写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

付和雷同

2011年10月09日 | 生活・ニュース

 昨年買ったロードスターの12カ月点検の案内が、数日前に送られて来た。予約の電話を入れておき、昼過ぎに南岩国駅の近くにあるディーラーに車を持ち込んだ。点検に1時間ばかりを要するという。その間、借りていた本を返しに図書館に行くことにしていた。
 
 車を預け、1.5km離れた所にある図書館まで歩いた。天気はよくて暑い。長袖をまくっていても、すぐに汗ばむほどであった。2時間ばかり本を読んだ後、来たときとは違う道を選んで車屋へ向かって歩いていると、幅が10mくらいある川沿いの道に出た。

 若い母親がバケツと竿を持って、幼稚園くらいの男の子と女の子と一緒に川をのぞきこんでいる。「魚釣りですか?」と言いながら、私も立ち止ってのぞいてみた。フナのように幅広ではなく、10cmくらいの細長い形の魚が20~30匹、群れて、清流に漂っているのが見えた。「頑張って釣ってくださいね」と声をかけてすぐにその場を離れた。

 川を見ながら川下に向かって歩いていると、面白い光景に出くわした。直径1mもあったろうか、先ほどと同じ魚が黒い集団を作って、同じ場所で時計回りに、ゆっくりぐるぐると回転している。しばらく眺めていたが、足元に転がっているアメ粒くらいの小石を、集団の真ん中を狙って投げてみた。ものの見事にその集団は真っ二つに分かれ、それぞれが川の上流に向かって移動した。しかし間もなくまた元のように一つの集団となって、さらに上流へと移動して見えなくなった。

 一大事があると、すぐ真っ二つに別れたかに見えるが、ほとぼりも冷めない内にまた元のひとつの集団にまとまる。この光景と似たようなものを、最近確かにテレビで見たように思うが、はてさて定かに思い出すことが出来ない。付和雷同とは、一定の主義・主張がなく、安易に他の説に賛成することをいうが、この小魚たちも、テレビで見たあの集団も、きちんとした一定の主義・主張がなく、ただ単に烏合していただけなのだろうか。

 小魚の方はいざ知らず、あの集団だけは「いずくも同じ秋の夕暮れ」では困るんだが……