暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

夏の幻想・・・水点前のミニ茶会 (1)

2021年08月21日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

  (雨降りの公園にて・・・大きな水たまりが出来ました)

 

オリンピックが終わると雨が1週間続きました。

その日も雨・・・郵便局の帰りに近くのYさん宅へ寄りました。

5月に亡くなられた音楽院さん(Yさんのご主人の戒名)にお線香を上げさせてもらい、久しぶりに茶談義が弾みました。

すると、隣の和室に長板と素敵なギヤマンの水指が置かれているのを発見!

「暑いのにお稽古をされているのね・・・・」

「M氏から長板と亀甲竹の結界が届いたので、久しぶりに水点前をお稽古しようと思って水指を出したところなの」

 

    (一目ぼれして購入したというギヤマンの豪華な水指・・・見立てです)

 

裏千家流には水点前がなく、昔、茶会の趣向で水点前で薄茶をいただいたことを思い出しました。

「小堀遠州流には水点前があるのですか?」

「ええ。夏になると氷を入れて水点前のお稽古をするんですよ」

「是非一度、小堀遠州流の水点前を拝見させてください」とさっそくおねだりしました。すると、

「まぁ、嬉しいわ! 主人が亡くなってお客さまをしてくれる人がいなくなって困っていたの。

 是非、いらしてください。」

数日後に再び訪問する日を決め、もうお一人だけ共通の知人Nさんをお誘いすることにしました。

 

        (我が家の百日紅が満開です)

 

その日は雨が上がり、気温も上がって「水点前」にふさわしい夏日になりました。

Nさんは茶系の小千谷縮みの着物と茶系の夏帯をシックにお召しでしたが、暁庵は体調不良もあり洋服で失礼しました。

13時半にお尋ねすると、玄関内にアルコール消毒薬と蹲が用意されています。

「外は暑いので、冷房の効いているこちらで蹲を使ってお入りください」と粋な浴衣姿のYさん。

持参したお菓子の折詰と果物をお供えして、音楽院さんにお焼香しました。

音楽院さんはYさんがお茶をすることを心から応援されていたので、きっと今日の茶会を喜んでいることでしょう・・・。

 

    (床の設えが涼しげで・・・)

すぐに茶室に席入りしましたが、床の設えがもうもうステキでした・・・。

先ず掛けられている横物のお軸に心惹かれました。

 

四酔」と隷書で大きく書かれ、その横に小さく

「 春酔花 (春は花に酔う)

  夏酔風 (夏は風に酔う)

  秋酔月 (秋は月に酔う)

  冬酔雪 (冬は雪に酔う)」・・・と。

小堀遠州流の小堀宗通氏(前のお家元?)の八十八歳の時の御筆で、Yさんの宝物だとか。

 

お軸の下の群青の水盤にはホテイアオイが青々と浮かび、メダカが静かに泳いでいます。魚籠(びく)のような大きな籠にはたっぷり露を抱いた萩の枝葉が生けられていて、

「まぁ~、なんて涼やかなお床の設えなのだろう・・・」と思わず感嘆の声をあげました。

 

       (ホテイアオイの下にメダカが数匹隠れています)

 

Yさんとご挨拶を交わし、素晴らしい設えのことをお尋ねすると、

「あれからどのようにしてお迎えしたらよいか、あれこれ考えるのが楽しくって夢中で数日を過ごしました」

「Yさまのお心がこもっていて、お床の設えも「四酔」のお軸の詩句も素晴らしいですね。ご迷惑では・・・と心配していましたが、今のお言葉を伺って、おねだりして本当にヨカッタ!です。水点前がますます楽しみでございます」(つづく)

 

       夏の幻想・・・水点前のミニ茶会 (2)へ続く