ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

あまりに無残で言葉もない(逃げることは、いろいろ重要だと思う)(追記あり)

2020-12-15 00:00:00 | 社会時評

先日読んで「おいおい」と思った記事を。いや、裁判の記事であって最近の話でもないのですが、しかし私は知らない事件だったので。

>米原市の元職員 起訴内容認める
12月11日 15時24分

去年12月、長浜市で知人を包丁で切りつけたとして、殺人未遂などの罪に問われた、当時、米原市職員だった男の裁判が大津地方裁判所で始まり、男は起訴された内容を認めました。

米原市社会福祉課の主事だった服部浩司被告(28)は、去年12月、長浜市内にとめた自分の車の中で、米原市の、当時、26歳の男性の腹を刺すなどして殺害しようとしたとして、殺人未遂などの罪に問われています。
11日、大津地方裁判所で開かれた初公判で、服部被告は「間違いありません」と述べて、起訴された内容を認めました。
続いて冒頭陳述が行われ、検察は「生活保護のケースワーカーだった被告は、担当していた被害者への対応にストレスを募らせ、業務時間外に行っていた被害者の動画撮影の手伝いをやめさせてもらえない場合、殺すしかないと決意した」と経緯を明らかにした上で、「凶器を準備するなど一定の計画性と強い殺意があった」と指摘しました。
これに対し弁護側は、「被告は140から150件ある市内すべての生活保護を1人で担当していて、なんとか業務を円滑に進めようと被害者の動画撮影を手伝っていた。懲戒免職となるなど社会的制裁も受けている」と述べて、事実関係については争わず、情状酌量を求めていく考えを示しました。
この裁判は今月16日に結審する予定です。

・・・どうもなあですね。

>業務時間外に行っていた被害者の動画撮影の手伝い

って、なんで生活保護のケースワーカーが生活保護受給者の動画撮影なんかを手伝わされるんだよ、それ「やめさせてもらえない」とかそんな次元ですらないし、だったら「そんなことはできん」と断ればいいだけじゃんと思うだけですが、そんな「社会常識」も通用しないんですかね。そうだとしたらそれもひどい話です。中日新聞の記事によると

>男性が市職員に深夜まで対応を迫り、車を出させるなどの要求を繰り返した結果、被告の同僚が休職に追い込まれ、被告に業務が集中したと指摘した。被告は心療内科に通院した末に犯行に及んだとして「同情すべき多数の事情がある」と主張した。

とのことで、相当加害者は追いつめられたんですかね。そうだとしたらそれは気の毒な側面は確かにあります。この生活保護受給者は、おそらくまったく話が通じない、ある意味異次元の性格の人間なのかもです。

映画『暴力脱獄 』で、刑務所長のストローザー・マーティンが、脱獄するポール・ニューマンを評して

What we've got here is failure to communicate(「意思の疎通が欠けてたようだ」)

と語りますが、この人物もたぶん映画でのルーカス・ジャクソンめいた人物じゃないですかね。話が通用するような人物ではないのでしょう。

それで私が思い出したのが、京都府向日市でのこれまたクズの極致の生活保護受給者から担当ケースワーカーがひどい災難を受けた事件です。向日市のHPから引用すれば

>3 事案の概要

   令和元年5月31日から同年6月1日頃、保護受給者Aは、当時同居していた女性に暴行を加え死に至らしめました。

   当該職員は、保護受給者Aから女性の死体遺棄に関与すべきとする強い要求を受け、令和元年6月1日頃、保護受給者Aとともに女性の死体に圧縮袋を被せてブルーシートで覆って隠匿し、同年6月4日頃、保護受給者A及び保護受給者Aの知人とともに女性の死体を大型冷凍庫に入れ、同年6月5日頃、死体を入れた大型冷凍庫を、事情を知らない業者に、当該職員名義で賃借したアパートの部屋に運搬させ、同日から同年6月11日までの間、同室内で死体を隠匿し、さらに同日、保護受給者Aとともに女性の死体を同室から運び出してアパート駐車場に置いて立ち去り、もって女性の死体を遺棄したものであります。

   さらに、同年6月11日、向日市の上記賃借アパートの駐車場において、ブルーシートで覆われるなどした女性の死体が発見され、同月12日、保護受給者Aと当該職員は死体遺棄罪で京都府警に逮捕され、その後、当該職員は同罪で起訴され有罪判決を受けました。

4 処分の理由 

   当該職員は、今回の事案に関し、当初は不当な要求等に対して毅然とした態度を取っていたものの、死体遺棄事件発生にいたるまでの約半年間にわたり、保護受給者Aから毎日のように長時間の電話対応を余儀なくされ、理不尽な謝罪要求や叱責を日常的に受けていたこと、このような保護受給者Aの言動に対し、組織的な対応が適切になされず、ほぼ、担当ケースワーカー自身で対応せざるをえない状況であったことは、酌量すべき情状であります。

