サラリーマン生涯の内、入社後20年間を機械エンジニアとして過ごしてきた。あとの17年間は雑用係であった。その機械エンジニアであったころの習性は、退職した今も脈々と受け継がれており、家の中の電気製品や菜園用の小機具などの調子が悪くなったときには、まずは分解して掃除をし、油を差してみる。
大抵のものは、この方法で再び調子を取り戻してくれるが、最近のものは電子化されており、昔の機械のように油を差しただけでは直らないケースが増えてきた。車だって、昭和40年代のもののエンジンルームは、エンジンが載っているだけで、あとは何もなくスカスカ状態で、外部から油を差す個所がいくつもあったが、今や素人が手を出せるところは1か所もない。
そんな先日、1年半前に買ったズームが自慢のデジカメのスイッチを入れると、「レンズエラーが出ました。電源を入れ直して下さい」という警告が画面に出てきた。何度か同じことを繰り返していると突然直るが、しばらく置いておくとまた同じことが起きる。
買った直後にもこんなことが起きた。それはデジカメをケースの中に入れていて、誤って電源が入った時、レンズがケースで押さえつけられて伸び出ることが出来なかったからである。このたびは、ケースから出していてレンズが自由に伸縮できる状態にあってもこんな警告が表示された。
こんなことがたびたび起きるので、買った電器店に持ち込み修理を依頼した。数日後、「修理には1万2千円かかりますがよろしいでしょうか」との電話がかかってきたが、家に望遠倍率は少し劣るもののまだ使えるデジカメがもう1台あるので、修理せずに送り返してもらうことにした。
手元に戻って来たデジカメを手にして、何度か電源を入れてみると、時にうまくいくことはあるが殆んどは警告が表示されて使うことが出来ない。「どうせ壊れてしまっているものであれば、よし、ここはレンズの摺動部に油を差してみよう」と思い、スプレーで油を掛けて軽く布で拭いてみた。
こわごわ電源を入れてみると何の問題もなくうまく動くではないか。何度やってみてもうまくいく。精密機械に油をさすと壊れることもあるが、うっすらと汗をかく程度の油であればうまくいった。「動かなくなったら油をさす」。単純ではあるが今でも信じている機械エンジニアの格言が、また生きた。
メーカーの驚く顔を予想してみました。
これで写真エッセイが続きます。
油さしは、根本対策にはなっていないようですが、使える状態にはなっています。それにしても故障するのが早すぎますね。怒っています。