写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

新しいもの

2007年01月01日 | 生活・ニュース
 暖かい。何度も言うようであるが昨年の暮れはことのほか暖かかった。雪なんぞ、降る気配はまったくなかった。

 東京から帰省してきた先輩と、地元に住むやはり先輩との小さな忘年会を駅前の小料理屋でやった。

 6時に集合せよとの号令が掛かっていた。天気がよかったため、陽が落ちてもやはり暖かかった。

 出かけるために、それなりの身支度をする。退職をしてからというもの、スーツにネクタイ姿で出かけることは皆無に近い。

 この秋買い求めていたブルーのボタンダウンのシャツの上に、軽いブレザーを引っ掛けてみた。

 これだけでも結構暖かいが、夜ともなると寒くなるだろう。コートを羽織って出かけることにした。

 洋服ダンスに2着のコートを入れている。古いものはもう20年も前、新宿の高島屋で買ったオリジナル品である。

 少しくたびれ感はあるが、まだ形も崩れていなく、現役時代、通勤でずっと着ていたものだ。ベルトのついているトレンチコートである。

 もう1着は退職する数年前に、日本橋の三越で買ったコートだ。よそ行きのときに着ることにしているが、退職してからというもの正装して出かけるようなことはほとんどない。

 従って年から年中、洋服ダンスで眠っているしろものだ。その夜の忘年会の折、どちらを着て出かけようかと少し迷ったが、古い愛着ある方のコートを取り出して出かけた。

 少しくたびれ感があるとはいえ、これを着たときには、なぜか背筋がピンと伸びるような気がする。私にとってはあたかも、サラリーマン時代の裃だからだろうか。

 新しいものがあっても、愛着のある古いものへ手が伸びる。おいそれと、何の屈託もなく新しいものへと乗り換えることがはばかれる。

 そんな古いやつにも、お正月がやってきた。今日くらいは素直になって新しい年を祝ってみたい。

 岩国の元旦はあいにくの薄曇。これはこれで落ち着いた良いお正月だ。3が日は、テレビ座敷で駅伝の応援。テーブルの上には冷酒が置いてある。

 ふと出窓の外を見ると、早くも新年の挨拶にだろうか、1羽のジョウビタキがこちらを向いて首をかしげた。亥年、イイ年でありますよう。 
   (写真は、新年早々の来客「ジョウビタキ」)