IMIAメンバーの皆様、このたびはこのような栄誉をいただきありがとうございます。
22年間スペイン語通訳相談員として働いてきただけで、
褒めていただくようなことはなにもないのですが、
今回はこれから日本における医療通訳の発展にもっと頑張れという叱咤激励の受賞だと理解してありがたくいただきたいと思います。
私が医療通訳を始めたころは、医療通訳者はあくまでも外国人患者の身内という扱いでした。
結核患者に同行した時も、精神疾患患者の通訳をした時も、医療者側でなく、
患者の友人もしくは家族としての扱いを受けていました。
患者が通訳をつけなければ診ない、できる人が他にいないならば自分が受けるしかないという追い詰められた状況で難しい通訳も受けてきました。
私の医療通訳の原動力は「恐れ」と「怒り」です。
スペイン語に自信があるわけではありません。だから、どんな通訳現場もいつも緊張するし且つ「怖い」と感じています。
と、同時に外国人患者からひとりで病院にいっても言葉が通じないから行けないと言われると、公的保険に加入し、
税金も払っている日本社会の一員である人が、
どうして最低限の医療を受ける権利を阻害されなければいけないのかという「怒り」になるのです。
また、ある医学会のシンポジウムで「先生方は冷蔵庫を買ってお金を払わなければ泥棒だと思うけれど、
通訳を使ってお金を払わなくてどうして平気なのですか」といいました。
別にお金がほしいと思っていたわけではありません。人間は無料のものに対する扱いが雑です。
なんでも要求してくるし、無理も言ってきます。
それがおかしいと思っていました。私は患者のためと思って通訳を引き受けている、
病院に使われる筋合いはないと思い、医療者に対立感情を持っていた時期もあります。
また、疲れてバーンアウトしていく医療通訳者、
生活のために他の仕事をせざるを得なくて辞めていく通訳者を見る都度にこのままではだめだと思いました、
ただ、2000年代になって医療通訳研究会(MEDINT)を設立し、医療者の方々の意見を聞いたり、
通訳者研修をお手伝いいただいたりする中で、
医療者も決してそれでいいとは思っていないのだということが理解できました。
医療は今後ますます複雑化していきます。様々な専門職がチームとなって患者にあたる時代です。
医療通訳者も質の確保をして、チーム医療の一員になれるように研鑽していかなければいけないと強く思います。
と、同時に医療通訳者の立場から、これからもはっきりとこうしてほしいという要望を伝えていかなければいけないと感じています。
IMIAの皆様も私たちと同じような状況からこうした組織を作り上げたと竹迫支部長から聞いています。
日本で頑張るたくさんの医療通訳者のひとりとしての受賞だと受け止め、IMIAの皆さんから勇気をいただいたことに感謝します。
ありがとうございました。
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青臭い言葉は今日で封印です。
これからはもっと前向きに医療通訳に取り組んでいきたいと思います。