写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

冬虫夏草

2006年06月13日 | 季節・自然・植物
 3年前から山口県教育委員会が主催している「自然探訪講座」という会に参加している。テーマは、きのこ・植物ウオッチングである。
 
 県東部の山を歩き、生育しているきのこ類や植物を鑑賞し、若い高校教師である講師から、種類・名前・食用の可否などいろいろ教えてもらうものだ。
 
 10時までに目指す山の集合場所に各人車で行く。30数人の、これこそ老若男女が山に入り、弁当を食べては鵜の眼・鷹の眼できのこを探して歩く。

 知人に誘われて入会したが、私の入会の本当の目的は、きのこ探しというよりは、軽い山歩きが出来るということであった。

 時に、食用できる大型のきのこが見つかり歓声が上がることもある。日本には4000種とも5000種ともいわれるきのこの野外観察をする。

 毒キノコもある。食用できるものとそっくりの色・形をしているものもあり、食べるとなると油断は出来ない。

 私は素人で、しかもこの会の劣等生であるため、詳しいきのこの話は出来ないが、ひとつ興味深いきのこがあるのを知った。

 その名は「冬虫夏草」(とうちゅうかそう)という種のきのこである。昆虫に菌が入り込み、そこからか細いきのこが出てきたものである。

 夏に昆虫が卵を産む。その卵が幼虫に孵化し土の中に潜り、植物の根の栄養分を吸収して大きく成長する。

 この時、菌が昆虫について体内に侵入し、豊富な栄養分を吸収しながら育っていくことがある。

 長い冬の間に、菌は昆虫の体内で成長する。昆虫は死んでしまい、形は残っているが中身はもうすっかり菌に変わってしまっている。

 春の終わり頃から初夏にかけて、菌に変わった虫は発芽し、小さな頭が地面に出てきて細長いきのこになる。

 このように、冬は虫で過ごし、夏には草となる奇妙な自然生態から「冬虫夏草」と呼ばれている。
 
 せみ・芋虫・トンボ・蚕のサナギ・蜂等、色々な昆虫に寄生するが、菌の種類によって寄生する植物の種類も決まっているという。

 冬虫夏草のように、パラサイトであるにもかかわらず、あたかも自分の力で地上に顔を出したようなきのこもいるが、人間界にも時に同様なものはいるようだ。

 ともあれ、誰が名付けたか冬虫夏草という名が面白い。これにあやかって自分の生態を表現してみると、冬焼酎夏麦酒とでも言えばいいのだろうか。

 いや、また違う方の話になってしまいそうなので、今日はこのあたりで。
   (写真は、何かを感じさせるきのこ「冬虫夏草」)