拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

大森の待合/北枕

2024-03-24 08:05:58 | 日記

その「虞美人草」を完読。以下、後半部分の読書感想文。

終盤、男は女(前回のブログで「支配する女」と書いた女)を大森に誘う。私などは、「大森」ときくと「貝塚」を思い出すが(いつの時代の人間?)、どうやら男が女を「大森」に誘ったということに意味があるらしい。そう言えば、うっすらと、大森はその昔男女が忍び会う場だった、と聞いた覚えがある。ググると、大森には待合がたくさんあったという情報が。待合!前朝ドラの「らんまん」でスエ子が待合の経営を始めるとなったとき、誰かがラブホ!と言っていた。話がつながった。大森には今でいうラブホがたくさんあった。だから大森に女を誘うということは、そこで「ちょめちょめ」(「不適切にもほどがある(来週いよいよ最終回)」的表現)をして、のっぴきならない関係に持ち込もう、という魂胆だったのだね。

その後、どんでん返しがあって、女は椅子をけっとばして倒れたところで章が終わり、次章の冒頭、いきなり女が「北枕」で寝かされている。「死」の一字も出てこないが、この「北枕」で女が死んだことを読者は察しなければならないらしい。私には困難だった。なぜなら、ついこの間まで何十年もの間、私は北枕で寝ていたから。兎小屋と形容される現代の日本の住居では、部屋のつくりに従って寝るのであり、方角など気にしてられない。わが小屋は南北に長く、かつ、テレビが南端にあるから寝っ転がってテレビを見ようと思ったら北枕以外の選択肢はなかった……んだけど、つい最近、東西にも布団を敷けるだけのスペースがあることに気づき、ようやく北枕から脱して東枕になった次第(それでも、こないだ酔っ払って帰ったときは、東西の区別が付かず西枕で寝ていた。西枕は別にいいんだよね?)。

問題は死因。それをうかがわせる記述は(私が読んだ限り)どこにもない。椅子をけっとばして倒れたから、そのときどっか打った?それとも、あまりの憤りでショック死した?だが、Wikipediaには「毒を飲んで自死した」とある。どこにそれが書いてあるのだろう?唯一、死んだ女をクレオパトラになぞらえてる箇所がある。私は、この女が男を手玉をとろうとしたんだけど、その目的を達することができなかったところがクレオパトラみたい、と解釈したんだけど、クレオパトラは毒蛇に自らを噛ませて自死したんだった。そこか!なんと想像力を要すること!そう言えば、「風と共に去りぬ」でビビアン・リーとクラーク・ゲーブルが言い争いをしてて、翌朝になったらベッドでビビアン・リーがにこにこしてて、観衆はその間二人の間に「ちょめちょめ」があったことを読み取らなければならない。いろいろおつむを使わなくてはならず大変。そこへいくと、橋田壽賀子のドラマなどは、役者がぜーんぶしゃべってくれるから楽ちんです。

それにしても、「虞美人草」、昨日書いたとおり総じて楽しく読んだけれど、怒涛のエンディングは相当に不自然。ぐだぐだしてた人たちがいきなり立派なことを言い始める。漱石がプロの作家になって最初に書いた作品ということで、力みまくった結果でしょうか。執筆途中に体調を崩したときく。そもそも精神のリハビリのために始めた小説書きだったのにね。



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