ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

今回の自民党総裁選で、高市早苗が負けたら自民党と日本政治の「安倍時代」が終わるのだろう(しかし「安倍的なもの」は今後も残るだろう)

2021-09-24 00:00:00 | 社会時評

自民党総裁選というのも、「一政党の党首選に過ぎないじゃん」「いくら次の首相を決めるものとなるとはいえ、マスコミが事実上自民党の宣伝をしているじゃん」とかいろいろ指摘、批判もあろうかと思いますが、今回の総裁選に出馬している人間の中で、私個人の意見で、もっともまともな人間と私が考えるのが、野田聖子です。過大評価をするつもりはありませんが、彼女はほかの候補者3人よりはまともな人間だと私は考えています。たとえばbogus-simotukareさんがご教示くださったものですが、こちらの彼女の発言はどうでしょうか。

>野田候補
 「拉致の問題は安倍政権、菅政権の重要な問題解決の一つだったと思います。しかしながら私達自民党にいて何か前進したかっていうようなことは私自身何も聞いていません」

 野田氏は拉致問題は進展していないという現状認識を示した上で、北朝鮮への情報収集態勢の強化が重要と指摘します。

なお他候補の発言をみますと、

>高市候補
 「もはや一刻の猶予もございません。何とかあらゆるルートを模索しながらですね、1対1の対談の場を私は作りたいと思っております」

 高市氏は金正恩(キム・ジョンウン)総書記を念頭に1対1の会談を行い事態の打開をはかる考えを示したほか、国際社会への発信力を強化すると訴えました。

(中略)

>河野候補
 「外務大臣時代、北朝鮮の外務大臣と何度か話をいたしました。しかし北朝鮮という極めて特異な政治体制の国であることを考えると、やはり首脳会談というのが必要になってくると思います」

 首脳会談実現のためにはアメリカ・中国・韓国・ロシアの諸国としっかりと話し合い、北朝鮮への共通認識を持つことを訴えます。

岸田候補
 「外務大臣在任中、ストックホルム合意等の取り組みに努力をした経緯がありますが、結果として十分な結果を出すことができていない。やはり最後はトップ会談に持ち込まなければいけない」

 岸田氏は、首脳会談のためにはアメリカのバイデン政権の北朝鮮政策との連携も考えながらしっかりシナリオを考えていくことが大事としています。

首脳会談は当然ですが、しかし野田の言うように

>野田候補
 「拉致の問題は安倍政権、菅政権の重要な問題解決の一つだったと思います。しかしながら私達自民党にいて何か前進したかっていうようなことは私自身何も聞いていません

という前提でいかないと、全く何もどうしようもないでしょうね。安倍晋三らも首脳会談したいみたいな話は散々していましたが、まったくの口先だけのものに終わりました。が、岸田と河野という外相経験者は、つまりは自分が何もしなかった(できなかった)というこのような前提は認められないでしょうね。そして安倍に近い高市も、やはりそういうことは認めがたいでしょう。それだけでも野田の発言はとてもまともだし、好感の持てるものです。が、私は普段自民党を支持していないし、どっちみち議員でも党員でもありませんから総裁選に投票はできません。それはまあ仕方ないとして、安倍晋三が高市早苗を支持しているのが興味深いですね。

前にも記事でもふれたように、安倍は自分の後継者として岸田文雄を考えていたという話があります。よって彼は、第二次安倍内閣時に、岸田を外相、あるいは政調会長といった要職につけていました。が、理由はともかく、安倍は、自分の次の首相(自民党総裁)として、官房長官の菅義偉を選びました。このあたりの彼の考えは、やはりこの状況では、岸田首相では何局を乗り切るのは厳しいという認識があったというところなのでしょう。

安倍晋三にとって第2次安倍政権を1人の官房長官で通したのは、強みであったが、同時にマイナスでもあったしまたその後もそれを引きずるのだろう

それで今回、安倍は、自分とイデオロギーが近いとされる高市早苗を支持しているということになっています。が、けっきょく彼の出身母体である細田派も、高市支持ということでは固められませんでした。高市では、最初から勝つのは難しいのではないかというのは誰でも想像のつく話ですが、ともかく彼は、高市支持というのを打ち出しているわけです。安倍も、最初から細田派ぐるみで高市支持にまとめるとか、そこまですることはできませんでした。あるいはする意思がなかったのかも。

さらに興味深いのが、その安倍から事実上の禅譲を受けて首相(自民党総裁)になったといって過言でない現首相が河野太郎を支持している問うことで、安倍と支持する候補者がちがうということですね。bogus-simotukareさんもご私的なように、

細田派は高市氏か岸田氏を支持 総裁選一本化せず - 産経ニュース
つまり「高市支持」について安倍は事前に細田派(安倍の出身派閥)に根回ししなかったし、事前に根回ししなければ今の安倍の政治力はその程度の物だと言うことでしょう。根回ししなかった理由が1)根回ししなくても派閥は俺の意向に応じるはずだという過信か、それとも逆に、2)根回ししても高市支持で一本化は無理という諦めかはともかく。

