写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

年末闘争

2017年11月09日 | 生活・ニュース

 若かりし頃、毎年年末ともなると労働組合が使用者側に対して、賞与の要求闘争をするという年末の風物詩のようなものがニュースでよく流されていた。最近はこのようなニュースを見ることがめっきり少なくなっている。

 働く側の人間がおとなしくなってきたからか、闘争をしてもそれほどの成果が得られなくなったからか、それとも十分に満足のいく賞与が出されているからか、「闘争」らしい激しい組合活動は廃れているようである。

 私ごとではあるが、退職してから随分と長い年数は経ったとはいえ、現役時代と代わらない年末恒例の一仕事が控えている。「年末闘争」と呼んでもよいくらいの大仕事といえば、年賀状書きである。昨日、郵便局に出向いて一束を買ってきた。

 アラエイトに近づきつつある年齢ともなると、「今年こそ、出状数を減らしていこうか」と思いながらも、結局は従来と同じ枚数を書いてしまっている。書く手間といっても、表書きの宛名と、プリンターで印刷した裏面にひと言自筆で書き加えるだけのものである。この手間を惜しんで旧知の人との縁が切れるのは惜しいと思うからである。

 そんなことを思いながら、昨日、来年の戌年にふさわしいイラストを添えた年賀状の印刷を終え、今日からは暇を見て宛名書きを始める。相手の名前を書くときに、その時にはその人の顔と、付き合いのあったころの出来事を思い出している。

 年賀状を出すということは、単に新年の挨拶状を届けるということだけではなく、書いている間、相手のことを思い起こし、自分の人生に彩を加えてもらったことに、感謝の念を呼び起こさせる自分のための行事のような気がしている。

 それであれば「年末闘争」などと、けんか腰の言い方をしてはいけない。ここは穏やかに「年末感謝祭」とでも言い直して、気持ちを込めて、さあ今日から書き始めよう。