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MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

IMIA受賞あいさつ

2014-11-10 00:00:00 | 通訳者のつぶやき

IMIAメンバーの皆様、このたびはこのような栄誉をいただきありがとうございます。
22年間スペイン語通訳相談員として働いてきただけで、
褒めていただくようなことはなにもないのですが、
今回はこれから日本における医療通訳の発展にもっと頑張れという叱咤激励の受賞だと理解してありがたくいただきたいと思います。
私が医療通訳を始めたころは、医療通訳者はあくまでも外国人患者の身内という扱いでした。
結核患者に同行した時も、精神疾患患者の通訳をした時も、医療者側でなく、
患者の友人もしくは家族としての扱いを受けていました。
患者が通訳をつけなければ診ない、できる人が他にいないならば自分が受けるしかないという追い詰められた状況で難しい通訳も受けてきました。
私の医療通訳の原動力は「恐れ」と「怒り」です。
 スペイン語に自信があるわけではありません。だから、どんな通訳現場もいつも緊張するし且つ「怖い」と感じています。
と、同時に外国人患者からひとりで病院にいっても言葉が通じないから行けないと言われると、公的保険に加入し、
税金も払っている日本社会の一員である人が、
どうして最低限の医療を受ける権利を阻害されなければいけないのかという「怒り」になるのです。
 また、ある医学会のシンポジウムで「先生方は冷蔵庫を買ってお金を払わなければ泥棒だと思うけれど、
通訳を使ってお金を払わなくてどうして平気なのですか」といいました。
別にお金がほしいと思っていたわけではありません。人間は無料のものに対する扱いが雑です。
なんでも要求してくるし、無理も言ってきます。

 それがおかしいと思っていました。私は患者のためと思って通訳を引き受けている、
病院に使われる筋合いはないと思い、医療者に対立感情を持っていた時期もあります。
また、疲れてバーンアウトしていく医療通訳者、
生活のために他の仕事をせざるを得なくて辞めていく通訳者を見る都度にこのままではだめだと思いました、
 ただ、2000年代になって医療通訳研究会(MEDINT)を設立し、医療者の方々の意見を聞いたり、
通訳者研修をお手伝いいただいたりする中で、
 医療者も決してそれでいいとは思っていないのだということが理解できました。
 医療は今後ますます複雑化していきます。様々な専門職がチームとなって患者にあたる時代です。
 医療通訳者も質の確保をして、チーム医療の一員になれるように研鑽していかなければいけないと強く思います。
と、同時に医療通訳者の立場から、これからもはっきりとこうしてほしいという要望を伝えていかなければいけないと感じています。
 IMIAの皆様も私たちと同じような状況からこうした組織を作り上げたと竹迫支部長から聞いています。
 日本で頑張るたくさんの医療通訳者のひとりとしての受賞だと受け止め、IMIAの皆さんから勇気をいただいたことに感謝します。

 ありがとうございました。

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青臭い言葉は今日で封印です。
これからはもっと前向きに医療通訳に取り組んでいきたいと思います。

お金を産む通訳 お金を産まない通訳

2014-11-03 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
11月最初の連休はどう過ごされましたか?

私はノエビアスタジアムで開催された
ラグビーの日本代表VSマオリオールブラックス戦を見に行きました。
すごく楽しみにしていたのが、NZ代表が試合に先立ち行う「ハカ」!
さすがに迫力がありました。

試合はやはりオールブラックスが優勢だったけれど、
思った以上に日本代表も頑張ってました。
2019年には日本にラグビーのワールドカップがやってきます。
日本のどこでやるかはまだ決まっていないようなので、
神戸には神戸製鋼コベルコスティーラーズもあるので、
是非、神戸に来てくれることを願っています。

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「プロの通訳」と「ボランティアの通訳」
その境目は報酬にあると思っている人が多い気がします。

たくさんお金を産む、
例えば、観光客を呼び込んでその人たちがお金を使う
様々な商品を売って利益を産む
映画やコンサートの興行成績に寄与する
文化交流で新しい消費が発生する・・・

