写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

丸い月

2019年09月14日 | 季節・自然・植物

 昨夜(13日)、一縷の望みを抱きながら広島カープ対巨人戦をテレビで見ていた。カープは先発した九里が本調子ではないのに対して、巨人の先発・山口は、バッタバッタと三振を取っていき、その差は歴然としている。4回を終えて3対1と巨人がリードしていた。

 今シーズンから巨人に移籍した丸選手は相変わらず調子がよく、打率は3割を超え、ホームランも26本打ち、巨人優勝に向かっての立役者の1人として大活躍をしている。ホームランを打った時など、巨人のチームメイトと笑顔でハイタッチをしている姿を見ると、なぜか切なくなってくる。

 まるで、付き合っていた彼女が自分を振って、新しい恋人と結婚して幸せいっぱいの生活をしているのを垣間見るような気分とは、こんな気持ちのことかと思うほどである。人は悲しくなった時や、せつなくなった時には、何故か月や星を観たくなる。

 時まさしく13日、「中秋の名月」であった。名月を写真に撮ってみたくなった。今や巨人に行ってしまった丸は、呼べど叫べど帰っては来ない。丸は丸でも、丸い中秋の名月を手中に収めてみたい気持ちになった。試合が5対1になり、カープの敗色が濃くなった夜の9時、雲のひとかけらもない東南の空に、こうこうと月が照っている。

 デジカメのダイアルをautoからmanualにし、シャッタースピードを1/125に、絞りをf/8に、isoは400にし、望遠をいっぱいに効かせて撮影した。望遠を効かすと、ほんの少しの手振れで、月は画面からすぐに外れて遠くへ消えてしまう。まるで、逃げ回る丸選手を追っかけているかのように感じる。

 フェンスの上にデジカメを置いて手で抑え込み、息を止めてやっと納得のいく1枚を撮ることが出来た。満月のせいか、クレーターが半月の時ほどははっきりと映っていないが、まあ良しとしよう。最近は、丸いものを見ると、せつなくなってくる。秋だからでしょうかねえ。今夜は丸い月を見て大きく一声吠えてみよう。「逃げた女は追わないぞっ!」と。