今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

541 高山(群馬県)宇宙から眺めるそこは桃源郷

2013-10-28 20:35:13 | 群馬・栃木
関東平野に広大な流域を形成する利根川だが、悠々たるその流れも群馬の渋川あたりまで遡ると、さすがに平坦部は狭まり、東を赤城山に、西を榛名山、そして北を子持山と小野子山が塞いで、それより奥は上信越の山塊に分け入ることになる。高山村は、その子持・小野子の稜線に隠れるように、山の北側の盆地にひっそりと静まる村である。かつては越後に通じる三国街道の宿場として賑わったらしいけれど、いまや隠れ里の風情が濃い。





そこに厳然たる暮らしがあって「村」が営まれている土地を、無縁の他所者が勝手に「隠れ里」などと呼ぶことは、上から目線で決めつけているような失礼極まりないことである。しかし確かに私は、標高900メートル近い上空から村を眺めているので、どうしても「上から目線」になってしまうのである。快晴の日の昼下がり、眼下の盆地は稲穂が色づき、集落を黄金色に包んでいる。この村は、隠れ里というより桃源郷と呼ぶべきか。



私は「群馬県立ぐんま天文台」の屋外展示広場から、360度の眺望を楽しんでいるのだ。夏の名残りの熱気のせいか、案内板にある冬景色ほどクリアではないものの、北を望めば上越国境の山々が連なり、谷川岳がその先は越後であることを教えている。南を向けば子持山が迫り、小野子山との鞍部の先に榛名山が横たわる。駐車場からの標高差が60メートルというのは信じられない程きつかったが、遊歩道を登って来た甲斐はあった。



屋外展示広場には古代イギリスのストーンサークルと、18世紀のインドの天体観測機器「ジャンタル・マンタル」を模したオブジェが、芝生の上に見慣れぬ光景を出現させている。誰もいない山上で、風がオブジェを吹き抜けて行く。こんなものにいくら税金を注ぎ込んだのだ、などと考えるのは大人のさもしさで、見学に来た子供たちは歓声をあげて走り回ることだろう。その中の何人かにでも宇宙への関心が芽生えたら、それでよろしい。



「ぐんま天文台」は1993年、群馬県の人口が200万人に達したことを記念して、天文学の研究・教育普及拠点として建設されたのだという。自治体が天文台を運営する必要性がいまひとつ分からないままやって来たのだが、余りに晴れ晴れとして気分がいいので、そんなことはどうでもいいことにした。村民はここが「美しい星空の村」なのだと再認識し、観測の邪魔にならないよう人工光の増加を抑制する「光環境条例」を制定した。



里に降りてみる。ほどよい狭さ、とでも言おうか、ぐるりと山に取り囲まれているものの、この盆地そのものがそれなりの標高があるからだろう、丘のような連なりで圧迫感はない。村内を車で走り回っている間、ほとんど人影がなかったのに、脇道から軽自動車が溢れ出て来た。乗っているのはお年寄りばかりである。道の奥に公民館のような建物が見えたから、何かの催しがあったのだろう。人口3900人、高齢化率30%超の村である。



平成の大合併で、全国的に「村」の数は減った。高山村も中之条町との合併構想が持ち上がったようだが、「村」で生きて行く道を選択した。この規模で行政サービスを保ち、財政を維持して行くには困難なハードルも現れるだろう。しかし村民たちは光環境条例だけでなく景観計画・景観条例も定めて村造りにまっしぐらである。晴れた日、峠を越えて高山村に行ってみるといい。私が言う「隠れ里的桃源郷」が理解できるだろう。(2013.9.18)















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