そうした通訳は、確かに通訳をすることで
はっきりと消費や生産に貢献しています。
お金を産む通訳といえます。

そこには通訳報酬がはっきりとコストとして換算されます。
利益貢献の一部に通訳者の役割があるからです。

かたや、地域に住んでいる外国籍住民のコミュニティ通訳は
お金を産む通訳とは言えません。

長い目で考えると、コスト削減であり、トラブル解消であり、
人権を守る活動で、人々が健やかに安全に暮らすお手伝いなのですが、
そこで明確な利益が生まれるとはなかなか考えにくい。
だからコスト意識がとても低いのです。

10年前、渡航医学会のシンポジウムで
「先生方は、冷蔵庫を買ってお金を払わないのは泥棒だと思うのに、
通訳を使ってお金を払わないのは平気なのでしょうか?」と
聞いたことがあります。

通訳の価値は「お金を産む産まないではなく」
「必要かどうか」で判断されるようにならなければと思いますが、
その基準はとても難しい。

医療通訳を「お金を産む」という尺度ではなく、
社会資源として必ず必要であるというロジックで考えていかなければいけないと思います。


11月9日はIMIAアジアシンポジウムで会いましょう

2014-10-27 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
11月9日(日)に東京外国語大学で、
IMIA(国際医療通訳士協会)のアジアシンポジウムが開催されます。

IMIA(International Medical Interpreters Association)はもともとアメリカで生まれた医療通訳者の組織です。

もともと現場で活動していた医療通訳者が立ち上がり、
医療通訳者の立場から様々な提言を行ったり、行動をしてきました。

その団体のはじめてのアジア地域のシンポジウムが日本で開催されます。

日本支部代表の竹迫さんが中心となって、
この会議を誘致してくださいました。

私たち日本の医療通訳者は、自分たちの団体を持っていません。
何かを伝えたいと思っても、大きな力になっていかない辛さの中でもがいています。
だから、こうした医療通訳者の国際団体の活動の一端に触れるだけでも
勇気がもらえる気がします。

私事ですが、このシンポジウムの中で
アドボカシー賞をいただくことになりました。
これまでの功績は何もないので、これから頑張れ、なんかやれというエールだと受け止めて
より気を引き締めていきたいと思います。

**********************************閑話休題

先週末10月25日には神戸市外国語大学と神戸市看護大学の医療通訳科研が主催したシンポジウムが開催されました。

日本国内で医療通訳講座を持っている

神戸市看護大・外大
愛知県立大学
東京外国語大学
大阪大学
群馬大学

からご担当の先生方が集まられて、
各大学のカリキュラムや運営、問題点などを発表されました。
こうして見ると一概に医療通訳者育成といっても、
医療通訳自体に様々な捉え方があり、対象とする患者像も違っていると感じます。
私は神戸市看護大・外大、愛知県立大学、大阪大学の3つの講座で授業を担当していますが、
確かに目標とする医療通訳者像が違っていることを実感します。
神戸市看護大・外大は医療者の医療通訳コーディネーター育成も同時に考えていますし、
愛知県立大学はスペイン語・ポルトガル語といった言語から主に中南米の患者を対象とした通訳者教育、
大阪大学は今後も増えるメディカルツーリズムの患者の受け入れまで視野に入れて育成を考えています。
こうして、医療通訳者を育成する教育機関が集まって、情報交換をすることは
とても有意義であり、是非記録として残して欲しいですし、今後も続けて欲しいと思います。

医療通訳はこれから大きな枠組みの中での議論になっていきます。
楽しみでもあり、あくまでも何のために医療通訳があるのかを忘れないように気を引き締めていきたいです。

オノマトペ

2014-10-13 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
私の育った地域では
降り始めの細かい雨のことを
「雨がピリピリしてきた」といいます。

ずっとこれは標準語だと思ってきましたが、
実は兵庫県でもかなり限られた地域でしか通じないということを
つい先日知りました。
神戸や大阪の人にすら通じないということに愕然として、
今まで私が使ってきた「ピリピリ」した雨はじゃあどう言えばいいのか悩んでいる今日このごろです。
最近の雨は「ピリピリ」などどいう可愛いものではなくて
降り始めると「ドシャー」「ババババ」っていう感じの豪雨が多いですが。

