写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

初撃ち

2007年01月04日 | 季節・自然・植物
 初撃ちといっても、ゴルフの話ではない。岩国藩鉄砲隊の話である。
  
 元日の午後、吉香公園内の神社に初詣に出かけた。錦川の左岸土手を上流に向かって走り、錦帯橋が見える所に来たとき、「ドンドドーン」と大きな音が河原のほうから聞こえてきた。

 走る窓越に、鎧をまとった一群が整列して鉄砲を構えているのが見えた。初めて見る「岩国藩鉄砲隊」の初撃ちであった。

 岩国藩鉄砲隊とは、昭和62年、砲術流派の伝承と歴史都市・岩国のイメージアップを目指して復興し、三十数人の隊員が在籍している。

 胴の前面に吉川家の家紋である「蛇の目九曜(じゃのめくよう)」を描いた鎧を着用し、江戸時代に製作された古式銃を装備して、古式にのっとった火縄銃の砲術を披露している。

 岩国藩の砲術の流儀は「石田流」といわれ、わが国で最も古い砲術流派の一つであるという。

 河原に立ち昇る白煙を見ながら神社に参った。手を合わせているときにも、ドドドーンと一斉射撃する音が城山にこだまする。

 幼なじみがこの鉄砲隊に入っているので話ではよく聞いてはいたが、見るのも音を聞くのも初めてのことであった。

 装具は重く、歩くだけでも大変だと言っていた。年の初めから、岩国文化の伝承・披露に頑張っているのを、初詣のあと真近で見せてもらうことができた。

 初春の錦帯橋をバックに、退場していく鉄砲隊の列を眺めていると、一瞬古い時代に生きているような錯覚に陥った。

 過去何十年、3が日は家の中に閉じこもっていたが、元日から出歩くのも悪くない。「犬も歩けば棒に当たる」「ハートリーも歩けばテッポウにあたる」。
  (写真は、元日の初撃ち「岩国鉄砲隊」)