写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

薄く軽く

2011年10月08日 | 生活・ニュース

 10月に入り、明日9日はもう寒露。暦便覧には「陰寒の気に合って露結び凝らんとすれば也」とある。いよいよ本格的な秋になって大気の冷気が強まり、露が凍り始め虫の声も聞こえなくなる頃だという。

 そうはいっても日中は、まだ半袖を着るくらいの暑い日であった。昼下がり、冷蔵庫から2リットルのペットボトルに入ったお茶を取り出した。残っていた丁度コップ1杯分を飲み干す。空のボトルに栓をしてテーブルの上にころがし、パソコンに向かって作業をしていた。

 「ボコ、ボコン!」突然大きな音が響いた。テレビも点けていない、奥さんも出かけている。何もない我が家に昼間っから泥棒が侵入してくるはずもない。静かな部屋の中で一体何ごとか? 一瞬考えたあと、すぐ音の犯人に気がついた。定年後の私のように、用も済みごろんと転がっているペットボトルである。

 そういえば、最近よく台所から同じような音が聞こえていたが、大して気にもしていなかった。改めて目の前にあるペットボトルを手に取ってみると、ひと頃のものに比べて随分軽く、ふにゃふにゃして我が息子のように何だか頼りない。

 ネットで調べてみると、1.5リットルのコーラボトルは当初75gだったものが今は48g、なんと3分の2に軽量化されている。2リットルのお茶のボトルも、出始めた94年当時65gだったものが今や35g、なな何と半分近くになっている。

 これじゃあボトルを手に持つと、ふにゃふにゃしているのもうなずける。冷えた空ボトルはへこんでいて、室温に戻るときに膨張してボコンと音を立てたのであろう。いや、ボコンではなく正確にはエコンと鳴って、省資源を訴えているのだと、真面目に善意に解釈してみた。時は過ぎ、薄く軽く、ペットボトルはまるで私の頭のようになっていく。