ところで、こうしたオノマトペは、
同じ文化(家、地域)に暮らす人にとっては
より感覚的に伝えることができる便利な言葉です。

もともとこの「オノマトペ」はフランス語の onomatopéeを語源とした
擬音語・擬声語・擬態語を包括的にいう言葉です。

ずきずき、じくじく、じんじん、かさかさ・・・など
医療場面でもよく使われます。

先日のMEDINT医療スペイン語分科会のテーマが
この「オノマトペ」でした。

スペイン語の分科会は現場を持っている参加者が多いのですが、
皆さんもこの医療者が使うオノマトペ表現にはとても困っています。

スペイン語に訳すときには形容詞や具体的に
「焼けるような痛み」「突き刺すような痛み」「乾いた感じ」などと
形容詞や具体的な表現で表すように心がけています。

ただし、難しいのは医療者がどういう意味で用いたのかを理解できていないと
正しい言葉での訳出はできません。
先ほどのピリピリのようにその地域だけで使う表現や
その人だけが感じる感覚的な表現は必ずしも相手に伝わるとは限りません。
だから、スペイン語の表現はわかるけど、
日本語のオノマトペを説明することのほうが難しいなと感じました。

間違いを防ぐためにはオノマトペではなく
少し具体的な表現で聞いていただければ伝えやすいですね。

「ピリピリした雨です」ではなく「細かい雨が降り始めました」ですね。

医療の相談

2014-09-29 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
病院関係者に外国人医療で何が心配というアンケートを見ると
必ず「医療過誤」が上位に出てきます。

実際に医療通訳が原因で医療過誤がおきたという裁判は
まだ聞いたことがありませんが、
外国人から、医療過誤とまでは言わなくても
相談員として日本で受けた医療に関して疑問や不信感について
相談されることがあります。

その場合は、注意深く話を聞くようにします。
医療通訳も同じような立場ですが、
外国語相談員も外国人にとっては
数少ない信頼できる日本人(もしくは自分よりも日本社会に詳しい人)なので、
変に予見で話をして、患者にとって病院や医師に不信感をもつのは
あまりよいことではないからです。

話を聞いていて思うことは、
多くがきちんと説明を受けていないということに対する不満のような気がします。
それも話の内容ではなく、医療者の態度を見て感じている人が少なくありません。
きちんと患者や家族の方を見て話をしてくれない。
説明することをめんどくさがっている態度がみてとれる。
外国人を嫌いだと感じているような気がするから・・など。

南米の人から良い医療者して
「フレンドリーな医療者」をあげられることがあります。
私たちは、愛想がいいとかニコニコしている医療者だけがよいとは思いませんが、
外国の人たちはまず自分たちを受け入れてくれているか、
差別しないかということにとても敏感になっていることがあります。
クチコミで医療機関を選ぶのは、外国人も同じこと。
でも、そこに心の壁のようなものも要素として入るんだなあと感じます。








夏休み2014

2014-09-15 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今年は個人的にいろんなことがあって、
秋から頑張るためにゆっくり夏休みを取りました。

私はずーっと「ショートケーキの苺は最後に食べる」派なのですが、
50歳を超えて、美味しいものは先に食べなくては・・
思想信条を変えることになりました。

なので今回の夏休みは
前から行きたかったところから順番に行くぞということで、
秋田県の玉川温泉、青森県の恐山、
岩手県の三陸鉄道北リアス線、、世界遺産中尊寺の4箇所に行ってきました。

玉川温泉は、日本でも有数の湯治のメッカです。
はいるとヒリヒリする強酸性泉。
源泉に入ったら必ず洗い流してでなくては、皮膚炎を起こすそうです。
効能が下がるから洗い流さずに。。。というやわな温泉ではありません。
硫黄臭がすごくて微量の硫化水素ガスを吸うことで気管支に良いとか、
岩盤浴にはガン治療中や予後の患者さんも大勢来ています。
ここには3泊したのですが、
皆さん真剣に湯治をされているので、
私も、早朝から風呂~朝食~朝寝~風呂~散歩~岩盤浴~昼寝~風呂~夕食~休息~風呂という
規則正しい小原庄助さん生活を行っておりました。

それからJR東日本3連休切符(乗り放題、特急料金を払えば新幹線もOK)をつかって
秋田から下北半島に北上し、恐山へ。
ここは昔から行きたかったところなのですが、
玉川温泉の硫黄の吹き出しを3日間見ていたので、
あまり怖くないし、温泉も普通よりはすごいけど、玉川ほど強くないし、
土曜日で観光客が多くて賑やかでなんとなく思っていた印象とは違いました。
宇曽利湖は神秘的で素敵でしたが、霊が降りてくる時期ではなかったのかもしれません。

