万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

危うい日本国の国家安全保障局長と中国の国家副主席との会談

2019-12-07 15:34:48 | 国際政治
 報道によりますと、日本国の北村滋国家安全保障局長と中国の王岐山国家副主席は、北京にて会談の席を設けたそうです。習近平国家主席が直々に王副主席に会うように勧めたとも伝わり、同会談の目的が、来年春に予定されている習主席の国賓としての訪日に備えた準備であることは明らかです。国賓を迎えるに際しての安全の確保は当然ではあるのですが、中国側の積極的な姿勢には、日本国に対する圧力を感じざるを得ないのです。

 それでは、中国は、日本国に対してどのような圧力をかけているのでしょうか。‘国賓として訪日する習主席の身辺警護を完璧にして欲しい’という要求であれば、上述したように他の諸国の政府から寄せられる要求と変わりはありません。仮に、同様の国賓訪日のケースで日本国の国家安全保障局長に対して警備上の要求があったとしても、当然過ぎてニュースにさえならなかったことでしょう。しかしながら、今般、マスメディアの多くが両者の会談を比較的大きく扱い、国民に知らせようとした背景には、中国の要求が単なる警備上の問題ではないことを示唆しているように思えます。

 王副主席は、「(習主席の訪日が)成功裏に実現するなら、今後の中日関係に重大な影響と意義がある」と述べたそうです。中国側が述べる‘成功裏の実現’とは、習主席がタラップを降りて日本国の土を踏んだ瞬間から北京に向けて帰路に付くまでの間、‘熱烈歓迎’の大弾幕が掲げられ、五星紅旗と日の丸の小旗が降られる中、同主席が都内や日本各地で開かれる日中友好行事で大歓迎を受ける状況を実現することなのでしょう。つまり、中国側としては、習主席の顔が曇る事態、即ち、‘香港に民主主義を!’とか、‘ウイグル弾圧反対’とか、‘フリーチベット’といったスローガンが習主席の目に入る事態はあってはならいないのです。況してや‘共産党一党独裁反対’といった中国の現体制批判は、もっての他なのかもしれません。

 しかしながら、国際社会の状況を見ますと、軍事大国化を背景に強圧的な姿勢を強める中国に対する批判は高まるばかりです。アメリカでは、香港人権民主主義法が成立し、ウイグル人権法も下院を通りましたが、日本国の世論調査の結果でも、80%以上の国民が中国に対して好意的な感情を持ってはいません。与党自民党内にあって習主席の国賓待遇の訪日に反対意見があるのも、おそらくは圧倒的に反中に傾いている世論に応えてのことなのでしょう。中国側の願望とはほど遠く、日本国側、少なくとも、日本国民の間には習主席を歓迎する空気は皆無に近いのです。

 日本国内での世論が冷めている上に、国際的な対中批判が起きている中での訪日ともなれば、中国は、日本国内での言論の自由を中国レベルまで抑え込む必要性を感じることでしょう。そして、この目的のためにキーパーソンとして白羽の矢を立てたのが、北村国家安全局長であったのかもしれません。長野で行われた北京オリンピックの聖火リレーに際しても、日本国の警察当局は、日本人の側を取り締まっていたとして批判を受けていました。同氏は、警察官僚出身ですし、局長就任前の2019年9月までは内閣情報官を務めています。中国側は、習主席の訪日を‘成功裏の実現’するためには、日本国の警察や情報機関を動かすのが最も効果的と考えたのでしょう。つまり、習主席の国賓としての訪日ともなれば、日本国の治安当局が、長野以上に大規模な言論弾圧を伴う取締を実施しないとも限らないのです。

 しかも、取締りの対象は、一般の日本国民のみならず、日本国内に居住する外国人の住民にも及ぶことでしょう。香港や台湾から来日した留学生や長期滞在者は、習主席の来日を機に北京批判のデモを行うかもしれませんし、弾圧下にあるウイグル人やチベット人も反中国を掲げ、独立さえも主張するかもしれません。加えて、言論の自由が認められている日本国内にあって、独裁化を強める習体制に危機感を募らせ、体制批判をおこなう一般中国人も現れても不思議ではないのです。

 果たして、北村局長を派遣した日本国政府は、中国側の‘成功裏の実現’要求を受け入れるのでしょうか。中国に対する政府と日本国民の温度差は、今や、別の国と言えるほどの隔たりをみせています。仮に、習主席の訪日に際し、マスメディアを含め一切の中国批判が封じられ、如何なる反中デモも許可されず、動員と演出によって礼賛一辺倒の映像が流され続けるとしますと、それは、日本国政府が日本国民、並びに人類を裏切って中国の配下に入り、日本国の自由と独立が失われた忌まわしき日として歴史に記録されるのではないでしょうか。

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