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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

世襲制に潜むリスク-新天皇の即位

2019年05月04日 13時03分44秒 | 日本政治

5月1日における新天皇の即位を機に、マスメディアは、凡そ令和一色となりました。本日の一般参賀にも、内外から多くの人々が押し寄せているそうです(組織的な動員も加わっているかもしれない…)。仮に、日本国民の大半が、何も考えずにマスメディアが創り出したムードに流され、紅潮した顔で日の丸を振って‘天皇陛下万歳’を叫んでいるとしますと(あるいは‘令和万歳’?)、この光景は、どこか北朝鮮を思い起こさせ、必ずしも喜ばしいもののようにも思えないのです。

 奉祝ムードが支配的な中で疑問を呈するのは、‘捻くれ者’、あるいは、‘愚かな反日主義者’とする批判もありましょうが、煽られたムードに流された結果、後々国民が悲惨な運命を強いられるケースは歴史において少なくありません。批判は甘んじてお受けいたしますが、より冷静な観察や懐疑心を持つように呼び掛けることは、たとえそれが杞憂であれ、リスク管理や事前回避のためには必要なように思えます。

 先ずもって疑問な点は、理性的に考えれば、世襲なる制度には明白なる欠陥があるにも拘わらず、誰もその問題を指摘しない点です。世襲制は、必ずしも能力や人柄の継承を保障しませんし、公的なポストともなれば、能力不足やモラルの欠如等は国家や国民に損害をもたらすリスクさえあります。君主や天皇が中立性や公平性を失い、特定の組織を私的に贔屓する一方で、気に入らない個人や組織を排斥するような行為を行えば、国家分裂の危機を招くことでしょう。世襲制では、国民が君主や天皇を選んだり、交代させることはできませんので、そのリスクは民主的選挙制度の比ではないのです。

また、遺伝学が急速に発展した今日では、世襲を以って正当性を主張することは難しくなっています。たとえ、‘神’、あるいは、建国者の子孫であれ、唯一その人だけが保有している特定の遺伝子は存在していませんし(突然変異でさえ、複数の人に同時に生じる可能性がある…)、男子系継承の根拠となるY遺伝子でさえ、多くの人々が同一の型を有しています。しかも、現代の王室・皇室の大半は民間人を妃としていますので、王家の血統や皇統は代を重ねるごとに減数分裂によって凡そ半減して行くのです。つまり、生物学的には特別な存在ではないにも拘わらず、ポストへの就任を以って神格化するのは理性に反していますし、合理的な思考を重んじる現代という時代にはそぐわないように思えるのです。

 加えて、既に民主的制度が定着している今日の国家の統治システムにあっては、世襲の君主や天皇の存在は必要不可欠ということはありません。日本国の場合には、それ故に、天皇は憲法上において‘統合の象徴’とされ、立憲君主制の名残として僅かに形式的な国事行為を定めているのです。言い換えますと、明治期に創設された立憲君主としての天皇は、既に歴史的な役割は終えているのですが、国家祭祀と繋がる歴史的な役割と国民の強い崇敬心に鑑みて、国家や国民を纏めるための権威として残したのです。その背景には、天皇を利用したいGHQによる占領政策があったとされていますが、明治期にあっても天皇が‘上からの文明開化’に一役買っていますので、‘天皇の役割’には、日本国民が期待している古来の国家祭祀のみならず、海外・国際勢力の思惑も反映されているのでしょう。そして今日、‘象徴天皇’の役割が議論を呼ぶのも、この憲法上の役割の具体的内容を天皇の意思に委ねるとしますと、天皇の私的コネクションを介した一部の組織や海外・国際勢力から内政干渉や誘導を受けるリスクがあるからに他なりません。

新天皇の即位に当たって、本稿はいささか冷ややかな見方をしているのですが、天皇制に反対している共産党や左翼とは違った意味で、今日の国家と天皇家との関係に疑問や危惧を抱いている一般の国民も少なくないはずです。現皇族支持者=保守=愛国者という構図は崩れており、天皇位の存続支持は、必ずしも現皇族による世襲支持を意味するわけでもありません(天皇位の維持と現皇室の維持とは一致しない…)。一般的な理性や知性に照らせば、世襲制が古代にも見られる旧式な制度であって、様々なリスクに満ちている以上、世襲による代替わりに新しい時代への期待を託すのには無理があると言わざるを得ないのです。天皇の在り方を含め、世襲制に関して批判論を含む自由な議論に乏しい今日の言論状況を見ますと、日本国の将来は危ういのではないかと思うのです。

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コメント (10)
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