最終バスで八戸に帰って、
次の日は始発で館鼻(たてはな)岸壁朝市へ。
地元の人も多いのんびりした楽しい朝市でした。
「忘れ物のお知らせをします。焼き鳥屋さんで焼き鳥を買ってお金を払って焼き鳥を忘れた方~」
「忘れ物のお知らせをします。蕎麦屋さんでそばをたべてササゲ豆を忘れられた方~」
呼び出しものどかです。
それから八戸線を南下して
あまちゃんの舞台である三陸鉄道北リアス線の久慈駅から宮古駅まで移動しました。
朝ドラが終わってすでに一年になるのですが、未だにすごい観光客でした。
海はきれいだったけど、震災とつなみの跡がそこここに見られて、
やはり大変な震災だったのだと改めて感じました。
その日は盛岡に泊まってわんこそばを食べて
次の日は仙台に移動途中に中尊寺を見学して、
仙台では山形県国際交流協会のOさんと
これからの仕事のことを思いっきり話して楽しい夕食を取りました。

関西からは遠いけれど、やっぱり東北はいいなと思いました。
震災の影響は未だ消えていないけれど、
やっぱりまた東北に行きたいと思える旅でした。
来週からまた仕事三昧です!

公正であるということ

2014-09-08 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
最近医療通訳が「在日外国人」「訪日外国人」「メディカルツーリズム(医療目的の来日)」に
わけて議論される場面があり、医療通訳者としては違和感を感じます。

医療通訳者は本来、医療職の方々と同じ、
患者に対してその立場によって区別をすべきではありません。

もちろん、財力や情報、医療知識などはそれぞれ違い
患者によって配慮しなければいけないことや通訳方法は変わってくるかもしれません。

でも患者であることには違いがないのであれば
私たちはコミュニケーションの橋渡しにベストを尽くすだけのことです。

少し話は変わりますが、
私は「平等」という概念をあまり信用していません。
人は生まれてくる環境を選ぶことができない。
5歳まで生き残ることが困難な状況に生まれる人もいれば、
貧しさから脱出するために海外へ移住することを選ぶ人もいる。
生まれた環境で何不自由なく生きていける人もいます。
人間の努力だけでは乗り越えられない困難はたくさんあると思っています。
だから、通訳者ができることは「平等だから頑張れ」ではなく、
困難を少しでも軽くするように支援することだと思うのです。
社会があるのはそうした不平等を少しでも補いあえるようにするためだと。

通訳者ができることは、簡単にいえば
言葉による困難を取り除き、情報や権利にきちんとアクセスできるようにすること、
言いたいことや言わなければいけないことをきちんと伝えるようにすること、
たったそれだけのことです。
だから私たちは誰に対しても公正(fair)にこの技術を使わなければいけない。
ひとによって態度やレベルを変えるということはあってはならないのです。

ただ、これからメディカルツーリズムが本来の医療を超えて、
商業の中に入れこまれていくのであれば
私たちは注意深くいなければなりません。








先週は静岡県の研修に行ってきました

2014-08-25 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
静岡県の多文化ソーシャルワーカー育成研修に参加しました。

静岡県では、市町や地域に通訳や相談員を設置しているケースが多いのですが、
実際に社会福祉協議会の担当者や生活保護担当、
DV被害者支援者やスクールカウンセラーといった福祉の実践者の方々と
連携してケースにあたることが少なくありません。

こうした福祉専門職の方々にも外国籍住民ケースに熟知してもらい、
ケース検討をスムーズにするためにたくさんの地域に
多文化ソーシャルワーカーを育成したいという県の考え方です。

今回は自治体国際化協会からの派遣でしたが、
主催は静岡県と静岡県社会福祉協議会の共催でした。
暑い8月の研修にも関わらず50名を超える方々が参加してくれて、地域のニーズと熱意を感じました。
外国人生活相談員は、本当に様々な相談を受けています。
なぜなら「外国人の母子」「外国人の高齢者」「外国人の障害者」「外国人の生活保護受給者」などと
要支援者に「外国人」がついたとたんに、言葉の問題だけでなく文化の問題や
制度説明の難しさもあって外国人生活相談の窓口にまわってくるからです。
でも、外国人生活相談窓口には予算も権限も足もない。
なので、専門機関との連携なしには問題解決に進めないのです。
でも、どうしても「外国人」がつくだけで専門職の方々は及び腰になるのでしょうか。