ということなのでしょう。

今日の産経ニュース(2021年9/14~15日分)

そして今回の総裁選で高市がもし勝てば、安倍は「キングメーカー」(?)「院政」を敷くとかいうことになるのかもですが、おそらく今回高市は勝てない。そうなると、岸田あるいは河野が総裁になったら、たぶん安倍とは一定の距離を置くと思うので、ここで事実上自民党で9年間弱続いた「安倍時代」、そして首相として6年半以上(どちらも第二次安倍政権のみのカウント)続いた安倍時代は、一応の終わりということになるのでしょう。自民党は別に安倍の私党ではないのだから、そもそもそんなに安倍が総裁(党首)を続けたりするのも変な話ですが、ともかく安倍一強とまで言われた時代が何年か続きましたが、それも文字通り終わったのだと思います。高市の敗北が確定した時点で彼の時代が終わったということになりますが、現実問題としてはすでに終わっているでしょう。もちろん勝てば、事態は変わります。それで、たとえば次のようなところは、安倍時代の終焉を意識したうえでの行動かもですね。

教育再生実行会議を廃止 高等教育検討する新たな会議開催へ | 教育 | NHKニュース

教育再生会議廃止、新たな会議設置へ: 日本経済新聞

多分ですが、安倍時代が続くのなら、この時点での「教育再生会議廃止」ということにはならないのではないかと私は考えます。またこれは私的なことであって公的なことではないですが(行政訴訟ではありますが)、現首相が首相を続けるのなら、あるいはですが提訴に至らなかった可能性がありますね。

教科書検定「違法」と提訴 自由社 - 産経ニュース

うんなもん提訴時点の首相がだれであろうが、提訴したければすればいいだけのことですが、さっさと提訴しないのだから、こいつらのチキンぶりもひどいものです。

ただ安倍が日本の政治のトップ、あるいはそれに準ずる地位にあるということが終わったということは、これによって「安倍的なもの」をも終わるということを意味しません。当然の話ですが、たとえば安倍もまだ隠居には早いでしょう(私はじゅうぶん隠居の時期だと思いますが、ご当人はそうは思っていないでしょう)。可能ならご当人はまた首相になりたいでしょうし、当然なるべく自分とものの考え方が似ている人物が首相であればいいと願っているでしょう。それが可能かどうかはともかく、私にとっては極めて遺憾ながら、安倍ほどではないにしても自民党の極右ぶりというのは相当ひどいレベルに来ていると思います。けっきょく安倍が、自民党総裁再登板、首相再登板、首相在任歴代1位、自民党総裁が今まで2選までだったのを3選可にして、自分が3選で総裁を継続するなんていうマンガチックなことになったのも、理由はいろいろでしょうが、1つには安倍の極右的部分が自民党の中の琴線に触れたということはあるのでしょう。だから、一応「宏池会」のトップである岸田も、

>森友問題「再調査考えぬ」 軌道修正、安倍氏に配慮か―自民・岸田氏

なんていうことになるわけです。また、

>自民総裁選 岸田氏、憲法改正「総裁任期中に実現」

という発言もあります。

現段階で、安倍にそのような配慮をすることが、どれくらい自民党総裁選を戦う上でプラスになるのか私は知りませんが、やはり現在の自民党でトップになろうと思っていたら、安倍に配慮すいるとか改憲とかには積極的であるという姿勢(をとるポーズ)が必要、あるいは有利に働くのでしょう。正直さすがに高市も岸田も河野も、安倍ほどの長期間首相で居続けることはできない相談だと思うので、彼(女)らの任期中に改憲を実現するのはほぼ不可能だと私は思います。しかしここはそういう建前でいくということなのか。

かつて無役時代の安倍を「過去の人」と批判した溝手顕正を安倍が逆恨みして(当時の安倍は現実に「過去の人」でした)、2019年参議院選挙で刺客を出して落選させた(しかしその後刺客と法相までしていた夫まで逮捕)なんていう、どんだけ馬鹿で非常識なんだよというような愚劣な事態も起きたのも、さすがに安倍でなければあんな愚劣なことはしないし、またさすがにそれが少なくとも自民党の中では事実上の不問とされた(かどうか正確なところは知りませんが、まあそんなに外れてもいないでしょう)というのも、安倍ならではでしょうが、しかしそういう悪い部分がかなりの部分日本の政治や自民党に浸透したことも否めません。そういう影響を払しょくするためには、それ相応の時間と努力が必要でしょう。残念ながら世の中、安倍があそこまでして許されたんだから、自分もしてみたいとか勘違いする馬鹿もいないわけではない。もちろん私も期せずして多少なりともかかわってしまった森友や加計などもご同様。あんなことを積極的にしたがる人間がそう多いとも思いませんが、安倍の負の影響力を馬鹿にするのも妥当でないでしょう。たとえば安倍シンパによる性犯罪について、その人物の逮捕状の執行停止を命じたとされる中村格が、警察庁長官に就任するなんて言う愚劣にもほどのある事態がつい先日もあったばかりです。中村は、被害者(伊藤詩織)の取材に対して逃げ回ったそうであり、どんだけ馬鹿でクズで恥さらしなのよと思います。前にも記事に書いたように、若き日の中村が今日の中村を見たら、ああいうクズには自分はなりたくないと思ったでしょうし、中村に子どもがいたら、自分の親をあんまり自慢はできないでしょう。中村の子どもは、周囲から「てめえの親は、伊藤詩織の取材から逃げたんだろ」と言われて、本心から親をかばえるのか。まともなモラルを持っていれば、とてもそれはできないでしょう。

