拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

かんちょうごっこ

2022-12-31 09:04:33 | 音楽

第1章 再開
年末のクリスマスオラトリオの通唱会はコロナ禍でお休みだったが、いよいよ再開。主宰者様のご苦労により、楽しい時間が戻ってきた。本当にありがとうございました。

第2章 顛末
この会は、毎回バロックトランペットの奏者が参加され、「本物」の音を聴けるのが楽しみだった。ところが、今回、事務局からの通信によると、今年は金管のエントリーがない、みんなでトランペットのパートを歌うしかないとのこと。歌うんだったら枯れ木も山の賑わい、ワタクシがクラリネットで吹きます!と申し出。すると、これが呼び水になったか、他のパートの方からエントリーがあり、私は本番前にお役御免となった(辞退した)。ところが分からないものである。その方が前日にキャンセル。再び、みんなで歌うしかないとの通信が回ってきた。歌うんだったら枯れ木も山の賑わい、ワタクシがクラリネットで吹きます!と復帰の申し出。ということで、パソコンの「ゴミ箱」のデータを「元の位置に戻す」ごとく、トランペットのパートをクラリネットで吹き、その合間にアルトのパートを歌うことになった。これが事の顛末である。

第3章 楽譜
違う楽器をクラリネットで代用する場合、しなければならないのが移調譜の作成。この曲はニ長調(♯二つ)だがこの会はバロックピッチ(半音低い)なので、実質は変ニ長調(♭五つ)。♭系の場合はクラリネットはB♭管を選択するから、結局、移調譜は♭が二つとれて変ホ長調(♭三つ)になる(さらに、トランペット譜は「in D」で書かれているのでもう一段階ややこしくなるのだが、読む方も退屈だろうから割愛)。そうやってできた移調譜の一部がこれ。

第1部の第8曲(バスのソロ)のトランペット1stの一部である。速いし、音符が細かいし、途中で♭が一個増えて四つになるし、で、目立つし、なので一番練習した曲である。だが、一番思い入れを込めて吹いたのは次の第9曲(第1部の終曲コラール)。

大きい音符がトランペットで、歌詞付きの小さい音符はアルト。通唱会では、隙を見ては歌おうと思っているのだが、楽器のパート譜と合唱譜を交互に見る余裕はないので、パート譜にアルトのパートを書き込むのが私流である(千人通唱会で、他の楽器の方々が休み時間に私の楽譜を覗いてあきれていた)。で、思い入れのワケはこういうワケ。30年近く前だろうか、合唱指導で有名なGさんの合唱団に2か月だけいたことがあるのだが、練習のときG先生がこのコラールがどれだけ素晴らしいかを現すため、トランペットを口三味線で歌われたのだ。♪たりらっら、たりらっら、たーりーらーたりらりらー……その口三味線が本当に素晴らしくて、曲の壮大さが十二分に感じられて、私にとって、クリスマスオラトリオで真っ先に思い出すのがこのコラールになった。で、図らずもトランペット・パートを吹くことになった今回、おお!あの「たりらっら」を吹けるんだ、と喜び勇んだのである。なお、半音低いピッチはクラリネットの管の途中を抜いて作れないのか?と思う人がいるだろうか。管を抜いて半音も下げることは不可能である。それができればA管(B♭より半音低い管)はいらなくなる。

第4章 練習
私はこれまで不真面目であった。歌も楽器もさして練習しなかった。まあ、それなりにカタチは作れるのだが、真の達成感は感じていなかった。だが、カンレキもすぎて(って、いつの話だい)、ぐるっと人生を一周したところで反省した。ちゃんと練習しよう。で、ちゃんと演奏しよう。きっと、その方が幸福度が高いに違いない。その第1歩として、最初はゆっくりやってみよう。誰かがネットに書いていたが、完璧に演奏できるまでテンポを落として練習するメリットは、それによって「成功体験」を神経に刻み込むことにある、と言う。なるほどー、おおいに納得。指導者によっては、本番の三日前までイン・テンポで演奏させないそうだ。よし、いただき!三日前まで超ゆっくりで吹こう……と思っていたら、五日前に辞退して、前日に復帰した。すなわち、イン・テンポで練習する時期を逸したのである(復帰が決まった前日は、松戸で忘年会だったから吹くひまがなかった)。さあ、どうなるだろうか……

第5章 結果
私としては、とてもうまくいきました。スローな練習(丁寧な練習)が効を奏した模様。そうやって、きちっと練習すると本番でいきなり速くなってもついていけるらしい。幸福感満載。だが、この幸福感を保つためにしなければならないことがある。人と感想を言い合ったりしないでとっとと退散することである。半世紀にわたり、世界の頂点=ベルリン・フィルでホルンのトップに君臨してきたGSは、定年間近でクビになった。理由は、楽屋で人を殴ったからである。殴った理由は、本番の後、訪ねてきた知人にGSが「感想を何なりと言ってくれ」と言ったので、知人が思ったことを言ったらGSが激怒したのであった。GSの人間性も見上げた(見下げた)ものであるが、人の感想を聞いてがっかりするのは世の常である。だから退散するのである。三十六計逃げるにしかず、である。

第6章 かんちょうごっこ
時計の針をちょっと戻そう。本番の間の休憩時間、誰かが、私のズボンの黄門あたりを指で突いた。子供がやる「かんちょうごっこ」である。振り返ると、犯人はY人妻。私は、この遊びをしたこともされたこともない。それをY人妻にしていただいて、とっても嬉しくなった。トランペットをクラリネットで吹かせてもらい、人妻にかんちょうごっこをしてもらった通唱会、私にとって思い出深いものになるであろう通唱会であった。


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