本当に「言葉の壁」や「制度の壁」「文化の壁」はあるのか?
それはこちら側が勝手に作っているだけじゃないのか?
相談者を日本人に置き換えたらどうか?
本当に外国籍住民特有の問題なのか?
考えていけば、外国人ならではの問題は実はそんなに多くない。
そして連携が必須であることを認識すれば
専門窓口と外国人窓口がうまく役割分担することができるのです。

具体的な話をしすぎてかなり消化不良になってしまいましたが、
今後、こうした研修が継続することを望みます。



医療通訳士のありかた3

2014-08-11 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
真夏の暑さを覚悟していたらまさかの雨・雨・雨ですね!

窓口にも風邪をひいた人が多いです。
建物内は冷房が効いているので体温調節が大変ですね。

先週の続きです。

医療通訳士協議会のなかで、
「医療通訳者のあり方を考える委員会を作ろう」という案が出ています。
医療通訳者自身が自分たちのことを考える時期にきたのだと思います。
実はもっと前から通訳者は通訳者同士でいろいろと話をしてきているのですが、
それでも、まとまることはあまりなかったと思います。

医療通訳者にかかわらず
通訳者はどちらかというとチームプレイより
一匹狼的で職人気質な仕事を得意とする人が多いような気がします。
通訳として会社などに所属するよりは、フリーランスとして仕事を受けている人や
スポットで仕事をする人が多いためだと思います。

「医療通訳の制度化に向けて声をあげましょう」と言っても、
様子見の人も少なくないと思うし、
まだ職業となっていない業界で活動をすることはリスクでもあるし、
仕事に結びつかないのであれば、そんなに時間を使うわけにもいきません。
医療通訳で食べていける人たちはまだまだ日本には少ないです。

シンポジウムや学会に出席して、
「どうして医療通訳者はこうした場所にこれないの?」と聞かれることがありますが、
こうした場所に来るには時間もお金も必要です。
自分たちの仕事に興味がないわけではありません。
それこそが、医療通訳の問題点なのですが、それに気づいてくれる人はあまりいません。

もちろん現場での必要性をわかっている人たちはたくさんいます。
声をあげたい、あげなくてはいけないと思っている人たちもたくさんいる。
でも、私も含めて行動するだけの力がないのも確かなのです。
たとえばひとつの遠方の学会に出席するために
月生活費の半分が消えるのであれば誰が簡単に出席できるでしょうか。

ここで医療通訳者自身が声をあげる方法を考えなければ、
結局は今と同じ与えられた制度の下で働く人になってしまいます。
ただ話し合いよりも今目の前の通訳に時間を割きたいと思う。
それが私たちにとってのジレンマなのです。


医療通訳士のあり方2

2014-07-28 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
暑い日が続きますが、皆さん如何お過ごしですか?

医療通訳士協議会の医療通訳者の分科会続きです。

グループ分けのワークのあと、
それぞれ「医療」「言語」「支援・コミュニティ」のグループに分かれてワークをしました。
「医療」1グループ、「支援・コミュニティ」1グループ、「言語」3グループで
実際稼働している医療通訳者の割合とは少し違うとは感じましたが、
「言語」の方が、これだけたくさん参加してくださっていることに
医療通訳への関心の高さを感じました。

2つめのワークのテーマは「私たちのアピールポイントとウィークポイント」

参加者の医療通訳者としての立ち位置を分類し、
それぞれがどんな意識で医療通訳を行い、
それぞれの強み(アピールポイント)、弱み(研修等が必要な部分)を明確にしていき、
今後医療通訳士協議会(JAMI)として取り上げていかなければいけない事項について話し合います。

言語系ではあまり馴染みのないKJ法で、
強みと弱みを書いて分類し、それを自分たちの強みにしていく方法を考えました。

私は「支援・コミュニティ」のグループにいたのですが、
私たちのウィークポイントである患者との距離の近さは
患者から見ると「頼もしい存在」であることに気づき、
これは目からウロコでした。
「難しい医療用語が苦手」という弱点も、
患者と同じ言葉のレベルで説明ができるという
これまた患者から見れば「わかりやすい通訳をしてくれる存在」であることが
理解できて、もしかしてアピールポイント?と思いました。

