まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

まつたけ山復活させ隊 NEWSLETTER 1328  閑話休題「松」ってなんだ! 日本にいつマツタケ登場?

2018年07月07日 |  マツタケの林地栽培 

7日 例会を中止したので、報告の代わりです.

京都・岩倉香川山のアカマツ林.ここに40年ぶりにマツタケのシロが5つ形成された.照葉樹林をアカマツ林に戻し、整備した結果である.時間をかければマツタケの林地栽培は可能である.

2016年 凶作の中、大物マツタケが発生.

 洋の東西を問わず、松は生活のあちこちにあり、松の長寿や緑の不変を褒め称えた詩歌も多く、我々の日常生活にも、文化面にも深く根ざしている.身近な植物の代表格ではなかろうか.
 マツ(松)の由来は、「(神を)待つ」、「(神を)祀る」や「(緑を)保つ」が転じて出来たことばである.もっとも諸説がある.英語ではpineと呼ばれ、恋い焦がれるの意を持ち(辞書を引いてください)、ラテン語のpinusに由来する.これはタール状のもの(瀝青、アスファルト)を指す.松ヤニのことかと思われる. 
 
 東アジア圏では神の下りてくる樹や不老不死の象徴として珍重される.中国では松を「公の木」とか、「松柏を百木の長」などとしていたそうだ.西洋では魔除けとか繁殖のシンボルである.またギリシア神話に出てくる妖精ピテュス(Πιτυς、Pitys)は、牧羊神パーンから逃れるために松に変身したという. 

 マツの寿命は、日本では、寺院の庭に数百年生きたとか言われるが、林分としては200年くらいと言えるらしい.ところが、アメリカ西部山岳のブリストル(トゲ)コーン マツは、樹齢4800年を越えていたという.エジプトのピラミッドより古く、しかも標高3300mの過酷な環境に長年耐える能力を持っていた. 

 朝鮮半島では6000年前には松が優占していたが、日本列島にマツが登場する時期はそれほど古くなく、たかだか1500年前ほどであろう.非常に新しい植物と見られる. 

花粉分析は以下のように教えている.

2万年前;寒冷時代で、北海道は、一部森林ツンドラ.東北部から中部地域は亜寒帯針葉樹林帯である.一方、西日本はゴヨウマツ、コメツガ、ミズナラの世界である.
     
縄文時代:1万6千年前~2800年前は間氷期で、ナラ・栗林の文化(里山)の時代だ.縄文時代中期以前には、陸稲(熱帯ジャポニカ)による稲作が始まっている.
  後期・晩期:瀬戸内沿岸にアカマツ林があった.
     
弥生時代 :BCE300?~300で、前期中頃には、水田稲作技術が北九州から近畿、東海地方へ.西日本=照葉樹林帯.東日本=ブナ、ナラの落葉樹林帯(before the Common Era BCと同意)
           
      魏志倭人伝(280-290;作者は西晋の陳寿)に松類の記載なし
       倭国では真珠や青玉がとれる.山には赤土がでます。木では、クス、トチ、クスノキ、ボケ、クヌギ、スギ、カシ、ヤマグワ、カエデ(石原道博と苅住曻 説)などがある.竹では、シノダケ、ヤダケ、カヅラダケがある.  
      
西暦500年頃:本州、四国、九州でアカマツは増加を見せる(森と文明の物語、安田)
      
7世紀頃:京都・深泥池でマツ属が増える(佐々木尚子他.2011 地球環境Vol.16)と安田の花粉分析結果が修正されている.

 さて、マツタケの登場は、8世紀後半、奈良県高圓山の尾根道に傘を大きく開いたまつたけのかぐわしさを『高松の この峰も背に 笠たてて 満ち盛りたる 秋の香のよさ』と詠っている(万葉集2233 巻第十秋 雑歌、詠み人知らず).まつたけ狩りの歌と思える.古くから栄えた奈良は、森林資源を食い潰し続け、原生林がはげ山となった(676年畿内に森林伐採禁止令 発令).はげ山の多くはアカマツ林となり、秋の香(松茸)が現われたのである.

 昨今は、里山林放棄による大問題が進行しているが、世間では無視されている.里山林資源の放置はマツタケ生息地の質的劣化となった.また、放棄された里山林は、その主要構成樹種が照葉樹林化、北方にあっては夏緑樹林化している.
 
 里山林構成樹種の遷移は、追い出される樹種が創り出した環境に依存する生物の生活を脅かしている.日本では、細菌・ウイルスを除いて94,500種の生物が記載されている(生物多様性センター、2000年)が、環境省のレッドリスト(2015年)によれば、動物の評価対象41,924種の内3.2%が、維管束植物評価対象7000種の内25.4%が、菌類評価対象3,000種の内2.1%が絶滅の恐れにある.マツタケも絶滅が心配される菌類である.それらの半分が里山の生物である.

 世界では、91,523種の動植物や菌類などを評価し、そのうち25,821種を特に絶滅のおそれの高い「絶滅危機種」として掲載された.これは、2016年9月時点の23,928種を大幅に上回る(2017年12月5日、IUCN(国際自然保護連合)).

 また、生態系サービスの劣化も顕著である.「里山林なんてなくてもいいよ」と考える人は多い.里山とのふれあいを無くした現代人は、縄文時代から里山で育まれた自然観や人間観や感性を評価せず、むしろないがしろにし、人の命をも軽んじる現在の風潮を生み出していると思えてならない.
「アカマツ林なんて」という人はもっと多いだろう.アカマツ林も景観の多様性上保全が必要な生態系であり、これに依存するマツタケの命綱である.
 
かくして、だから、私たちは、マツタケの生活する里山林の復活を目指すのである.

まつたけ山復活させ隊
Movement for Regeneration of Matsutake Forests
代表 吉村 文彦(微生物生態学)
090-6227-4305 miyakomatsutake@gmail.com

 

 

 

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