写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

メトロノーム

2007年10月30日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画
 日曜日の夕方、自宅でピアノを教えている姪が大きな紙袋を抱えてやって来た。中には2台のメトロノームが入っている。

 メトロノームとは、一定の間隔で音を刻み、ピアノやバイオリンなど楽器を練習する際に、テンポを合わせるために使うあの音楽用具だ。 

 こんなものは小学生の頃、音楽教室で見て以来とんと縁のないものであった。その内の1台はネジを巻いても動かない。もう1台は、動くけれど拍子を打つチンという鐘がならない。

 私の「神の手」で何とかならないかという修理依頼であった。最近は、精度が良く壊れにくい電子式のものが多くなっているようだが、預かったものは機械式である。

 壊れてもいいというお墨付きをもらい分解してみた。中には、ゼンマイ・錘・小さな穴の開いた歯車・板バネなどが組み込まれている。

 ある拍子毎に鐘を打つ仕掛けとして板ばねが付いているが、このバネの強さの調節がうまくいっていないと、メトロノームが動かないようになっているし鐘も鳴らないことが分かった。

 機械的に壊れているのではなく、長年使ってきて、ある部分が磨耗したため、バネの強さを調整しなければいけない状況になっている。

 それをやって油を差すと、2台ともカチカチと小気味よい音を出しながらくリズムを打つようになった。2時間かけて蘇生完了である。

 新しく買っても1台が3000円くらいのものであるが、うまく蘇ってくれた。ネジを巻いて私の手首の脈をメトロノームで取ってみた。錘の位置がちょうど72の拍子の「ANDANTE」と書いてあるところであった。

 ANDANTEとはイタリア語で「歩くくらいの速さのこと」という。私の今の生活スピードと同じ速さだ。

 カッチカッチとANDANTEで振れているメトロノームから「アンタッテ、器用な人ね~」と繰り返し言われているように感じた。
  (写真は、神の手で蘇った「メトロノーム」)