goo blog サービス終了のお知らせ 

まいど、日本機関紙出版です。

〒553-0006 大阪市福島区吉野3-2-35
 TEL06-6465-1254 FAX06-6465-1255 

作文読んだら 子どもがかわいい~土佐いく子の子どもたちのまなざし⑰

2008年09月21日 | 土佐いく子の教育つれづれ

 おじいちゃん   二年 やなぎ谷 ゆか

 おじいちゃんのたんじょう日に、
 「なにがいい」
 と聞いたら、
 「しずかにして」
 と言いました。
(大阪綴り方の会編『子どもの世界』より)

 ハハハハ、笑ってしまいますよね。やんちゃをしながら家じゅう走り回っている元気なゆかちゃんの姿が浮かんできて、なんともかわいいです。

■学ぶ教師が全国から

 子どもたちが、自分の最も表現したいことを書き、それを読み語り合って、明日に生きる希望を届けるというのが作文教育。その作文教育の全国の研究大会がこの夏、3日間にわたって大阪で開催されました。なんと全国から2100人の先生・親・子ども・学生・地域の方が学ぶ意欲に燃えて集まったのです。
 初日の舞台では、3年生の子どもたちとの作文の公開授業。参加者の声です。
「授業が見られるので、楽しみに早朝から来ました。緊張していた子どもたちが、どんどん作文の世界に入っていき、自分の言葉でいきいき発言するのを見て、私もこんな授業をしてみたいと感じました」

 昼からは、参加者に感動の涙を誘った構成劇「朝が来るからまた明日――なにわの教育物語」が上演されました。
 あんなに夢にみた教師だったのに、挫折…。作文教育との出合いで、明日も子どもに会える幸せを手作りの舞台に仕上げました。プロの演出家の協力も得て、現役の教師たちと子どもたちが演じました。
「教師をやめようと私も思ったことがありました。涙が何度もあふれました。でも周りに支えてくれる人がいたから今日まで来れたのです。劇を見ていて、私も子どもたちに会いたくなりました」

 次は詩人、谷川俊太郎さんとの対談でした。鉄腕アトムの誕生秘話やご自身の生い立ち、家族のことを実に率直に等身大で語ってくださいました。
「谷川さんの心からの言葉を聞くことができて、来てよかったと思いました。生のご自身の朗読をきかせていただき、生きる活力を分けてもらえました」
 二日目は、24の分科会で実践報告や交流が熱心に展開されました。三日目は、18の多様な講座、午後からは木津川計さんの特別講座、と実に充実した中味でした。
 教育基本法が改悪され、それに基いた新学習指導要領が告示され、今また日本の教育が大きく変えられようとしている中での大会でした。また、青少年の刃物による事件が相次ぎ、子どもの七夕のお願いに「大人になったら働けるしごとがありますように」という時代に、教育に何ができるか学び合う大会になりました。
 大阪の教職員は9月から財政再建プログラム実施でなんと毎月給料が6万、5万、4万とカットされます。心も身体もくたくたになって休職している教職員もたくさんいます。多忙の中で困難をきわめる今日の教育現場にあって、ここ何年間も2千人を超えるような全国大会があったでしょうか。
 朝から汗びっしょり、クマゼミのにぎやかな鳴き声がふってくる中を続々と会場に集まって来た全国の仲間たち。ちなみに大阪からの参加者は千人を超えました。しかも、若い人たちがいっぱいです。      

 2年がかりで準備をしてきた私は、胸がいっぱいになって涙が止まりませんでした。
 日本の教師は、困難の中でも希望を失っていません。身銭をきって学び続けています。そして、戦前から営々と築き上げてきた生活綴り方教育(作文教育)は今こそ出番。

 作文を読んだら子どもがかわいくなった、なんか元気が出てきて、この仕事って楽しいって思えるんです、と若い先生が笑顔で帰って行きました。(とさ・いくこ 中泉尾小学校教育専門員・大阪大学講師)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする