「ホフマンの舟歌」の歌詞はメロディーに負けないほど妖しくて淫靡。ゼフィール(西風)にチューして!とねだる(もっとましな訳しようがあるだろうに)。「ゼフィールのチュー」と言えばボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」(同人の「春」同様、首のひん曲がり方が有名)を思い出す。画面に向かって左側にゼピュロス(ゼフィロ)がいて、中央のヴィーナスに息を吹きかけている。これこそ「ゼフィールのチュー」。そう言えば、昨日は春一番が吹いた。ヨーロッパでは春の風は西風だが、日本では春の季語は「東風」(こち。漱石の「猫」に越智東風(おちこち)という人が出てくる)。でも、実際の春一番は南風だ。野良猫が悩ましい声で鳴く季節ももうすぐ。いや、動物に限らない。この生暖かいもあっとした風は人間にも作用するのではないか。キャンディーズの「春一番」にも、もうすぐ春だから「彼を誘ってみませんか」とある。しかし、この時期、夜の屋外はまだ寒い。バロン・オックス(私ではない。バラの騎士に出てくる本物の方)も、「恋愛のために良いのは5月と言われているが、私に言わせれば、もっといいのは6月、7月、8月」と言っている(歌詞だけ見ると、この三つの月は同格だが、音楽は「August」が最高であることを表している)。
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