万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国政府が習主席の国賓待遇に条件をつけるならば

2019-12-24 16:05:59 | 国際政治
 来春に予定されている中国の習近平国家主席の国賓待遇による訪日ついては、香港の民主化運動やウイグル人に対する中国の非人道的な対応に対する批判から、反対や疑問の声も少なくありません。ましてや、同盟国であるアメリカと中国との関係は悪化傾向著しく、日本国の対中接近は、‘背信行為’ともなりかねないリスクもあります。

 日本国内の世論の反発、並びに、米中対立の狭間にあって、安倍首相は、日中韓首脳会談の席に望んだわけですが、報道に依りますと、幾つかの要求を中国に対して提示したと伝わります。どれも中国側が受け入れそうにもない要求ばかりなのですが、そのうちの一つが、尖閣諸島周辺海域における中国公船の活動自粛です。しかしながら、この要求もまた無意味、かつ、リスクに満ちたものもないのではないかと思うのです。

 その理由は、中国の約束は、全く当てにならないからです。中国と云う国は、たとえ合意文書を作成しても、決してその内容を遵守しようとはしませんし、都合が悪くなる、あるいは、自国の戦略的目的実現のチャンス到来と見れば、あっさりと‘紙くず’にして捨ててしまいます。両国関係の基礎となる日中友好平和条約ですら空文化していますし、ましてや口約束ともなれば、その有効期間は言葉を発したその一瞬に過ぎないかもしれません。

今般のケースでも、日中首脳会談の最大の関心事は、習主席の国賓訪日の成否なのでしょう。そうであればこそ、日本国側も、中国側が、日本国内で反中デモ等が起きる懸念を抱いている点を見越して、今回は、珍しくも中国に注文を付けるという強気の態度で臨んだのかもしれません。近年、尖閣諸島付近の海域での中国公船の活動が活発化してきており、新聞等の紙面では連日のようにこの件に関する報道があります。日本国政府としては、中国側の同海域での活動が目に見えて減少すれば、国内世論も習主席の国賓待遇に対して好意的な方向に転じるかもしれないと考えたのかもしれません。しかしながら、この要求、どちらに転んだとしても、最悪の結果を招きそうなのです。

仮に、中国側が同要求を受け入れたとしても、それは、習主席が帰国の途につくまでの期限付きです。中国側の関心時は習主席の国賓待遇での訪日の成功なのですから、この目的が達成された途端、日本国に対して過去の約束を守る理由も必要性を失います。乃ち、同主席の離日と同時に、尖閣諸島周辺海域の状況は以前の状態に戻り、日本政府の要求は元の木阿弥となることでしょう。この点は、香港情勢やウイグルでの人権問題といった他の要請も同様です。自らの目的を達成するまでのポーズや仮の譲歩は、中国のお家芸なのです。

 一方、日本国政府は、中国から譲歩を引出す、尖閣諸島海域での活動を自制したことを評価して、全力で習主席の訪日成功に向けて万全の体制を期すことでしょう。そして、この目的を実現するためには、日本国政府は、同主席の訪日中における対中批判を抑えるために、日本国民に対する厳しい言論統制を実施し、言論や表現、そして集会の自由をも束縛するかもしれません。それが期限付きであることを知りながら…。

それでは、中国が、同要求を撥ねつけた場合には、日本国政府は、どのように対応するのでしょうか。何らの対中要求も実現しない状態で習主席を迎えるようでは、日本国民のみならず、同盟国であるアメリカをはじめ、国際社会の信頼を失う事態ともなりかねません。共産党一党独裁体制を堅持する全体主義国と手を結ぶとすれば、ナチス・ドイツと結んだ戦前の誤りを繰り返すこととなりましょう。しかも、日中共に‘新時代’を強調しておりますが、令和の時代とは、中国にとりましては従来とは違う時代なのでしょうか…。

以上に幾つかのシナリオを予測してみましたが、何れも日本国にとりましては、自らを危機に追い込むようなシナリオばかりです。歯の浮いたような美辞麗句を並べ、三国の首相が薄ら笑いで握手を交わす日中韓首脳会談の光景は、一般の日本国民の感覚からしますと、友好よりもどこか陰気な気味の悪さが漂います。どのような選択であれ、日本国の将来に暗い影を投げかけるのであるならば、むしろ、ストレートに、尖閣諸島の日本領有を認め、同諸島に対する領有の主張を取り下げるよう、訪日に条件を付けた方が、すなわち、中国側から訪日を断らせる方が、遥かに‘まし’であり、筋も通っているのではないでしょうか。

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