレットを演じる。(映画.comより)

 

 

<2023年4月2日 劇場鑑賞>

 オリジナルは見ていません。話は聞いたことがありますが、なにぶん古い映画でしたので、見ずに来てしまいました。今回は大好きなビル・ナイとカズオ・イシグロのコンビと聞いて、絶対に見たいと思ってました。

 本当に良い映画でした。1950年代のイギリスを知っているわけではありませんが、中流家庭の紳士たちがカチっとしたスーツにハットで規則正しく出勤する様は、いかにもイギリスっぽくて、素敵でした。それがたとえ表面的な取り繕いであっても、やはり言葉遣いの正しい理性的な人が好きです。しかしそれが、大変なことは請け負わない、いわゆる「たらい回し」の精神に繋がってしまうのかもしれないのですが。それにしても、この映画の「たらい回し」は、すさまじかったですね。役所に陳情に来ている人たちに、大真面目な顔で「これは○○課の担当だ」と言って、永遠にたらい回しするのです。最終的に最初の部署に戻って来ても、また同じことを言う。しかも、何度も来ている人にでも、何度でも同じことをする。なんで、こんなことが許されるのですか?じゃぁ、何も請け負わないこの人たちは、毎日どういう仕事をしているのですか。書類の整理?それも大事でしょうが、やはりいくら”お役所仕事”でもあんまりだと思いました。これ、今だったら「こんな仕打ちに遭いました」と言ってSNSに即座に挙げられて、非難殺到ですよ。火をつける奴が出て来るかもです。

 余命幾ばくもないと知ったビル・ナイが、いろいろ彷徨った後に、死ぬ前に何かを成し遂げようと奮闘し、成功してゆく物語なのですが(しかし、その手柄は横取りされる)、よく考えると少々身勝手ですよね。余命を宣言された途端、無断欠勤を続け、その後放置してあった案件に奮闘するのは素晴らしいとしても、元気だったらやらなかったってことですよね。それってどうなのかって気もします。もちろん、時代のせいもあるでしょうし、皆がそうだったら”出る杭”になりづらいってことはあるでしょうけれど。

 しかし、ビル・ナイは名演でした。いかにも紳士な感じで、大仰な感情は顔に出さないのですが、最後まで告げなかった息子に対する思いとか、キャリアアップを図った元部下の女性を心配する姿とか、無事に子供たちの遊び場ができたことを一人で噛みしめている雪のシーンとかは、さすがの名演でした。ビル・ナイのあまりの名演に、私は「よく考える」スキを与えられず、素直に感動して帰り、後から「よく考えた」のでした(笑)。そう言えば、今盛んに宣伝している「ホエール」も、ブレンダン・フレイザーが「人生で一度だけ、正しいことをしたかった」と叫んでますね。もちろん、ビル・ナイが「一度だけ」だったかどうかはわかりませんけど。

 ともかく、名作です。カズオ・イシグロの名脚色も一見の価値ありです。是非、ご覧になってください。

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