この先生の著書を読むのは数冊目です。
今回はご家族、とくにお孫さんの健康を願う<お爺ちゃん>顔が分ります。
どの著書でも一貫して
清潔すぎる環境は 有害である。
無菌状態では 免疫力が育たない。
と、主張されています。
P.70 日本の水道水は
<世界でも類を見ないほど殺菌用塩素が使われていて>
<その主たる目的は大腸菌を死滅させることにある>
その結果として、
日本の水道水にはまったく大腸菌が含まれていないそうです。
しかしその大小として、「まずい水道水」と
「トリハロメタンなどの発がん性物質入りの水道水」を
飲む羽目になってしまっているのです。
イギリスやアメリカなどでも水道水に対する大腸菌の
コントロールは行われていますが、しかし、
大腸菌をゼロにするなどという愚かな水道行政は行われていない。
100回検査して大腸菌の検出が5回以内ならOKという姿勢で、
それで何の問題も発生していないのです。
この後、なぜ日本人が大腸菌を嫌い、目の敵にして攻撃し、
抗生物質や殺菌剤が使われ続けてきたかの説明があります。
P.71 どんな生き物も、生き物である以上、外的と戦い、
自らの命と子孫を残そうとします。
大腸菌も同じです。度重なる新手の抗生物質などの攻撃に耐え、
生きながらえるために遺伝子を変化させ、200種以上の変種を
つくり出しました。
その111番目に誕生したのがO-111であり、
157番目がO-157なのです。
O-111やO-157といった大腸菌の変種に見られる大きな特徴は
強い毒性を持っていることです。それゆえに人間が感染すると
重篤な症状を招き、ときに生命の維持さえも難しくなります。
しかし、O-111やO-157の菌自体の生命力は
むしろ弱いことがわかっています。
これらの菌は、生きるために必要なパワーのうち7割を
毒の生成に使っていて、残りの生きるためのパワーは
たかが知れています。したがって、
他の雑菌がうようよしているような場所では生き残れず、
すぐに死滅してしまいます。
つまり、清潔志向の人間(特に神経質な親達)が作り上げた
清潔な環境のなかでしか、これらの病原性大腸菌は生き延びられない。
食中毒の発生に細心の注意を払っている学校の給食室や
レストランの厨房などで発生する背景には、そんな理由があります。
P.73 もちろん、清潔な給食の調理室やレストランの厨房に問題が
あるわけではありません。(それらが清潔に保たれるのは当然のこと)
それよりも問題なのは、O-111やO-157などの病原性大腸菌と
対峙しなければならない人間そのものが「清潔」に囚われすぎて
菌に対する抵抗力を弱めてしまっていることなのです。
この後、1996年に大阪の堺市の小学校で起こった大規模な集団食中毒への
考察が述べられています。原因となった学校給食を食べた児童数は約5万人。
このなかでO-157の菌が発見されたのは550人。
この中で、「ほんの少しの下痢」でおさまった子供が約58%。
「まったく下痢をしない子供」が約30%。
菌を保有し、食中毒を発症したのは残りの12%の子供たち。
P.74 この数字をどのように見るかは、意見が分かれるところですが、
(中略)菌に対する免疫力の低い子どもは重篤な症状に陥り、
免疫力の高い子どもは、同じ菌が体内にいながら平気な顔をして
勉強し、遊んでいるという現実は、
私たちに重要なことを教えてくれています。
それはつまり、大腸菌などの菌がいくら強い菌に変種しても、
子どもの免疫力さえ高ければ、何も心配することはない、
たとえO-157に感染しても、食中毒は発症しないということです。
P.75 ではその免疫力の違いはどこから生まれてくるのか?
食中毒事件の追跡調査からのデータの解析は、
1.食中毒を発症した12%の子どもたちの殆どが
高級住宅街の一戸建てに住む、いわゆる「育ちのいい子」
2.一方、発症しなかった88%のほとんどは、より<庶民的>な地域の子。
高級住宅街のお母さんたちは、子どもの衛生面や清潔に気を配り、
泥んこ遊びなどを積極的に勧めません。
反対に庶民的な地域のお母さんは、よい意味での放任主義で、
我が子が泥だらけになって遊ぶことを笑顔で見守っていたようです。
あまりに引用が長くなってしまうので、もう終りにします。
結論は
「もし清潔過ぎる暮らしが子どものアレルギー疾患や
他の病気になりやすい環境をつくっていることを知りながら
それでもその生活を変えずに続けているとしたら、
これは親のエゴと言わざるを得ません。
親の勝手が子どもの病気をつくり、
未来にも大きな不安を残すことに、いまこそ気づくべきなのです。」
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P.156からの
「子育て中の お母さんお父さんが 心がけてほしいこと」
の部分は、小学生二人を育てている長男夫婦に読ませたいと思いました。
P.160からの
「3人の子供のアトピーに苦しみ、屋久島に移住した若い一家」の話や
著者の直感と研究からの考察に、
「エビデンスが無いから、特殊な例に過ぎない」との攻撃もあるそうです。
でも、私は自分の直感で、著者の主張が正しい(納得できる)と思うし、
お薦めのことは、既に私の生活の中では当たり前のことばかりです。
でも、世の中全般的には、
添加物・安価なトランス脂肪酸を用いた加工食品などが
大手を振ってスーパーやコンビニに溢れかえっています。
この状態を何とかしなければ、日本は滅びていくのだろうナ……
という悲しい予感がします。不妊問題やアレルギーの子供たち、
親達の精神的苛立ちなど、深い根をおろして侵蝕中という予感です。
この本を読んだから、といって、
簡単に「南の島に移住」できる人は殆ど居ないでしょうが、
こういう事実を若い親たちに知って貰うことは重要だと思います。
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