(つづき)
銅鑼の合図で蹲踞をつかい、ベランダ茶席へ席入りして頂きました。
試行錯誤中の茶席の設えですが、今回は丸いテーブルを点前座に使い、風炉釜と棚を置きました。
薄茶をたっぷり差し上げたかったので、織部紅鉢に桐文真形釜(敬典造)を選びました。
棚は煎茶用の円相棚、水指は高麗青磁、中棚に仕覆に入った薄器と金綸寺、天板に柿と烏瓜を荘りました。
動線の都合で点前座右側に旅箪笥(利休好み)を置き、中に茶碗、柄杓、建水、蓋置を入れ、洞庫として使いました。
天板は、茶碗や拝見の茶道具をお出しする小卓の役目もし、とても優れものです。
初炭をし、狭い火床に申し訳程度の炭を置き、香を焚きました。
香はつけぼし香です。
Fさまの志野流香道の先生から頂いた香をちりばめたので、早速に佳い薫りが漂います。
香合はアンティークの錫製小箱、1820年頃にイギリスで作られたもので嗅ぎ煙草入れだそうです。
この香合は横浜開港150周年を祝う茶事に使ったもので、久しぶりの登場で、香合の方が驚いているかもです・・・。
アンティーク香合とつけぼし香
煙草盆と干菓子をお出しし、いよいよ楽しみな薄茶の時間になりました。
旅箪笥から仕組んだ茶碗を出し、棚の薄器を取って仕覆を脱がし、長緒のようなお点前をしました。
置く場所がないなど諸事情があり、即興の部分がありますが、心を込めて薄茶をお点てしました。
主茶碗は高麗御本三島、愛称「伊備津比女(いびつひめ)」です。
それから、洞庫にしまっておいた茶碗を次々と取り出してお点てしました。
順不同ですが、織部(・・といっても辰砂釉が美しい茶碗で、大学同級生の青木念作)、
虫明焼・平茶碗(今はもう見れなくなった・・・蓼純さんの虫明焼のブログ10周年記念に頂いた茶碗)、
信楽焼茶碗(銘「皎月」鵬志堂イサム作、京都のだるまさんに頼んで弘法市で買ってもらった茶碗)、
どれも思い出のあるお気に入りばかりです。
薄茶は「金輪」(小山園詰)、干菓子は「撫子」(琥珀糖、鶴屋吉信製)、「ひろ柿」(広島みやげ)、「フグ煎餅」(下関みやげ)の3種です。
円相棚(煎茶棚らしい)で再現、水指がちがいますが・・・
狭いベランダですが、鳥の啼き声が聞こえ、秋のそよ風が心地好く、絶好の茶会日和です。
一順お点てしたところで、お点前を半東Uさんと交代して頂きました。
膝突き合わせる狭さゆえ会話も朗らかに弾み、皆さま、楽しそうです・・・もちろん、半東Uさんも暁庵も愉しい時間でした。
ツレと同郷の正客Kさまから頂戴した「銀寄」(ぎんよせ、渋皮煮)を皆で賞味したのも良き思い出です。
四客の武者小路千家流Sさまから
「今日は他流の方のお点前を見れたら・・・と思っていました」
そういえば、三千家が勢ぞろいしたのをすっかり忘れていました。
早速、武者小路流Sさまにお点前をして頂き、次に表千家流Iさま、最後に裏千家流Yさまにお願いしました。
薄茶を点てるだけなのですが、千家流でもいろいろ違いがあるものだなぁ~とびっくりしたり、堂々の所作に感心したり・・・このような交流も楽しくよろしいですね!
一番面白かったのは、茶碗を拭いた後に茶巾を釜蓋に置く位置でした。
釜蓋の摘みの前、摘みの右、摘みに懸ける・・・三千家で全部違っていました。
今度は是非、薄茶点前を最初から拝見したいものです。
最後に薄器(化粧壺)、茶杓、仕覆、金輪寺を拝見にお出ししましたが、茶杓のことだけ書いておきます。
茶杓は銘「秋の野良」、十数年前に京都・曼殊院で購入したもので、お稽古にも使っています。
良く使っているせいで、色艶も好く、名杓(私が言うのもへんですが、お許しを・・・)に育ちました。
「秋の野良」は大好きな和歌から名付けましたが、本番では和歌が出て来ませんでここに記します。
里は荒れて 人は古(ふ)りにし宿なれや
庭もまがきも 秋の野良なる 僧正遍昭(古今集)
第6回お茶サロン「秋いっぱいのベランダ茶会」・・・その3へつづく その1へ戻る 募集記事