高校生、大学生、警察庁に入庁したばかりの中村格が現在の自分を見たら、ああいうクズにだけはなりたくないと思ったろう

さすがに高市が自民党総裁になって首相になったとしても、そこまでひどいことをすることはないのかもですが、しかし今の高市が、そういうことを批判するような人間でもないのも確かだし、野田はどうかですが、安倍政権で幹部だった岸田や河野は弱腰な態度に終始するでしょうね、きっと。

いずれにせよ高市が勝てばもちろんのこと、岸田か河野でも、やっぱり安倍時代はなかなか払しょくできないのだろうなと思います。そしてそれが日本の政治にプラスになるとはとても思えませんね。今ではたいていの人間から忘却の彼方かもですが、統計不正の問題なんて、目も当てられないとはこのことです。私は、日本は、少なくとも統計のようなものはインチキは最大限しないと思っていましたが、とてもそんなことは言えたもんじゃない。かつては、中国や北朝鮮はデタラメな統計を発表しているが日本は違うなんて言う人が多かったしまたそれは正しかったかと思いますが、もはや日本の統計なんて自慢できるような代物ですらない。なかなか遠い道のりです。


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北京・天津紀行(2014年12月... | トップ | 北京・天津紀行(2014年12月... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (アンドリュー・バルトフェルド)
2021-09-24 21:26:16
>総裁選
党員向けの投票用紙がメルカリで売られていて、高市シンパが買い漁っているとかいないとか。
「こういう不公正さに繋がることもマスコミはやれよ」と思います。
決選投票は、高市が出なければそれはそれでですね。当然非難すべきことは言いますが。

細田博之が岸田にも高市にもいい顔をしてきましたが派閥の長として岸田支持に傾いたようですね。
後は衛藤と木原も同調だとか。
日経のスマホ記事をさっと見ただけなので正確に書いていませんが、「それを今頃言うのかよ」と呆れました。

河井夫妻の件で柴山が「よく言うよ」なことを言っていましたが、「埼玉の恥」であります。
返信する
>アンドリュー・バルドフェルドさん (Bill McCreary)
2021-09-25 23:17:48
>細田博之が岸田にも高市にもいい顔をしてきましたが派閥の長として岸田支持に傾いたようですね。

まあ派閥を出た人間を派閥ぐるみで支持するというのは変なことです。
返信する
毎日新聞「氷河期世代、取り残されたまま 『3年で正社員30万人増』困難」 (nordhausen)
2021-09-30 20:20:13
https://mainichi.jp/articles/20210919/k00/00m/040/039000c

本記事の趣旨とはやや異なりますが、自民党総裁選で就職氷河期世代問題にあまり触れていないことが少し引っ掛かりましたね。毎日の記事によれば、就職氷河期以外の世代でコロナ禍でも人手不足を背景に正社員化が進み、新卒採用も堅調とのことですが、本当にコロナ禍でも人手不足が進んでいるのか非常に疑問ですね。むしろ、人手不足だからといって安易に外国人を受け入れるより、こういう就職氷河期世代を正社員として受け入れた方が余程良いのではと思いますね。そうすれば、全体的に所得向上の一環になりますし、生活保護受給者の減少にもつながると思いますが。

>引きこもりや、80代の親が50代の無職の子を養う「8050問題」

ついでに指摘しておきますが、いわゆる「8050問題」における「50代の子」は別に無職とは限らず、非正規雇用による低所得者(いわゆるワーキングプア)や障害者という場合も少なからず見られます。

岸田政権(予定)には、こういう取り残された就職氷河期世代の人たちにも目を向けた経済政策を行ってほしいものです。
返信する
>nordhausenさん (Bill McCreary)
2021-10-02 21:48:41
まあ現在の自民党政権からすると、就職氷河期の話というのは、触れたくないこと、かかわりあいたくないことなのでしょう。

>ついでに指摘しておきますが、いわゆる「8050問題」における「50代の子」は別に無職とは限らず、非正規雇用による低所得者(いわゆるワーキングプア)や障害者という場合も少なからず見られます。

そうですね。特に障害者の場合事態はより深刻ですね。私の知り合いにも、50過ぎで無職で、親が困っている事例があります。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。