ー悪童日記ーA NAGY FUZET/THE NOTEBOOK/LE GRAND CAHIER
2013年 ドイツ/ハンガリー 111分
ヤーノシュ・サース監督 アンドラーシュ・ギーマント (双子)ラースロー・ギーマント (双子)ピロシュカ・モルナール (祖母)ウルリク・トムセン (将校)
【解説】
ハンガリー出身のアゴタ・クリストフの小説を映画化し、第2次世界大戦下の過酷な時代を生き抜いた双子の日記を通して世界を見つめた衝撃作。両親と離れて見知らぬ村に預けられた少年たちが、日々激化する戦いの中で自分たちのルールに従い厳しい状況に追い込んでいく姿を描き出す。双子の新星アンドラーシュ&ラースロー・ギーマーントが圧倒的な存在感を発揮。大人たちの世界を冷徹に見据える兄弟の選択が心をかき乱す。
【あらすじ】
第2次世界大戦末期の1944年、双子の兄弟(アンドラーシュ・ギーマーント、ラースロー・ギーマーント)は、都会から田舎に疎開する。祖母(ピロシュカ・モルナール)は20年ぶりに戻った娘(ギョングベール・ボグナル)との再会にも不満顔。双子たちだけが農場に残され、村人たちに魔女とうわさされる祖母のもとで水くみやまき割りなどの仕事をこなしていく。(シネマトゥデイ)
【感想】
これも知人からの推薦。
なかなか手強い作品でした。
舞台はハンガリーのようです。
第2次世界大戦が激化して、父親は戦場に、母親は都会の空襲を恐れて双子の息子たちを自分の実家に疎開させ、自分は都会へ戻って行きます。
父親から、毎日日記を書くように言われ、物語は日記として語られていきます。
祖母と母はとても仲が悪く、長い間疎遠だったようです。
祖母は魔女と呼ばれている変わり者。
隣には少女とその母で耳が聞こえず、声も出ない母親が住んでいました。
その家の離れに、ドイツ軍の将校が兵舎として使っていました。
家から少し離れたところにユダヤ人収容所がある。
魔女の祖母に徹底的にこき使われる双子。
祖母が売っている果物を隣の少女が盗み、追いかけて入った飲食店で、少女から「泥棒!」と叫ばれ、居合わせた大人たちから暴力を受ける。
自分たちは強くならなければならないと、体を鍛えたり、痛みに強くなるようお互いを殴ったりする。
また、残酷さにも耐えるようにと鶏を殺したり、ちょっと異常な感じ。
そんな中で出会った兵士の死。
双子に何らかのスイッチが入った。
日本でも学童疎開が行われましたが、それも過酷だったと聞きます。
少年にとってみれば、大人の都合ではじまった理不尽にも感じられる辛い毎日。
今見ているとへんてこな感じがしますが、まっただ中にいた少年たちには、これがリアルな現実への対処法だったのでしょう。
後半に起こることは、とても残酷なことばかり。
ユダヤ人差別の牧師館の娘の爆死させたこと。
隣の少女が侵攻してきたロシア兵にレイプされて死んでしまい、母親が嘆いているのを聞いてその家に火をかけて殺したこと。
母親が迎えにきても付いていかず、その母親が赤ちゃんとともに爆撃を受けてなくなっても表情を変えず、祖母が埋めるの手伝うこと。
祖母が病気で苦しんでいて、本人の意向にそい、安楽死を手伝ったこと。
極めつけは、戦場から戻った父親が、追っ手から逃れるために国境を越えると言う時、方法を教えたが、それは自分が地雷を避けて国境を越えるためだったこと。
双子の一人はこの地に残り、もうひとりは父親の屍を踏んで、国境を越えて西側に行きました。
難しいラストでした。
双子は名前で呼ばれませんでした。
「実は一人なのではないか?」と書かれたレビユーもありました。
「国を象徴しているのではないか?」と書いている人もいました。
原作者はハンガリーを亡命してフランスに行った人のようです。
ハンガリーと言う国の立ち位置が、私にはわからないのですが、大国の狭間で翻弄されてきたということは想像できます。
戦争が終わってドイツ軍がいなくなり、ユダヤ人の収容所が無くなっても、人々の負った傷はとてつもなく深いと言うことだけが、胸に突き刺さりました。
原作は3部作と言うことですが、ぜひ完結させて欲しいです。