“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「東大教養学部が教える考える力の鍛え方」(宮澤正憲著/SBクリエイティブ)

2024-06-28 09:43:02 |    科学技術全般



<新刊情報>



書名:東大教養学部が教える考える力の鍛え方

著者:宮澤正憲

発行:SBクリエイティブ

 東大生が行列をつくる人気授業を完全書籍化。「新しいもの」を生み出す考え方のフレームが身について、アイデア脳に変わる。「改善はできても、新しいものが生み出せない」日本人の多くが抱えるジレンマを解決。考え方のフレームを身に付けるだけで、誰でも魅力的なアイデアが出てくるようになる。東大の教養学部で東大生が殺到する授業がある。それが「ブランドデザインスタジオ」、通称、考える力の教室。この授業は、「過去を知る学び」を得意とする東大生に、「新しいものを生み出す思考法」を体系的に学ばせたい、と2011年にはじまった。教壇に立つのは、博報堂ブランド・イノベーションデザイン局長である著者。「新しいものを生み出す思考法」として、デザイン思考を超える「リボン思考」を生み出し、東大生たちに教えてきた。卒業生が「これからの人生の武器になる! 」と絶賛する授業。乃木坂46の秋元真夏さん、生田絵梨花さん、伊藤かりんさん、松村沙友理さん、若月佑美さんも、実際にこの手法に従って、全国の学生を相手にしたプレゼンテーションを成功させた。同書を読むだけで、「リボン思考」を中心に、多くの発想法が身につくようになる。(同書は、2017年9月にSBクリエイティブより刊行された単行本『東大教養学部「考える力」の教室』を、改題のうえ、加筆・改筆・再編集したもの)
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「惑星地質学入門」(H・ジェイ・メロシュ著/京都大学学術出版会)

2024-06-28 09:42:37 |    宇宙・地球



<新刊情報>



書名:惑星地質学入門~惑星と衛星の表層過程~

著者:H・ジェイ・メロシュ

訳者:山路 敦、成瀬 元

発行:京都大学学術出版会

 惑星表面に存在する千姿万態な地形、火山、氷河、土——、地球と共通する特徴をもつものもあれば、ときに地球とまったく異なる姿を見せることもある。これれらを説明する普遍的な原理はなにか。地球にとらわれない広い視野で地質現象の奥深さを学ぶ惑星地質学の名著、待望の邦訳。【著者】H・ジェイ・メロシュ(H. Jay Melosh) はじめ理論物理学を専攻し地球物理学に移った、衝突クレータに関する世界的な権威。また、惑星や衛星のテクトニクス、地震、地すべりの研究でも重要な貢献をした。ニュージャージー州で1947年に生まれ2020年にマサチューセッツ州で亡くなるまでに、カリフォルニア工科大学・ニューヨーク州立大学・アリゾナ大学・パーデュー大学で教鞭をとった。国際隕石学会のバリンジャー・メダル(1999年)、アメリカ地質学会のギルバート賞(2001年)、アメリカ地球物理学連合のヘス・メダル(2008年)などを受賞。
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●科学技術ニュース●茨城大学など、空間反転と時間反転の対称性が逐次的・自発的に破れる相転移を発見し新たなトポロジカル電子状態を提案

2024-06-28 09:42:11 |    電気・電子工学
 茨城大学大学院理工学研究科の下田愛海さん(研究当時大学院生)、茨城大学原子科学研究教育センターの岩佐和晃教授を中心とするグループは、茨城大学大学院理工学研究科の桑原慶太郎教授、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の佐賀山基准教授と中尾裕則准教授、総合科学研究機構中性子科学センターの石角元志副主任技師と中尾朗子副主任研究員、J-PARCセンターの河村聖子研究副主幹と村井直樹研究員と大原高志研究主幹、東北大学金属材料研究所・高等研究機構の南部雄亮准教授の協力のもと、Remeika相化合物のうちネオジム・ロジウム・錫(スズ)を含むNd3Rh4Sn13が示す結晶構造相転移と磁気秩序の詳細を明らかにし、空間反転と時間反転の対称性が逐次的・自発的に破れる相転移を発見した。

