写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

銀杏拾い

2007年10月18日 | 季節・自然・植物
 昨年、日中に風が強く吹いた日の夕方、横山の紅葉谷公園に遊びに行った。年配の男が一人、何かを拾い集めているのを見つけた。銀杏であった。

 私も真似して生まれて初めての銀杏拾いをやってみた。ポリ袋に数十個の銀杏を入れて持ち帰った。洗って日に干し、焼いてビールのつまみとしておいしく頂いた。

 昨日、昨年と同じ季節になったことを手帳で確認し、また同じ場所に行ってみた。大きなイチョウの木の下には、黄色の皮が沢山落ちているだけで、実は一つも落ちていない。誰かが拾ったあとだが、まだ木には実が沢山ついている。 

 イチョウの木を挟んだ誰もいない広場で、ハートリーのリードを離してやった。城山を背にした広場の隅に、六角亭という6方を吹きっ放しにした建物がある。

 1593年朝鮮の役に出兵した、岩国出身で朝鮮総督を務めた長谷川好道元帥が朝鮮から贈られたものだ。六角亭とは、朝鮮各地で身分の高い人々が、景観のよい場所に建てて、憩いの場として利用していたものだという。

 買ったばかりのデジカメを構えて、まだ紅葉の始まっていないモミジをバックにした六角亭を遠くから狙ってみた。画面の中に大きな杉の幹が入って写る。構図をあれこれ考えていたら、ふとあるお寺の庭を思い出した。

 20年前、家族4人で京都の年末と正月を楽しみに行ったとき、大原の三千院に行った。苔のある庭は、雪で何も見えない。そんな庭に、何本かの大きな杉が、ある間隔を保ってすっと立っていたことを思い出した。

 私が狙っている六角亭の画面の中に、あの庭を思い出させるような大きな杉の幹を同じようにでんと入れて撮ってみた。

 紅葉を前にしたこの季節の夕方、紅葉谷公園には誰もいない。静かな秋の夕暮れ、それにしても、銀杏の欲しさよ。今度はイッチョウ拾ってやるぞ~。
  (写真は、誰もいない紅葉谷公園の「六角亭」)