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『一の糸』(読書メモ)

有吉佐和子『一の糸』河出文庫

やっぱり有吉佐和子はすごい、と思わせる作品である。

酒問屋のお嬢さん茜は17歳。文楽における三味線の名手である露沢清太郎(後の徳兵衛)に恋するものの、家庭を持っていたため断念。その後、37歳まで独身を通した茜が、ひょんなことから徳兵衛の後添えとなり、彼の子供たちと芸を支えるという物語。

ちなみに「一の糸」とは、三本ある三味線の中で低音を奏でる太い糸のこと。

お嬢様育ちのわがままで明るい茜が、無口で芸一筋の徳兵衛を支えるのだけれども、正反対の性格だからこそ良かったのかもしれないと思った。

もう一つ大事な要素は、茜のお母さん世喜のサポート

茜の父が死に、酒問屋がつぶれてしまった後、宿屋を経営して生活を支え、子育てで悩む茜にアドバイスする世喜。

そして、圧巻はラストシーン。

真の芸へと脱皮する徳兵衛の演奏場面は深い。

競争心を超えて、芸(仕事)そのものに没頭することの大切さが伝わってきた。



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