   しかしながら、「死体遺棄」の態様は悪質であり、公務員として、かかる行為を踏みとどまる判断が必要であったことに加え、本件公務員による死体遺棄事件は報道各社に大々的に取り上げられ、社会的問題にまでに発展し、向日市だけでなく全体の奉仕者である公務員全体の信用を大きく失墜させたものであり、社会全体に与えた影響は甚大であります。

   さらに、死体遺棄事件の一審判決において、情状酌量により刑の執行猶予が付されたことを考慮しても、懲役1年6か月という地方公務員の欠格事由に該当する刑の言渡しを受けたものであり、全体の奉仕者としての責任の重大さは明らかであります。

   こうした行為は、法令の遵守義務違反(地方公務員法第33条 信用失墜行為の禁止)及び全体の奉仕者たるにふさわしくない非行(死体遺棄)であり、その責任は誠に重大で断じて許されるものではありません。

   よって、当該職員に対して、上記のとおり懲戒処分を行いました。

という始末です。事件が非常に重大なので免職は仕方ありませんが、これもそこまで行く前に逃げることはできたろと思います。しかし彼は、それができなかったわけです。米原市の事例では、

>車内で男性の腹部刺した市職員を懲戒免職、滋賀・米原
2020年1月28日 19:51

 滋賀県米原市は28日、殺人未遂罪で起訴された社会福祉課主事の被告(27)を、懲戒免職処分にした。

というわけです。殺人未遂ですからこれも一発で懲戒免職は免れませんが、前任者が休職して逃げちゃったんだから、ご当人はそれはできなかったんでしょうね。そんなの仕事に行くのをやめればそれで済む話なんですがね。

で、世の中、それがなぜだと言われれば他人の話ですので他人が理解できるようなものでもありませんが、なぜだか知りませんが、「逃げられない」人ってのがいるのですね。子どもが親の虐待から逃げられないというのは、保護者⇔被保護者の関係にあるから、そう容易には実行できないというものでしょうが、夫婦や勤務先の関係、学校、その他いろいろ「逃げられない」というところがありますね。逃げられれば、世の中の自殺というのはかなりの部分解消されるのでしょうが、しかしなぜか人間「逃げたら自分にとっては敗北である」とか下らんことを考えたりもします。自殺のほうがよっぽどひどい敗北でしょうが、そこまで頭が回らなくなる。

これは自殺ということばかりでもありません。殺人事件でも、ずいぶん昔の事件ですが、栃木県で青年が殺害された事件も、事情は定かでありませんが、被害者は逃げませんでした。この事件では、栃木県警の捜査怠慢が世間の指弾を受けましたが、それはともかくとしても、被害者が逃げ出せば殺されないで済んだはずで、これも非常に残念な事件だと思います。DVとかの殺人も、逃げられればなんとかなるでしょう。

そしてこれは、たとえば人間関係などもそうでしょう。キャバクラ嬢に会社の金を貢いだゴム会社社員、歌手崩れに全財産を貢いで一文無しになり生活保護を受給して死んだ女性、こういった人たちも、逃げることができれば刑務所に入るとか生活保護受給者にまではならないですんだのでしょうが、たぶん自分がだまされたことを認めたくなかったのかそのあたりは不明ですが、逃げられずに逮捕、一文無しになってしまったわけです。

社会常識、道理、正論、合理的解釈、法令順守、他人に迷惑をかけない、こういったことが通用しないと本当に迷惑だしどうしようもない

金をためられる人、財産を残せる人は、けっきょく金にシビアなのだと思う(追記あり)

いずれにせよ他人についてはどうこうできなくても、自分については、危険をさけるために逃げられる態勢でありたいですね。人間自分を助けられなければ、他人も助けることはできません。

記事発表日の追記:bogus-simotukareさんがこの記事について感想を書いてくださいました。

『ライプツィヒの夏』記事について色々感想

記事中、横田滋氏も、逃げられなかった人の一例ではないかというご指摘がありました。確かに彼も、奥さんほかの家族たちの呪縛から逃げられなかった人だと思います。その点では、彼は気の毒でした。bogus-simotukareさんありがとうございます。


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2 コメント

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旭川市神居古潭で留萌市在住の女子高校生が殺害される事件が発生(2024年6月15日のNHKニュースWEBから) (nordhausen)
2024-06-21 21:45:56
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240615/k10014481751000.html

既にご存じでしょうが、この事件も被害者が逃げていれば殺害される事も無かったと思いますが、逃げるに逃げられなかったのでしょう。それに、報道によると主犯格の21歳女性容疑者も素行があまりよろしくなかったようですね。

なお、この事件では民放や北海道新聞が被害者を実名報道している一方で、NHK等では匿名にしている事が興味深いところです。
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>nordhausenさん (Bill McCreary)
2024-06-22 22:31:26
逃げようとしたが逃げきれなかったみたいな報道もありますね。
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