季節の変化

活動の状況

料金メーターを使わないタクシー・ドライバー

2010-01-10 05:10:55 | Weblog
タクシー・ドライバーは、街の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。

3) 「料金メーターが、錆(さ)びついた」
イギリスのロンドンからギリシャのアテネへ飛んだ。
アテネの空港に着いて、市街のホテルまではタクシーを利用する。

アテネでは、まずはホテルにバッグを置いてから、お客さんを訪問する。
初めての街だから荷物をホテルに置いて、身軽になって、
ここを拠点にして動き回りたい。

それに、チェック・インを済ませておけば、
今夜の宿は確保できたわけだから、
客先では落ち着いて打合わせができる。
あとはホテルに帰るだけだ。

初めての街に行くときには、ガイドブックをロンドンで買って、
前もって見ることにしている。
「なぜ、ガイドブックをロンドンで買うのか? ギリシャで買わないで」
それは、現地の言葉ギリシャ語で書いてあっても、
私にはガイドブックにならないから。

ロンドンにいるときに、空港から市街までの交通手段と、
だいたいの料金を調べておくのである。

有能なイギリス人の秘書がいるにしても、
彼女は、イギリス以外は詳しくはないから、
ガイドブックで調べることになる。
秘書にお願いするのは、ホテルの予約である。

ヨーロッパの空港では市街まで、たいがいシャトル・バスであったり、
タクシーに乗るのだが、今回のアテネの場合はタクシーにした。
シャトル・バスで市街へ入っても、その後、初めてのホテルまで、
タクシーに乗り換えて行くことを考えると、
空港から直接タクシーでホテルまで直行するのが便利である。

ホテルがシャトル・バスのターミナルに、あまりにも近ければ、
タクシーは行ってくれないだろうから、
荷物を持ってオロオロとホテルを探すハメになる。

それに、ガイドブックによるタクシー料金「Xドグマ」は、
ロンドンのタクシーに比べれば、バスのように安いではないか。

アテネの空港に降り立つと、
――アテネの太陽は、何と、ま・ぶ・し・い・ん・だ!
――ロンドンには、この太陽と青空は、ないな。
――太陽のエネルギーは、ほとんどギリシャに吸い取られてしまっている。
――ロンドンには、カスしか届かない。

アクロポリス。

プロピュアライン(前門)とピナコテーケー絵画館(左)

あとで、訪問したお客さんは、
「ロンドンを訪問したが、寒くて暗くて、あの気候には気分が滅入った」
「仕事が終わったら、すぐにギリシャに舞い戻ったよ」
と、ロンドンに滞在する私の目の前で、控え目に言ったから、
「よくも、あんなところに住んでいるもんだ」
「ギリシャの太陽を知ると、住めたもんではないな」
と、相当に同情していた。

アテネに到着して、空港のタクシー乗場にならんで、タクシーに乗って、
「○○ホテルまで」
と、市街のホテルを告げた。

料金メーターは、後部座席にいる乗客にも見えるところに取りつけてある。
40歳代、眉毛が濃くて、背中が丸くて屈強そうなドライバーは、
走り始めても、料金メーターのボタンを押さない。

メーターを表示させないでいる。
そして、
「メーターが、錆(さ)びついて動かない
と、英語でポソリと言う。

ひとり言とも、私にわからせようとも、
どちらともとれる声の大きさである。

メーターをもう一度見ると、それは電子式のメーターである。
旧式の機械式とは違うから、回転するメカニズム(機械部分)はない。
錆びつくところはないはずだが、と思っていると、
日本から来たのですか?」
と英語で聞いてきた。
「そうです」
ロンドンに住んでいるが、ここは簡単に答えておこう。

「アテネは、初めてですか?」
「そう、初めて」

「いつ帰るんですか?」
「あしたです」

しばらくすると、
「メーターが錆びついていて、動かなくて困っている」
と、また言う。

これで、私にわからせようとしていることが、はっきりした。
さっきから会話で、私が英語を理解していることもわかっている。

しかしメーターは日本製のようだし、
表示は電子式の発光ダイオードを使っているから、
錆びつくようなメカニズムはないはずだが。

――おかしなことを言うな?
それで、
「それは、電子式のメーターですか?」
と、聞いた。

「……?」
ドライバーから返事がない。
「発光ダイオードを使っているようだが」
「…………!」
それでも、返事がない。

料金メーターを使わなければ、料金はどうやって計算するのだろう?
――ボッタクルのだろうか?
イヤな予感がする。
コメント
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