「苦手意識」や「劣等感」は、
違った角度からの仲間の指摘に、「強み」になるのだなと痛感しました。
やはり医療通訳者同士で意見を交換することはすごいです。

医療通訳士協議会では医療通訳者を中心とした委員会を企画しています。
医療通訳者自身が、医療通訳者について語り考えることができる場所ができそうです。

いつまでも「世の中変わらない」じゃなくて
医療通訳者が「私が変える」といえるような仕組みを作らなければと思います。

 おにぎりどうぞ

日本渡航医学会にて

2014-07-21 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
週末、日本渡航医学会の学術集会が名古屋で開催されました。


私、MEDINTも5年ほど前から当時理事長だった西山利正先生(関西医科大学)のお誘いで、
評議員をさせていただいています。
ほとんどが医師か看護師か大学教員である学会の中で、
医療通訳者はもちろんのこと社会福祉士や外国語相談員もほとんどいません。
ですので面白がってくださる先生方にも多く出会うことができるため
私は勝手に学術総会のことを「異種格闘技会場」と呼んでいます(笑)。

今回第18回の新しい取り組みはなんといっても
中村安秀先生(大阪大学)を中心に
学会内でインバウンド委員会が立ち上げられ、その会合が開かれたことです。
この学会は従来、ワクチンや渡航外来のような日本人が海外へ行くための医療、
アウトバウンドの医療を中心に議論する場です。
ただ、数年前から日本にやってくる訪日外国人の医療をどうするかや
在日外国人の医療、治療を求めて来日するメディカルツーリズムの医療などもテーマに入っており、
インバウンドの医療について考えるシンポジウムも増え始めています。
そこで、インバウンドに特化した問題を考える委員会を学会内に立ち上げて、
関係者が集まり以下の4つのテーマを議論をしていきます。

1 感染症対策(訪日する外国人および日本人が持ち込む感染症)
2 異文化理解(在住外国人や訪日外国人に対する保健医療ケア)
3 多言語支援(「日本語が通じない人」 LJP:Limited Japanese Proficiency)
4 医療通訳士(身分保障や認証のあり方の検討)

ちょうど東京オリンピックが開催され、
多くの選手だけでなく関係者、スタッフや観戦者が来日します。
これを機会に世論を巻き込んで日本を訪れる外国人の医療について
きちんとした取り組みをしなければという問題提起を委員会でしていく必要もあります。
「おもてなし」は病気になったり、本当に困ったときにこそ発揮されるものです。
来日目的や期間、在留状況に関わらず、様々なコミュニケーション援助の必要な人たちのために
医療者側から考えるという枠組みは絶対必要です。

医療通訳士についても学会の中でこれから取り上げられる機会も多いと思います。
医療通訳や外国人医療に取り組んでいる方々で学会発表の場を探している方には
是非とも参加していただければと思います。
来年は東京、再来年は岡山県での学術総会開催が決定しています。
医療通訳分野からもたくさんの方のご参加をお待ちしています。


おまけ:名古屋名物小倉トーストのモーニングです

医療通訳士のあり方1

2014-07-14 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
医療通訳士協議会(JAMI)の分科会報告が遅くなりました。

今回の会場は吹田にある大阪大学のキャンパスでした。
街の中心でないにもかかわらず
140名を超える参加者で100名キャパの会場はほぼ満席。
一部立ち見も出た盛況ぶりでした。

もちろん東京オリンピックなどに影響されたインバウンド、
メディカルツーリズムの関係者の方々も少なくはなかったと思いますが、
年々、医療通訳に関する関心の高まりを感じます。

シンポジウムのあとの分科会は二つに分かれました。
1は医療通訳者のネットワーク
2は制度化に向けたパネルディスカッションです。

私は分科会のセッション1を担当したのですが、
20名~30名程度を予想して準備していました。

たしか京都で開催された第2回医療通訳者全国大会でも
医療通訳者を対象としたセッションをやったのですが、その時は20名程度だったと記憶していたからです。

しかし、会場にこられた方は50名超!
遅れてこられた方は入ることができず諦められた方もいらっしゃいました。
大変申し訳なかったのですが、事務局でも事前に数を読むことができず、
小さめの部屋を用意してしまっていたので、
参加者の皆さんには窮屈な思いをさせてしまいました。
申し訳ありません。
でも災い転じて・・・ではないですが、
お隣との距離も近くて面白い議論が出来たのではないかと思っています。