 結晶中の原子配列の対称性は物質の性質を決定づける因子である。

 例えば、原子が存在する物質領域とその外側の真空の境界で空間反転対称性が破れた場合、物質内部が絶縁体であっても、境界表面では電流が生じるというディラック電子状態が知られている。

 また、右手と左手、あるいは右ネジと左ネジのような対掌性の関係にある構造は、鏡に映る実像と虚像の関係にあるが、右と左それぞれは反転対称性が失われている。

 このようなカイラル対称性においてもワイル電子と呼ばれる特殊な電子状態が現れ、実効的には質量のない電子が運動する半金属状態が期待されている。

 同研究グループは、このような空間反転対称性の破れた結晶構造に自発的に相転移し、さらに磁気秩序によって時間反転対称性も破れうる物質を開拓すべく、Remeika相化合物Nd3Rh4Sn13を詳しく調べた。

 その結果、この物質がカイラル対称結晶構造に相転移し、さらに反強磁気秩序化することを明らかにした。

 特に、ネオジムイオンの一次元鎖状格子の磁気モーメントが反強磁気状態を取りつつ、隣接する一次元鎖と三角格子を介して連結して三次元構造をとるという特徴を明らかにした。

 このような対称性の破れは新たなトポロジカル電子状態を示唆するものと期待できる。<高エネルギー加速器研究機構(KEK)>
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●科学技術ニュース●NTT、世界最速アルゴリズムにより「富岳」の大規模グラフ探索性能が約20%向上し「Graph500」9期連続世界1位に貢献

2024-06-28 09:41:40 |    情報工学
 NTTは、グラフ(頂点と枝により事物の関連性を示したデータ)に対して、頂点全体のつながりを始点から近い順に辿る計算(BFS)を高速に行うためのアルゴリズム「Forest Pruning」を開発した。

 同技術はスーパーコンピュータの性能ランキング「Graph500」のBFS部門でスーパーコンピュータ「富岳」が保有する首位記録をさらに約20%向上させることに貢献した。

 同技術を用いることで大規模なグラフデータを用いるデータマイニングやAIなど幅広い処理の性能向上を期待できる。
 
 実社会における複雑な情報の多くはグラフとして表現されている。

 NTTは長年、大規模なグラフをより短時間かつ低消費電力で処理するための研究を行っており、その中で効率的なBFSを可能にするアルゴリズム「Forest Pruning」を考案した。

 2023年11月発表のGraph500 Greenビッグデータ部門ランキングでは、GPU上でForest Pruningを含むNTTのグラフ処理技術を用いることで市販プロセッサとして最高の電力効率を記録した。

 今回、スーパーコンピュータ「富岳」でGraph500に取り組む共同研究グループへ参加し、Forest Pruningを「富岳」向けに実装したことで成果が得られた。

 Forest Pruningはグラフの中でもともと木構造になっている部分の探索を省略。木構造である部分はそのままの形でBFS木の一部を構成するため、事前に木を発見し分離しておくことで、都度それらを探索することなく短時間でBFS木を構築できる。

 さらに木の分離はグラフの縮小によって消費メモリ量を削減する効果もある。

 同技術は、同じグラフに対して異なる始点で繰り返しBFSを行う場合に効果的。

 事前計算を通じて後続の処理を高速化する枠組みは様々な問題に適用されてきたが、Forest Pruningのように部分的な解を事前に計算する手法は、BFSにおいてこれまで確認されていない。

 同共同研究グループでは、SCALE 43での性能測定を検算も含めて実施し、その性能をランキングに投稿すべくプログラムの効率化や実行方法の工夫に取り組んでいる。

 長期的には、他の研究チームの技術も取り込みながら性能を改善するともに、GPUを搭載したスーパーコンピュータでの効率的なグラフ処理技術の開発を行う。NTTではこのような取り組みを通じて最新の計算機システムの活用や大規模グラフ処理に関する技術を開発し、データマイニングやAIなど幅広い処理の性能向上により一層貢献していく。<NTT>
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