暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

隣花苑の蓮華飯

2011年09月18日 | 三溪園&茶会
              
9月16日に蓮華飯(れんげはん)を食べに隣花苑へ行きました。
偶然ですが、原三溪翁の月命日でした。

七月の終わりとは違い、残暑の中にも秋の気配が漂っています。
白い芙蓉、紅白の萩、ススキ・・・
野趣豊かな庭に咲く花々も風情がありますが
一歩中へ入ると、古民家の持つぬくもりと懐かしさが満載。
それに部屋のしつらえがとても素敵なのです。

燈明寺三重塔が見える座敷が予約できてラッキーでした。
親しい友人と秋色の庭や空を眺めながら、料理に舌鼓を打つひと時・・・
めったにない貴重な時間です。

                
                
                

鎌倉円覚寺四ツ頭之式を思い出させる、朱の丸い足高膳、
その上に次々と運ばれる器も吟味されていて料理が映えています。
季節の野菜を中心にしたヘルシーな料理は、
一皿一皿が一味ちがう工夫がされていて、
みな主婦(つくる人)なので材料や調理法まで探究しながら賞味しました。

三溪そばと蓮華飯は原三溪翁が考案した名物料理です。
三渓そばは特注の細いうどん麺を乾煎りしているそうで、
しっかりした歯ごたえです。
錦糸たまご、味噌風味の豚ひき肉、長ネギ、椎茸などが乗っていて、
見た目も味も中華風なのが特徴です。

                

最後に運ばれてきた蓮華飯は三渓そばと対称的でした。
蓋をあけると、白飯に青紫蘇の千切りがたっぷり載り、
薄緑の蓮の実が十数個ちりばめられて、出汁が掛けられていました。
とてもシンプルで清々しい第一印象でした。

蓮の実を一つ食べてみると、淡白な味の中に幽かな苦味がありました。
でも、ご飯や汁と一緒に茶漬けのようにサラサラと食べると、
全く苦味がなく、薄い塩味の出汁にとけ合って絶妙な味わいでした。
今まで食べたことのない逸品、それが蓮華飯でした。
全員がその端麗で爽やかな味わいに魅せられ、異口同音に
「朝茶事にぴったり!」

松永耳庵が蓮華飯を食べた時の驚きが実感できました。

  「其香味歯牙を爽やかならしめ思はず数椀を傾けた・・・」

女将の西郷槇子さんが挨拶に見えられ、蓮の実は四度皮を剥いて、
あく抜きするので下拵えに手間がかかる話や出汁の秘密など、
いろいろ話してくださいました。
帰りに乾燥した蓮の台をおみやげに頂きました。

毎年、7月末から9月に季節限定の蓮華飯だそうですが、
来年も食べたいわね・・・と話し合いながら、三溪園へ移動しました。