◆みなみ中は、窓からの景色が美しい学校だ。
昼休み、校内巡回の途中で、その風景に見とれていたら、友人・仁科源一の詩を想起する。
「地平線」
一日
燃えていた
窓が
落ちていく
「行方」
窓を
捜していた
気の遠くなる
夕焼けだった
「夕日」
窓は
地平線を
追い掛けていった
なんだか仁科に見つめられているような気分になってきたところで、隣にやってきた1年のO君から、
「海のにおいがしませんか?」
とたずねられた。
海からの、やや冷たい微風が吹いていた。
しかし、わたしはなにもにおわなかったし、O君が一般論として「海のにおいがしてきそうですね」という話をしてるのだと思い、
「そうだね、海からいい風が吹いているね。ここをしばらく離れて、海から遠い街で暮らしていて、そして、ひさしぶりに帰って、この窓辺に立つと、海のにおいがするかもしれないね……」とか言っているうちに、なんと、海のにおいがしてきたのだ。
「O君、におうね、これ、海のにおいだよ。O君、いいにおいだね」
少し興奮して、O君に声をかける。
精神が、中学生に帰っていく気分だった。
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