まず、参加者の属性についてのワークをしました。




自分の医療通訳者としての立ち位置
「医療」、「言語」、「支援・コミュニティ」の中から
医療はピンク、言語は青、支援・コミュニティは黄色の付箋を選びます。
どれでもない人やいくつか重なっている人もいると思いますが、
一応、自分の中で一番強いものを選択します。

それぞれの紙には自分をアピールする
「○○の医療通訳者」と書いてもらいます。

次に模造紙に
横軸に「医療」「言語」
縦軸に「外国語」「日本語」が書かれてあります。
その軸のどのへんにいる通訳者なのか、ご自分の立ち位置を決めてそこに付箋をはってもらいます。

自分の医療通訳者としての立ち位置を改めて考える機会になったかと思います。

今日の参加者は圧倒的に「言語」の方が多く、
日本語寄りの方が多かったと思いますが、
「言語」に関してはいろんな方がいらっしゃいました。
その分析については近いうちにJAMIの報告の中で行う予定です。

医療通訳者なんだから「言語」ばかりではないの?
と、思われるかもしれません。
でも、現実問題として医療通訳者の中には
医療者で言語のできる人、支援者で言語を学んだ人、
コミュニティの中で同国人に支援している人など様々な人がいます。
どの人も医療通訳者で、
患者にとってみれば、どの通訳者も大切な通訳者です、
できれば状況に応じて選べれば助かります。
だから、医療通訳者像はひとつではないことを
医療通訳者が理解しなければいけないと考えています。
今回、このセッションを担当した3人は
Sさんが「医療」、Tさんが「言語」そして私が「支援」をベースにした通訳者です。
まさに、この分類の3者が集まってセッションの幕があきました。

続く・・・。

医療通訳士協議会のセッション1

2014-06-30 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
今週は朝から晩までスペイン語での相談が立て続けにあり、
自宅に帰るともうクタクタで寝てしまっています。
医療通訳も困難なものが多くて、
遠い国に来てどうしてこんなに辛い思いをしなければいけないのかなあと
神様を恨んでしまうことが少なくありません。

こんな通訳相談員でも
いることで何とかなるならば、
体力と気力の続く限り頑張らねばと思います。

ところで・・・

今週末、大阪大学吹田キャンパスで
第7回医療通訳士協議会(JAMI)総会とシンポジウムが開催されます。
詳細については こちら

2009年2月に設立されたJAMIですが、
その間に、全国的なネットワークとして動き出し、
医療通訳士倫理規定も策定しています。

今回は初めて医療通訳者のみを対象としてセッションを企画しています。
そこで、セッション1では、
医療通訳者の属性の棚卸をしたいと考えています。

日本では「医療」、「言語」、「支援・コミュニティ」の3つのうちの
どれか、もしくは複合的な軸足をもって存在している医療通訳者ですが、
どれが優れていて、こうあらねばならないというものでなく、
それぞれのアピールポイントとウイークポイントがあって、
様々な通訳者を患者・家族が選ばるような形にしなくてはならないのですが、
このままではなんとなく医療通訳のイメージが固定化する気がしてなりません。

医療通訳者は「みんな違ってみんないい」のです。
研修はウイークポイントや足りない部分を補うものであること、
そして、今それぞれの特性というものを認めていきながら考えていく必要があります。

今回は、それぞれの通訳者の特性を大切にするために
あえて自分たちの立ち位置を確認しましょうというワークにします。

これは、今後医療通訳者が発言していく場としてのJAMIを
考えていくスタートラインにするつもりでもあります。

お時間のある医療通訳者の皆さん、
是非ご参加ください。

ロールプレイ

2014-06-23 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
先週は、兵庫医療大学の薬学部で話をしたり、
RINK(すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク)の
サポーター研修に参加したり、
ワールドカップを見たり、疲れがたまってぎっくり腰になったり、
結構忙しい一週間でした。

