写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

十三夜

2007年10月24日 | 季節・自然・植物
 今宵10月23日は、旧暦の9月13日、十三夜である。

 今日の日経新聞のコラム春秋には「今晩は十三夜。まんまるい満月ではなく、少しいびつな晩秋の名月を眺め、たたえ、盃を傾けるのは、中国にはない日本の習い」「完全形よりいささかの過不足に味わいを求める。美は乱調にあり」と書いてある。

 十三夜は、無事収穫した栗や豆を供えるので別名「栗名月」「豆名月」というそうだ。十三夜は十五夜に次いで美しい月だと言われている。

 夜になり、満月になる前のやや欠けた月をデジカメに収めるためにデッキに出てみた。紅葉し始めた花水木の枝越しの、澄み切った空気の遥か向こうに十三夜が浮かぶ。

 それを見ていたとき突然、小学生の頃、女性歌手が哀愁を帯びた声で歌っていたレコードを思い出した。うろ覚えだった歌詞を、ネットで確認してみると次のような歌であった。

 「十三夜」

 ♪ 河岸の柳の行きずりに  ふと見合わせる顔と顔
   立ち止まり 懐かしいやら嬉しやら 青い月夜の十三夜 ♪

 昭和16年(1941)、太平洋戦争開戦の年にリリースされた下町情緒たっぷりの傑作だという。

 昔から、あえて十三夜を愛で、歌にも歌われていたことを再確認した。月はいい。満月はもちろん、十三夜も十六夜も、眉月(三日月)も、繊月(二日月)までもがちゃんと名前が付けられて皆に愛されている。

 私も年々歳を重ねていて、まん丸円満であった性格も、だんだん歪んできてはいるが、十三夜のようにやや歪ではあっても、皆に愛されるように努力をしたいものである。
 (写真は、紅葉した花水木の向こうの「十三夜」)