その中で、難民事業本部関西支部が主催した「ワークショップ難民」
参加してきました。

不定期ですが、難民のことを知るセミナーとして
今までもワークショップが開催されています。

難民の歴史や今日本ではどうなっているのかなど、
あまり報道されない分野なので、積極的に情報を取りに行かなければ
現状がわからないままになってしまいます。

主催団体の難民事業本部は難民の定住促進をになっている団体で、
ベテランのソーシャルワーカーさんもいて、
難民の方々にはとても頼りになる存在です。
それだけに詳しい現状に触れることができます。
今回は時間の関係で第3回しか参加できなかったのですが、
その中で行われたロールプレイがとても興味深く、
いろんなことを考えさせられました。

あまり詳しいネタばらしはできないのですが、
グループで役割を決めて(自分で選べない)その役を演じるというものです。
簡単に言えば、地域に住む外国人とその外国人の支援をする人ともともと地域に住んでいる人です。
私は「もともと地域に住む人」の役が当たりました。
この人は外国人が大嫌いな人です。
外国人が日本語ができないとか、食べ物が臭うとか攻撃する役なのですが、
驚いたことに、「郷にいれば郷に従え」と言えばなんか正義っぽくて気持ちがよいのです。

逆に外国人役の人は悲しい顔をして自分たちの文化の素晴らしさを一生懸命説明するし、
支援者役の人は両方の意見をまとめようと必死です。

ああ、こういう感情なんだなと理解できました。

日頃、通訳としてこうした場面の通訳をしています。
現実の私は支援者の役に近いのですが、
苦情を言っている人たちはこういう気持ちなのだなとも理解できました。

日本社会の中にはいろんな人が暮らしています。
我慢し合うのではその関係は長続きしません。
お互いの思うところを伝えていかなければ
相手がどう思っているのか理解できないのです。

ファシリテーターの方は
「話し合いの席を持った時点で、問題は解決にむけて動き出している」
とおっしゃいました。
本当にそうだなと思います。

佐賀県に行ってきました

2014-06-16 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
10日(火)午後から仕事を休んで
佐賀県国際交流協会に行ってきました。

6回シリーズの「医療通訳サポーターの初級者コース」で、
私は初回を受け持つことになったからです。

具体的な内容は、

・医療通訳とは
・医療通訳士倫理規程
・医療通訳の社会的立ち位置

ほかの先生方が具体的な病院の使い方や
ロールプレイをされる予定なので、
最初の導入部分の担当です。

20名近い参加者の皆さんは
仕事を終えたり、家事をすませてからの参加なので
とても疲れている時間だったと思うのですが、
熱心に取り組んでくれました。

九州では宮崎、福岡と3箇所目で、佐賀は2回目ですが、
協会の方からの最初のご挨拶にあったように、
まだ、あまり地方都市で医療通訳の養成をしていない頃から、
佐賀県はMICかながわさんなどと連携して、医療通訳者の育成に着手されてました。
そういう意味では、実数は少なくてもこの分野に関しては先進的な県といえます。

驚いたのは、どの講座も課題・目標がきちんと決められていて、
自主レポートの課題もあり、個人の振り返り目標も決められている点です。
やりっぱなしの講座が少なくない中で
なんとか継続できる人材を確保したいという事務局の方の強い思いが伝わってきました。

実際には、倫理に関してのお話が中心になりました。
医療通訳は擁護・介入などの場面もあり、現実的にはケースバイケースですが、
初級者の場合は、原則を守り、それをはみ出す場合は派遣先に相談というのが
基本的なスタンスだと思います。

枚方市の時もそうでしたが、
倫理の研修は、参加者だけでなく、
派遣先の担当者がどう考えるのかがとても重要になるため、
担当者の方にも入っていただき、一緒に考えてもらいます。

研修中は担当者が席を外すことがあるのですが、
できるだけ、担当者にはずっと同席してもらって、
参加者と同じ空気で研修を受けてもらうのが理想です。
そう言う意味では今回は、協会の方のバックアップがあり、やりやすい研修でした。

以前にも書きましたが、
医療通訳が必要なのはたくさん住んでいる集住地区だけではありません。
逆に周りに支援者がいなくて困っている地方に住む人たちはたくさんいます。
たとえ一人しか住んでいない地域でも、医療通訳は必要です。
地域は地域にあったスタイルで、みんなでその地域の通訳者を育てて欲しいと思います。